57 魔族襲撃3

「魔族の襲撃だああああぁぁ!!!」

オクタグラムが混乱に包まれる。様々なところから魔族が侵入してくる。いったいなぜこんなにも簡単に魔族の侵入を許した!?

「おい、教師陣はどうなってる!」

このオクタグラムは魔術師の都市である。そのため、オクタグラムの主戦力はオクタグラムの教師、および凄腕の魔術師である。

しかし、先ほどの呼び出しで教師どもが全員いなくなった。まさか罠か!?

とすると…先ほどの声。

その主は…テノカだった。

つまり…?テノカは…。

「おい!ロイ!」

「んー?なんかやばそうだよね。どうする?」

「お前は東側に行け。俺は西側に行く。魔族狩りと行こうじゃないか。」

「ふー!楽しそう!」



「あぁ、もうフェイさんロイさんどこ行っちゃうんですか?」

外に出ようとすると、そこには魔族を引き連れたテノカがいた。

「…おいテノカ、そいつらはいったいどういうことだ!」

「どうも何もわかってるでしょう??僕は魔族サイドなんですよ。いやぁ、教師の人たち馬鹿だよねぇ。生徒の声には簡単に耳を傾けてくれるもんだから、全員中央ホールに集まって、魔力封じの結界にはまっちゃうんだもん!全員…見事に死んじゃってさ…ははは。」

「貴様…。」

「魔族の皆さんやっちゃってください。ここの教室にいるのはアイン級の生徒。ここも念のためつぶしておきましょう。」

ぐさ

魔族の手がテノカの胸を貫通する。

「なっ…!?」

「貴様もアイン級の生徒だろ?ははは!」

「お、お前!」

「ウルーから言われてんだ。お前も殺しておけってな。」

「な…な、な…!…。」

そして、テノカは物言わぬ屍となった。

「よし、それじゃあ殺戮しましょうか。」

6人の魔族。

「ロイ。4人俺がやる。」

「何言ってるの、私が5、君は1人でいい。」

「じゃあどっちが多く殺せるか勝負だ。」


「あぁん!?てめぇら何調子のって」

瞬間、その魔族の首はロイの手によってはねられていた。

「はい、まず一匹。」

「な、貴様いつの間にここに!」

そういった魔族を、俺は得意の雷魔法で打ち抜く。脳天を一撃。

「俺も一匹。」


ロイ、そしてフェイ。

この二人は修羅場というものを潜り抜けてきた生徒である。

通常、オクタグラムに入学する魔術師たちは基本、魔法のみを得意とし、充実した家庭環境、教育によって入学してきた者たちである。

しかし、この二人は実践を経験している。


ロイは幼い頃、村を魔族に襲撃されたが、その後駆けつけた騎士たちによって助けられた。全壊した村。そして、全滅した魔族。すべて、ロイが殺したのだ。


フェイの住むタルタロッサは魔族と西の大陸の境界に存在し、魔族との争いは日常茶飯事だった。そんな中、タルタロッサに侵入した魔族とフェイは対峙してしまう。しかし、フェイは魔族を返り討ちにしたのだ。血みどろで発見されたフェイの手は激しく震えていた。


苦しい戦場。激しい戦闘。

潜在する闘争本能、これらでそれを潜り抜けてきた。

殺すのには躊躇しない。

的確に、素早く、殺す。

ロイとフェイは、オクタグラムのアイン級の中でも別格である。


「ふぅ、俺が三匹。」

「私も三匹。」

「「引き分けだな(だね)。」」

廊下には魔族の死体と血が散乱していた。



学園の外はひどいものだった。民家は焼かれ、悲鳴の嵐。魔族による殺戮が行われている。

『光電撃(エヴォルト)!!!』

激しい雷属性の魔法で次々と魔族を倒していく。

「あぁ、ありがとうございます!」

住民が感謝してくる。

「もう大丈夫だ。俺様が魔族を一匹残らず殲滅してやる。」


その光景はまさに殲滅。圧倒的な戦闘能力を有するフェイは次々に魔族を倒していった。フェイの戦闘能力はすさまじいものであり、下位の魔族ならば簡単に倒せる。しかし、問題はある程度強い魔族である。


「おいおい、小僧。何やってんだ。」

「お?少しは強そうなのが出てきたじゃないか。」

「あんまり舐めた口をきくなよ。『死淵の闇(カオスホール)』。」

禍々しい魔力を帯びた魔法がフェイの体に巻き付く。

「なっ、は、外れない!!」

じわじわと締め付けられる。

「ははは!やはり人間は脆いなぁ…。」

と、とれない。魔力の中和をしようとしても、魔族の魔力の濃度があまりにも高いため、はなれられない!

「おらぁ!」

魔族が顔面に強烈なパンチを浴びせる。

やべぇ…。首から変な音が出る。

意識が飛びそう…だが…。

俺はこんなところで死んでいい玉じゃねぇ。

「おい魔族…。」

「あぁ、なんだまだ意識があったのか。」

「わざわざ近づいてくれてありがとな。」


『殲滅電撃(エヴォルバースト)!!!!』

周囲に激しい電撃が流れる。

「が、がはっ!」

近づいた魔族はその電撃を至近距離で浴びたため、絶命してしまう。

「ふぅ…ふぅ…。あぶねぇ…。やっぱ魔族は低能だな…。」

今あいつが調子に乗って近づいてこなかったら、おそらく死んでただろう。

「おい小僧!!」

するとそこには一匹の魔族が小さな子供の首を掴んで持っていた。

「そこを動くな…こいつが殺されたくなかったらな…。」

「うるせぇ馬鹿。」

魔族の脳天を貫く。

「おい大丈夫かガキ。」

「お兄ちゃん後ろ!!!」

「え?」

強烈な魔法をもろに浴びてしまう。

「おらぁ死にさらせえぇ!!!」

「てめぇがな。」

後ろを向いて電撃を浴びせる。立っていられるのが不思議なぐらいだ。

くそ…背中と頭がいてぇ…。さっき殴られたせいでおそらく顔面血だらけ。そして魔族の魔法をもろに背中で受けてしまった…。


正面から魔族がきた。

俺は手を構えて魔族の脳天に狙いを定める。


しかし、魔法が出ない。


魔力切れである。度重なる戦闘で大量の魔力を使ってしまった。

もう、魔法が打てない。


あぁ…くそ、こんなとこで死ぬのか…。


しかし、魔族は俺のところへ向かってくるのではなく、どうやら撤退していったようだった。俺は安堵してしまった。

弱い自分が、情けない…。

そこで意識が途切れた。

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