第4話
恐る恐る目を開けると、立派な大木の根元に立っていた。
眼が眩んでいる上に周囲は暗く静まり返っていて、様子を伺うのは難しかった。それでもしばらくすると、ぼんやりと月明かりに照らされて目の前に砂利の敷き詰められた地面が見えるようになった。どうやら一本道の途中にいるようだ。
「ねぇ、どこにいるの」
見覚えのない景色に少し不安になっていた。月詠を探して焦る自分の声音が気に入らなかったが、右に行くのか左に行くのかもわからない状態では仕方がなかった。
「ここにいるが。」
すぐ隣から声がして振り向く。月詠の姿を捉えて心底ホッとした。そしてそんな自分に呆れる。
「もう、近くにいるなら言ってよ。」
「私はずっとそばにいたんだが。」
どうも思いやりの欠けた返答にムッとして言い返す。
「こんな場所に連れてこられて落ち着いてられるわけないでしょ!なんなのここは!」
だんだんと眼が慣れてくると、いよいよ現代社会の面差しが欠片も見当たらない景色が広がっていた。どこまでも延々と続く杉の巨木。遠く、暗がりに溶けてしまうまでひたすらに杉並木が続く。
「ここは参道の始点だ。さぁ、鏡池まで少し歩くぞ。」
「えー、なんで最初からその池に行かないのさ。」
「ももの穢れを祓うのに適任なのは龍神だ。しかし龍神は最近人見知りが激しくてな。ここからは龍神の境界内だから、穢れも認識できる。あちらにも来訪は伝わるだろう。」
「龍神?って龍だよね?え、会えるの?すごい~。でも人見知りって、ふふ。」
龍の強そうなイメージに、人見知りという単語が妙にかわいく聞こえる。
「もものことは、会えばわかるだろう。百襲の姫とは親しかったから。こちらだよ。」
月詠はすっと砂利道に立って、そのまま歩き出した。慌てて追いかけて砂利道に立つと、素足にもかかわらず痛みはなく、ひんやりと心地よい感触がした。これなら歩けそうだ。
はぐれたら嫌なので、月詠の後ろに駆け寄って歩き出した。
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