閑話 Sランクの妹
私の姉は、冒険者である。この世界最強の称号ともいえる、Sランクである。
魔術姫ルイラ=サンタルーチェ。
その二つ名が意味する通り、姉は魔術で優れた才能を有しており、冒険者として駆け上がっていった。かの第二次魔界対戦での功績が認められ、Sランクになった凄腕の魔術師。圧倒的な魔力量、判断力。
その妹の私は、周りからどんな目で見られていたかわかるだろうか。
期待?尊敬?嫉妬?
様々な思いで私のことを周りの人たちは見ていたであろう。
でも、でも。
それは私にとってただの重圧でしかなかった。
Sランクの妹。魔術姫の妹。
私の家は代々魔術師の家計だったため、魔術師として華を咲かせた私の姉は我が家の誇りだった。
「次はあなたね。」
私には、姉のような魔力はない。
私には、姉のような才能はない。
私には、姉のようなスキルはない。
でも、周りは私と姉を比較する。
やめて、やめて、やめて、やめて、やめて!!!!!!!!
私と姉を比べないで、私と姉は別よ!
そうはいっても、周りに逆らえるほどの「自己」はなかった。だから、努力した。姉と比べられても恥をかかないように、必死で。
そうして私はオクタグラムのアイン級に入学することができた。
「さすが、魔術姫の妹さんだ。」
どれだけ頑張っても、私のことを見てくれない。
みんなが見てるのは、姉だけだ。魔術姫の妹。
誰も、誰も私を見ない。
シイナ=サンタルーチェを見てくれない。
「シイナさん良かったら、一緒にご飯食べない?」
「シイナちゃん、ちょっとこの魔術式教えてほしいんだけど。」
「いやぁーさすがシイナだな!」
「おい、シイナ。魔方陣構造生成のレポートみんなの分まとめておいてくれ。」
ここは、ここオクタグラムの人たちは違った。
私を見てくれる。私を私として。
誰も、魔術姫の妹とは呼ばない。
シイナと呼んでくれるのだ。
あぁ…なんて居心地がいいのだろうか。
シイナは学園卒業後にオクタグラムの地下研究室で働くつもりでいる。
もう二度と、家には戻らない。
冒険者にもならない。
私は、私は、
シイナ=サンタルーチェ アイン級序列4位 属性:火,水,自然,雷,光
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