第16話
絶えず車が行き交う街道を背に、細い一方通行の道を入る。少し歩くと左手に幅の狭い石畳の小道があった。
自宅の近くではあるが、石畳の風景は見慣れない場所だった。辛うじて一方通行の道までは知っていたのだが、ひっそりと佇むその界隈に気を留めたことがなかったのだろう。ももは神狐に続いて石畳の道を入っていった。
入ってすぐに、左右にもっさりと生えたススキがさらさらと風になびいた。通りの忙しなさが遠のき、ゆったりと静かな時の流れを感じた。
ほんの数メートル歩くと、石畳は階段になって上へ上へと続いている。ススキが茂上に夕暮れ時で、道の先は定かには見えない。しかし以前杉並木を歩いた時のような、凛とした空気を感じる。心地よさにうっとりとした。
(あの時にはあんまり考える余裕なかったけど…なんていうの、マイナスイオン?さすが神様のいるところってかんじ。)
あれが神の領域の醸し出す空気感なのだとすれば、この場所にも通じるものを感じ取れた。ここも同じ種類の場所、つまり神様の居所なのだろうと思案しながら、自分の五感が以前より鋭くなっているらしいことを認めた。街中を一本入っただけなのだが、まるで険しい山の頂上に向かって歩いているかのような緊張感がある。
杉並木を歩く前の自分は、なにを感じ取っていたのだろう。一度それに気付いてしまうと、もはや昔の自分は目を閉じて歩いていたかのように思われる。
階段を登り切ると、そこには木々に囲まれた小さな神社が鎮座していた。
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