19 悪魔帝トゥルモティアス
『我が名は悪魔帝トゥルモティアスである。』
あまりの禍々しさと、あの悪魔から発せられるオーラに圧倒されて数秒間思考が止まった。いけない、頭を動かせ。あいつはなんだ?悪魔帝?本物の悪魔か。悪魔帝、たしか俺が自分のことを悪魔だと名乗ってからそれが嘘だとばれないように悪魔のことを調べているときに見たことがある。悪魔には序列というものがあり、上から悪魔神、悪魔帝、悪魔侯爵、上級悪魔、中級悪魔、下級悪魔だ。
その、悪魔帝。この世に現れれば大災害をもたらすというその悪魔帝。確か5人いて、どれもがLv160を超える化け物だ。そんなやつがなぜここに?俺らはDランク昇格試験を受けていて、予想としてオークキングがいてそれが確認でき次第戻るはずだった。それがオークロードがいて、悪魔帝がいる?いったいどうなってやがる。あのオークの狂気ともいえる行動、オークロードの「あの方」という発言、そしてこいつが現れる直前に祭壇につるされた11人全員が死亡した。ここから導き出される答えは、こいつはオークと人間を生贄にしてこの世にあらわれたということだ。そんなやつとまともに対峙して戦えるのか?今の俺らのレベルは90。
「おいイミナ!」
「あ、あ。目の前で…。」
「イミナ!!!たて!」
「あ、う、うん。ごめん、ちょっと…。うん、ごめん。」
イミナの表情が先ほどと打って変わって怒りに満ちていく。
「クルルさんを殺したの、こいつなんだよね?」
「あ、あぁ。悪魔帝トゥルモティアス。悪魔の中で二番目に強い序列の悪魔だ。推定のレベル160以上。俺らじゃまともに戦って勝てる相手じゃない。」
「じゃあ逃げる?敵は!?」
「生きて帰る!」
「生きて帰って情報を持ち帰る、それが大切だってクラッチ言っていただろう。一時の感情に身を任せるな。」
『つまらぬ。怒りに満ちた表情、そしてそれが絶望に代わる瞬間はとても美しい。なぜ立ち向かってはこない。あぁ、貴様も逃げるのだな。どうやら奇妙な従魔を連れているが、その者と別れの挨拶でもするのだな。』
そういうとトゥルモティアスは手と思わしき体の部位を俺らの方に向けて静かにつぶやいた。
『心なるモノの終焉(ハートエンド)』
その瞬間、俺に強い衝撃が来る。強く押しつぶされる感覚、俺はそれに抵抗しようとイミナに装備していたガントレット、転翔用のブーツ、そして服までもをもとの心臓の位置へと戻らせ、その密度を高めてその衝撃に抵抗した。
「げ、げほっ。い、今の何リミドさん。」
「わ、わからねぇ、ただ、心臓を押しつぶされるそんな感覚だ。今の俺の量でやっと抵抗できた。」
『…。なぜだ。なぜ私の特権を。なぜ私の特権魔法(プリビレージスキル)を防くことができたああああぁぁ!!!』
悪魔は激しく憤怒し、叫ぶ。
どうやら、あの悪魔の使ったスキルは対象の心臓部分を破壊するものだったらしい。俺のように意図的に心臓を固くすることができない限り、確実に命を落とす危険で強力な魔法だ。
『私を怒らせ、無事逃げれると思うなよ?』
「イミナ!左ガード!」
俺の声に反応しイミナは左腕で自分の体を守る体制をとる。それに合わせて俺もアシストし、頑丈な盾を形成する。
瞬間、強い衝撃が左側からきて俺らを吹き飛ばした。
俺はイミナが地面にぶつかるタイミングに分身体を出してイミナの吹き飛ばされた衝撃をできるだけ吸収する。
心臓が、バクバクする。これ以上にない緊張。緊迫感。焦り。不安。恐怖。
俺ら二人ならこの世界で無双できるんじゃないかと思っていた。Lv90という、Bランク冒険者に匹敵するレベルを持っていた。イミナの頭から血が流れる。駄目だ、イミナが倒れてしまったら俺は動けなくなる。流血なんてもってのほか、俺の動きが鈍ってしまう!やばいやばい、どうする、どうする!
『スキル:耐・恐怖(Lv1)を取得しました。』
『スキル:耐・恐怖(Lv2)を取得しました。』
『スキル:耐・恐怖(Lv3)を取得しました。』
…。この緊急事態にスキルを獲得した。そのおかげで少し、冷静になれたようだ。
俺は自由補助粘体(アシストカスタム)を開き、急いで浮遊を所得する。
『補助形態(補正:浮遊)を所得しました。』
俺はイミナの背中に翼を形成し、思いっきり浮遊しようとする。
…!だめだ、飛ばない。このスキルも俺の意志だけじゃ動かない、イミナの意志よってしか発動しないんだ!
