44 イミナの学園生活2
まずはじめに。
めんどくさい話が嫌いな方は、「」内の会話を無視して構いません。
さて。現在俺らは何をしているか。暇をしている。現在イミナ、そしてリヴァイアサンはオクタグラムの講義を受けている。魔法術式の展開論、だそうだが俺にはさっぱりわからない。イミナは講義に集中し、熱心にそれを書き留めているようだ。さ、さっぱりわからん。イミナはまだ十何歳ぐらいだから、一応年上の俺の方がはるかに賢いとか思っていただが、まったくもってそんなことはなかった。世間知らずとか、まともな教育がされていない不幸な子、とか思っていたがイミナはそれで終わるような子ではなかった。努力の子だ。筋トレもそうだ勉強もそうだ。弱音は吐くが決してあきらめなかったな。過酷な環境の中でもイミナは自分で勉強をしていたということだ。なんだか…自分が恥ずかしくなってきました。
俺は暇そうにしてるリヴァイアサンに話しかける。
(あれ何言ってるかわかるか。)
(単純な魔法術式の作り方じゃよ。魔力回路の形成方法、限界点の調整と当人の魔力に合わせた柔軟性に優れた魔法術式といったところかの。)
り、理解しているだと。あ、あの馬鹿そうなリヴァイアサンが理解しているだと。
(人間は自ら魔法術式を構成せねばならぬのか、大変だのう。)
(リヴァイアサンはその…魔法術式ってのは作らないのか。)
(我は龍の種族として魔法術式があらかじめ備わっておるから作る必要がないのだ。もちろん自己流に魔法術式を改善することはあるがいちから組み立てないいけない人間はまた器用なことをする。)
(もう少しわかりやすくいってくれ。)
(魔法術式とは型のようなものじゃ。それに魔力を注ぎ魔法という結果を残すのだ。人間はその型が生まれつき備わっていない。だから杖や詠唱、魔術書といった魔道具という型を使ったりするのだ。まぁ、厳密にいうと魔道具は型を作るのを助ける道具と考えた方がいい。)
…ほう、ほう。
(人間は種族的にそういうものだろう。その分人間は発達した知能を生かして文明を築いてきたというわけじゃ。)
…ほう、ほう?
「先生、魔法術式が人間には備わっておらず、魔族は魔法術式があらかじめ備わっていますが、それなら明らかに人間と同程度の知識を持つ魔族は人間の上位互換であるように思えます。それなのにどうして人間と魔族は均衡状態にあるのでしょうか。」
とある生徒が先生に質問する。
「今回のテーマには関係ありませんが、いい質問です。確かに、一個体としてみれば魔族は人間の上位互換ともいえるでしょう。高い魔力、そしてあらかじめ魔法術式が備わっています。しかしそれはあくまで一個体としてみればです。個体としてみれば魔族の方が優れているかもしれませんが、群れとしては人間の方が優れていると言えるでしょう。魔族は繁殖能力が低く、子供を産むまでに人間の二倍の時間がかかると言います。それに加えて魔族は好戦的な性格が多く、群れとしてのコミュ―ニケーションが取りづらいというケースが多いということです。魔族だけでなく、他の種族にもそれは同じことが言えます。獣人でもドワーフでもエルフでも、人間よりも優れている点もありますが劣っている点もあるのです。どの種族にも良しあしがあり、一概にどの種族が優れている劣っているというのはないのです。ですが、現在の種族間の勢力均衡を見る限り魔族という単一の種族が人間、獣人、エルフ、ドワーフなどの人と総称される複数の種族を相手にできるのはその戦闘能力の高さ、そして魔物を従えているからだという点は頭に入れておいてくださいね。」
…ほう、ほう。今のところ5割理解できない。どうやらイミナは納得しているようで、すごくうなずいている。
「それでは話の続きをします。魔法術式の組み立てには様々な方法があります。このオクタグラムの初代学園長クルスト=ド=マーリー様による魔法術式脳内構築理論が世間に広まるまでは、一般的に魔道具と呼ばれるものを使って魔法を使用していました。しかし、それでは柔軟性に欠けている上に魔力のロスが必ず生じてしまいます。そこでクルスト様は魔法術式を脳内で構築することが可能だということを研究によって導き出しました。そうして現在、様々な魔術が知識として出回り、わざわざ魔道具を使わなくても魔法を使うことができるようになったのです。この理論のおかげで人間の魔術の文明は飛躍的に発展しました。」
うん。なんだか難しい様子をしているようだが、さっぱりわからない。イミナが満足そうにしているから、まぁ…いいか。
それぞれの感想
「はい!魔法学園の最高峰であるオクタグラムの偉大さを感じることができました。教師陣の客観的視点による一切の差別のない教育方針、魔術方式構築の汎用的な場面を幅広く…」
「…。えっと、魔法ってすごいってことだろ?」
「人間とは面倒な生き物だ。我はわざわざ脳内で術式を構築せんでも魔法が使えるから、なんだか不幸自慢をきかされた気分じゃった。」
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