42 大魔術師マルエ=ド=マーリー
学園の中へ案内され、その中の豪華な一室に通された。
「ご、豪華…!」
高級な装飾が施されていて、その重厚感に圧倒される俺。
「マ、マルエ様!」
大魔術師に目を輝かせているイミナ。
「イミナかわいい。」
イミナの頭をひたすらなでまくるリヴァイアサン。
確実にこの部屋に通されるものとして適した態度ではないことがわかる。
浮かれた様子の俺らを見てマルエは笑う。
「ふぉっふぉっふぉ。まずはようこそ、魔法学園都市オクタグラムへ。君はうちの学園の入学希望かね?」
「あぁいえ、冒険者としてここを訪ねました。」
「冒険者!その若さでか!はぁ、何か複雑な事情がありそうじゃな。」
「はい…。東の大陸出身で、親から捨てられました。」
「はぁはあ、その白い髪が原因かなるほどなるほど、それは苦労したのう。しかし奇妙じゃな、その青色の部分は染めたものなのか?最近の若者の流行には疎くてな。それはファッションというやつか。それとも…」
「そこの海龍帝様と関係しているのかの?」
「なんじゃ、やはり貴様気づいておったか。」
「ふぉっふぉっふぉ、海龍帝様からあふれ出る魔力。まさしく龍の王と言わんばかしその威圧感。少しばかり魔力が感知できればすぐにわかります。それで、龍王の一角が、こんな魔法しか能のない場所へ何をしに?」
リヴァイアサンはイミナを指さす。
「こいつは我の眷族での、それでこいつの悩みを解決してほしいのだ。」
「ほう、龍王の眷族とわ、これまた珍しい客じゃわい。それで?その悩みとはなんじゃ。いってみい。」
「はい…私のこの、魔法不可の呪いを解いてほしいんです。」
マルエはひげをいじりながら少し考える。
「魔法不可の呪いですか…。聞いたことはあるが、相当高位の呪いじゃの。スキルとして呪いが残ってしまったのじゃろ?」
「はい。書類でも調べたんですが、どこにも載っていなかったんです。」
「それもそのはずじゃ、スキルに残すほどの呪いはとても高度なもの。そんなのが世間に広まれば大変なことになります。いわゆる、禁忌というやつじゃよ。その呪いをかけたのは誰なんじゃ?」
「私の親です。」
「ほう、それまた酷なことするのじゃな。親の名前は?」
「それがわからないのです。」
イミナに下の名前がなかったことに違和感を覚えなかったわけではない。
下の名前はいわゆる家名というやつで、もちろんそれを持っていない人間も多くいる。実績を上げて国から名前を貰うものもいるし、自分で下の名前を付ける人もいる。しかし、イミナは違う。
「私はもともと家名が付いていました。しかし、私の身分証を見てもわかると思いますが私には家名がありません。」
「家名抹消か…それまた酷なことを。」
家名抹消。それは家族の縁を切るということ。家名は消され、それを名乗ることを許されない。イミナの場合はもっとひどく、家族の名前を思い出すこともできないのだ。
「東の大陸で呪いに長けている…住んでいた場所も分からぬのじゃろ?」
「はい。私が育った家の場所は教えられませんでした。なにせ部屋に閉じ込められていたもので。」
「そうかそうか…。魔法不可の呪いは興味深い。わしもわしで調べてみよう。もしよかったら学園内の図書館を使うといい。有力な情報があるかもしれんでな。」
そういうとマルエは指を鳴らした。すると突然イミナの目の前に、魔法学園の制服が出てくる。
「この都市ではそれが魔法学園の通行証みたいなものだ。入校許可証というのもあるのじゃが、基本外からやってきた魔術師などに渡すものでな。年齢的に、それを着た方が生徒も混乱しないで済むだろう。」
「え、いいんですか!」
「もちろんじゃとも。ただこの都市を出るときはちゃんと返すのじゃぞ。意外とここの制服は高いのじゃよ。ふぉっふぉっふぉ。」
赤を基調とした清楚な制服。それを手に持ち、イミナは目を輝かせている。爛爛って感じだ。
「ところですまぬの。海龍帝といい白髪といい魔法不可といい情報量のあまりの多さにスルーしていたのじゃが、その黒いのはなんじゃ。」
(リミドさん、どうしますか。悪魔っていいます?)
(たぶん嘘ってばれるタイプだと思うぞ。)
(我は早くここから出てイミナとデートがしたい。)
イミナはリヴァイアサンの眷族になったため、イミナの思考に直接語り掛けることができるのだ。ただ、今正直どうでもいい内容だから黙っていてほしい。
「その、だれにも言わないと誓ってはいただけますか?マルエ様。」
「もちろんじゃとも。」
「これはリミドさんです。種族はリミッドパーツ、リミッドの一種で私の心臓の代わりなんです。」
「どうも、リミドです。」
するとマルエは興奮した様子で身を乗り出してしゃべりだす。
「ほうほう、リミッドとな!君の情報量の多さはなんなんじゃ。わしびっくりじゃぞ。しかもそのオリジナル種とな!?ほうほう、これはこれは。イミナよ、君は冒険者といっていたな。」
「はい、そうですが…。」
「どうせこの都市にはギルドがない。冒険者としての職もないじゃろうから、図書館の閲覧だけといわずしばらくこの学園に入学しなさい!わしはいろいろと研究がしたいのじゃ!もちろん、その代償としてわしも魔法不可の呪いについては調べるし、ここの授業もうけていい。幸い君は魔法適正も持っているし、魔術の知識もあるじゃろう。うちの授業にもついてはいけるだろう。」
「にゅ、入学までしていいんですか!あの超有名なオクタグラムに!はぁ、夢みたい。」
イミナいわく、凄腕の魔術師のほとんどはこのオクタグラムの卒業生だという。一流の魔術師を夢見ていたイミナはオクタグラムに強いあこがれを持っていたのだ。
「おい待てイミナ、お前魔法使えないだろ。授業とかどうすんだよ。」
「なぁに、魔法が使えなくても魔法の勉強ぐらいできるわい。あらかじめ教師陣には魔法が使えないことは伝えておく。」
「おい待て老人。我はどうすればいいのじゃ。我は基本イミナと一緒にいたい。」
「別に構わない。イミナと同じタイミングでおぬしも研究させてくれるのならここの滞在を許可しよう。」
「なに研究だと?この高貴で偉大なる我をか!?思う存分するがよい。」
あ、すんなり受け入れるのね。
「これまた幸運、こんな貴重な研究サンプルが…ふぉっふぉっふぉ。いやぁありがたいありがたい。」
物騒なこというなこの爺さん。
ちなみにこの後リヴァイアサンの分の制服までもらった。
イミナの制服姿はすごくかわいかったぞ。
リヴァイアサンはどうだったか?別に興味もない。
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