神様は引きこもり
第8話
膝丈ほどの草原をかき分け、月詠に続いて湖のほとりに立った。ざわざわと草を揺らす風に包まれる。月詠の静かな声が、凛と響いた。
「龍神、来たぞ。」
変わらず草地はざわざわと騒いでいる。しばらくは、静かに月詠の様子を見守っていた。その瞳は真っすぐに湖の中心あたりを見据えている。
緩やかに揺れていた水面が、すっと静かになる。
月詠は小さくため息をこぼした。
「龍神、頼みがある。わかるだろう?」
水面はしんと静まり返ったままだ。
「… 」
「… 」
黙り込んでしまった月詠の瞳がほの昏く光ったような気がして、そっと視線を逸らした。龍神さま、早く出てきた方が身のためなんじゃないかな。
月詠は改めて水面に問いかけた。
「今宵は龍神殿はお留守のようだなぁー。では心苦しいが、勝手にやらせてもらうかなぁ。もも?さあ行っておいで。」
突然話を振られてももはびくっと跳ね上がった。
「ひぇっ?行くって、どこへ?」
月詠はにっこりと笑ってももをひょいと抱き上げた。
「どこってもちろん、この中だ。うん?大丈夫大丈夫。」
そういうと、月詠は私の訴えを完全無視してポイッと宙に投げた。もうわけのわからない奇声を発しながら、私は秋の絶対冷たいに違いない水面に向かって落下していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます