52 vs極装

パリーーン

激しい音とともにリヴァイアサンの張った防壁が割れ衝撃波があたりを吹き飛ばす。イミナが立っていたところは、まるで隕石でも落ちたかのような穴が開いていた。中心には黒い繭、イミナとリミドがいた。

「我の防壁を破るだとっ!!なんて魔力量なのだ、まさか…リミドによってイミナの魔力量も増加してその分暴走したというのか!」

黒い繭に大きな一つの目、そして大きな口が現れる。

目は血走り、リヴァイアサンをまっすぐとにらみつけていた。

『チカヅクナ。チカヅクナ。チカヅクナ。チカヅクナ。』

「ど、どうしちゃったのイミナちゃん!」

「こんなすさまじい魔力暴走は見たことがない!」

フェイとロイは跡形もなく破壊されたグラウンドの様子を見て驚いていた。

「貴様ら下がっておれ…イミナとリミドの意識が飛んでおる…。あれは、いわば自動守護形態。悪魔帝と戦った時に、反動でああなったとイミナから聞いたことがある。あのせいでテルミアの冒険者を攻撃し、半ば強制的にテルミアを去ることになった…。記事には書かれなかったそうだが。やはり、意識が飛ぶとこうなるのか。」


リヴァイアサンは大きな舌打ちをする。

「黒の繭、話に聞いた以上に禍々しい。」



「イミナちゃん!頑張って!」

「イミナァ!!!」

「貴様ら離れろ!!」



『チカヅクナトイッタダロウ?』


『極装(ガイルドベント)』


リミドの意志の強さがゆえに起こってしまう暴走状態。

イミナに二度と脅威を近づかせない。悪魔帝との戦闘を一度経験してしまったが故のこれである。明らかに異常と言っていいほど強大な魔力を持つリヴァイアサンを目の前にして、防衛本能が働かないわけがなかった。

「闇魔法」を使ってイミナとリミドはリヴァイアサンの目の前に転移し、魔力を込めた強力な一撃を打ち込む。魔力でとっさに防壁を張ったリヴァイアサンは無傷であるが、その表情は驚嘆と喜びが混ざった複雑なものである。

「おぬし…魔法が使えるようになったのか!」

「わ、私のを真似した!?」

そう、それはロイがイミナとの模擬戦の時に使用した転移の闇魔法。それをイミナとリミドは暴走状態、無意識で真似しリヴァイアサンに攻撃を放ったのだ。

「くそ、これはイミナ相手に二度と使いたくなかったが、こうなってしまえば仕方のないことなのだ。融合状態なら、その解除ぐらいで済むだろう。」

リヴァイアサンは大きく息を吸い込み、魔力を放出する。

それにとっさに反応してリミドは防御態勢に入る。


『帝王覇気(エンペラードライブ)!!!!!』


先ほどのイミナとリミドの魔力暴走の比じゃないほどの衝撃波があたりを吹き飛ばす。ロイとフェイは、それぞれ防壁を張ってその場に何とか踏みとどまっているようだった。帝王覇気を受けたリミドは、完全な融合状態が解除されたようで、イミナからはがれかける。イミナの顔が少しだけ現れる。

「イミナ!起きろ!リミドを鎮まらせろ!」

イミナは完全に意識を失っているようで、リヴァイアサンの声に一切の反応を示さなかった。

『ア、ア…イミナ、イミナ…マ、マモラ、マモラナキャ!!!!』


『アアアアアァァァァァッァア!!!!』


この世のものとは思えない咆哮がオクタグラムを包む。

「うっるさいのう!まったくもう…世話のかかる眷族なのだ。」

「パパ!パパ!」

突如、リヴァイアサンの指につけていたリミドの分身体が活性化する。

「な、貴様しばらくしゃべらないと思ったら!…なるほど、リミドが暴走しても分身体に影響はないのか…。これは…。もしや…?」

リヴァイアサンは何かを思いつく。

「ふぅ…。久々に我がんばっちゃおう。」

リヴァイアサンの人化が解け、完全な龍の姿へと変わる。

溢れんばかりの魔力、そのオーラはまさしく帝王の名を冠する存在のもの。

世界に八匹存在する龍王の一角。海龍帝王リヴァイアサン。

青い鬣、青い鱗。ギラつく眼光。

久々の龍の姿にリヴァイアサンは思わずにやけてしまう。

「かかってくるのだイミナ、リミド。早く我が楽にさせてやる。」

リミドはイミナとの融合が不完全になった為か動きが著しく遅くなっていた。それでも、常人からすればすさまじい速度、威力でリヴァイアサンに攻撃をする。リヴァイアサンの鱗は強靭だが、リミドの攻撃に少しダメージを受けているようだった。

「くぅー!この火力馬鹿め!」

尻尾でイミナとリミドを掴もうとするも、転移してしまいまともに攻撃をすることができない。リヴァイアサンは苦戦している様子だった。しかし。

「あぁ、あれを使えばいいのだ!」

リヴァイアサンは何かを思いついたようだった。すると目を閉じて攻撃の手を止める。そのすきを見てイミナとリミドはリヴァイアサンの顔面に攻撃を仕掛けようと、すさまじい魔力を込めた大きな腕で殴りかかろうとする。

『魔法封じ結界!!!』

先ほどの書物を見ただけでリヴァイアサンは魔法封じの結界の仕組みを理解し、それを再現したのだ。浮遊、転移が封じられたイミナとリミドはなすすべなくリヴァイアサンの尻尾につかまってしまう。

「ほれ目を覚ますのだ!!」

「パパ!」

そういってリヴァイアサンは指につけていたリミドの分身体をリミドの中に吸収させる。そう、これこそがリヴァイアサンが考えていたこと。リミドの正常な部分ともいえる分身体をリミドの中に入れることで、リミドの暴走状態が解除されるのではないか。実際、その考えはあっていた。

リミドは激しく変形し、その後鎮まり、イミナのもとへと収縮していった。

制服は原型をとどめておらず、イミナの体も魔力暴走のせいかボロボロだった。

リヴァイアサンは人の姿へと戻り、イミナをそっと抱きしめる。

「おぉよしよしイミナ。よく頑張ったのだ。よしよし。」

「す、すごい…イミナちゃんもだけど…。」

「海龍帝王の力の片鱗…。恐ろしい。」


イミナ、それを抱きしめるリヴァイアサン。

それを見守る二人のオクタグラムの生徒。

原型を留めていないボロボロのグラウンド。

異様な光景が広がっていた。



作者コメント:割と細かく書かなくて戦闘シーンは楽ですね。Lv2ガイルドベント。相当威力が上がっているようでリヴァイアサンの装甲を若干ですが貫通してダメージを与えたようでしたが…まだまだリヴァイアサンには追い付きませんね。果たして…イミナは無事魔法が使えるようになったのでしょうか?


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