51 魔力解放
オクタグラムに来て10日ほどが経つ。
イミナもオクタグラムにはすっかり慣れたようで、今ではロイとフェイと仲良く図書館で魔法不可の呪いについて調べている。
「魔法封じの結界?イミナちゃんこれ見てー。」
未だに魔法不可の呪いについて有力な情報は得られていない。学園長からも何度か連絡はあったが、東の大陸は西の大陸とは対立しており、かろうじて現在魔族という共通の敵がいて東と西の戦争が止まっている、という状況である。まぁ、つまり仲が悪いから情報が来ないのである。それもそのはず、自由民主主義の西の大陸、宗教を中心とした宗教国である。宗教中心な分、非人道的な行いが実質的に認められているが故の高い生産性を誇り、そして宗教を信じるがゆえにこの世界では明確な利点が存在する。「神官プリースト」という職業がある。まぁ、細かいところは省くが、神を信じ、それに祈りをささげることで神霊魔法とう特殊な魔法を使える。まぁ、割と便利だ。だがまぁ、俺は無信教であり神なんて曖昧なものにすがって生きる奴らの気が知れない。…え?神に実際会っただろって?あれは…あっちの世界の話だよ。まぁ、別に口に出して否定することでもないのだが、この世界では別である。イミナはその宗教のせいで差別され迫害され、今こうして魔法不可の呪いをかけられている。それは決して許されるわけはないだろう。世界が許しても、許容しても、俺が絶対に許さない。東の大陸ごと吹き飛ばしてやりたいと思ったほどである。
「魔法封じ…ですか。魔法を使えないという点では酷似していますね。」
「なに?一時的に魔法を使えない結界をはる…魔法不可の呪いとはだいぶ異なるが、これで魔法が使えなくなる原理を知れるんじゃないか?」
フェイが的をついた発言をする。
「見せてみろ。」
リヴァイアサンがその本を覗く。ロイは本をリヴァイアサンに渡す。
「あぁ…なるほど。魔法不可の原理はこういうことだったのか。まったく奇妙なことを思いつくな。」
「トゥルガーさん、説明していただけますか?」
「この魔法封じの結界は、結界内に入った存在の魔法術式、および魔力回路を動作不能にさせるというものだ。魔力の流れを遅くし、魔力回路を詰まらせる。無理に魔力を込めると魔力暴走を起こすという厄介な結界なのだ。まぁ、我ほどの高位な存在であれば、こんなもので魔力の流れを阻害されるわけはないがな。」
「つまり、魔法を封じる方法というのは魔法術式を動作不能にしているということですか?」
「そうなのだ。イミナの場合はスキルだから…スキル自体が魔法術式に干渉しているというものなのだ。」
「あ。」
「どうしましたリミドさん?」
俺は思わず大きな声で叫んでしまった。
「うわ、こいつしゃべるのか。」
「へぇすごいしゃべるの!」
…。つい、ロイとフェイの前で声を出してしまった。
「あぁ…まぁ、話せる。リミドだ。それよりイミナ。俺のアシストカスタムのスキル、覚えてるか?」
「えぇっと…。あ。」
「それだ。」
[所得可能スキル]
魔力解放:2000
「試す価値はあると思います…。」
「どうしたのイミナちゃん?」
「どうしたイミナ。」
「どうしたのだイミナ。」
「ちょっと、試したいことがあります。」
俺らは全員でオクタグラムのグラウンドに出ることにした。
「今から試すのはとても危険なことです。さっきのリヴァイアサンの説明を聞く限り、私の魔力回路の魔力が詰まって魔力暴走をするかもしれません。私のこの異質な体質もあるので、意識が飛んだりしてしまうかもしれません。その時はどうか、トゥルガーさん宜しくお願いします。」
魔力解放とは、自身の魔力の流れを良くさせ魔力酔いしなくなったり、魔法発動のクールタイムが短くなるというもの。興味はあったものの、魔法が使えないイミナにとっては不要なスキルと思っていた…。しかし、しかしだ。この魔力の流れを良くするということが魔法不可の呪いの解呪につながるかもしれない。2000ポイントと高く、俺の今の持っているポイントはほとんどなくなる。
「安心せい、貴様が暴走しても我が何とかする。ロイ、フェイ。貴様らは下がっとれ。」
「「…。」」
二人は黙ってリヴァイアサンの後ろに下がった。
「ほれ。念のためなのだ。」
リヴァイアサンは俺らの周りに強固な防壁を張る。
「ありがとうございます…。では、行きます。リミドさん。」
「おう。」
『魔力解放を所得しました。』
刹那青白い閃光が俺らのことを包み込む。
そして、
意識が飛んだ。
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