「イミナ!飛べ!そう念じろ!」
薄れゆく意識のなか、イミナは必死に念じていた。
「と…と…飛ぶ。」
その瞬間ものすごいスピードでイミナは上空に飛び上がる。
「よし、よし!これで逃げれる!」
上空約300メートル。トゥルモティアスがどんどんと小さくなっていく。
よし、よ
急速な落下。浮遊が止まったのだ。
どうして、俺のMPにはまだ余裕がある!
あ
イミナの意識が途切れていた。
落下する俺たちを、トゥルモティアスはその歪な大きな手と思われる部位で俺らのことを掴む。あぁ、終わった。
いや、まだだ。
最後の希望だ。イミナ、もう少し耐えてくれ。
《極装(ガイルドベント)》
イミナを覆っていたリミドが突如膨張し、トゥルモティアスは思わず手を放してしまう。そこには、禍々しい黒色の鎧を着た化け物がいた。あふれ出る狂気と殺気。見るものすべてを破壊しようとするその赤い眼光。なびく白い髪。全身を覆う黒色の鎧。リミドの臨時暴走戦闘形態。《極装(ガイルドベント)》。
リミドがこの世に転生したときに一度だけ発動したこの形態には実は二人の知らない秘密があったのだ。
《極装(ガイルドベント)》 、その本質は『融合』。
イミナとリミドは限りなく同一の生物として存在している。
イミナが体であり、リミドが心臓である。互いがいなければ、生きていけない。
そんな共存関係にある。しかし、それでも別々の存在であったのだ。
リミドは完全に適合しているが、あくまでも別々の存在。
イミナとリミドはステータスが別々に表示される、それが何よりの証拠である。
そして、この二人を融合させ瞬間的に一体化させるのがこの《極装(ガイルドベント)》。
名前:イミナ
種族:人間(種族:亜種)
レベル:90
状態:通常
ステータス
HP:381/12396
AT:9005
DF:2949
SP:51
MT:832
MP:2050/2050
称号:運命の子
スキル
・吸収解析
・呪い:魔法不可
・魔法適正
・武術(Lv42)
・神速
・影踏
・衝撃強化・緩和
・転翔
名前:リミド ("%&($#%)
種族:魔流性仮部位欠損補給型粘体(リミッドパーツ)(新種族:オリジナル)
レベル:90
状態:完全適合
ステータス
HP:0/0
AT:86000
DF:91000
SP:1020
MT:530
MP:1409/2050
称号:運命に託されたもの
スキル
・落下耐性
・自由補助粘体(アシストカスタム)
:《極装(ガイルドベント)》
:補助形態(補正:体)(自由伸縮:効果なし)(補正:服)(補正:鎧)(補正:武器) (補正:浮遊)
:素材変換
・脈動
・再生(Lv3)
・転翔_ステップ
・ステータス補正(Lv5)
・暗視
・収納
この二人が、完全に融合する。
二人のレベルが重なり、そのステータスは爆発的に増加する。
名前:イミナ=リミド
種族:魔流性完全融合型粘体(パーフェクトリミッドアーツ)(種族:オリジナル)
レベル:180
状態:完全融合 暴走
ステータス
HP:381/12396
AT:128430
DF:180313
SP:3409
MT:2802
MP:8500/8500
称号:運命の子
スキル
・吸収解析
・呪い:魔法不可
・魔法適正
・武術(Lv42)
・神速
・影踏
・衝撃強化・緩和
・転翔
・落下耐性
・自由補助粘体(アシストカスタム)
:《極装(ガイルドベント)》
:補助形態(補正:体)(自由伸縮:効果なし)(補正:服)(補正:鎧)(補正:武器) (補正:浮遊)
:素材変換
・脈動
・再生(Lv3)
・ステータス補正(Lv5)
・暗視
・収納
HP以外のステータスは二人のステータスを足し合わせた値の倍ほどの数値になっている。その強さは、トゥルモティアスをしのぐほどだった。
リミドの意識は薄れていた、暴走状態ということもあり、まともな思考ができない。しかし、この少女を守るため、リミドは体を震わせた。
イミナと完全に融合したリミドの強さは、圧倒的だった。
トゥルモティアスの攻撃をすべてかわし、その体を自由自在に変形させてトゥルモティアスを激しく攻撃していく。トゥルモティアスは何かを叫んでいる様子だったが、意識が薄れているリミドには聞こえなかった。
「はっ!」
意識が戻る。《極装(ガイルドベント)》がとけ、イミナと俺が分離し、イミナは人の形、俺は心臓へと戻った。目の前にはトゥルモティアスの屍があった。
倒した?倒したのか。俺が。イミナが。いや、俺たち二人が。
本当に、危機一髪だ。いろいろなことがありすぎて頭が混乱している。ただ、今俺がやるべきことはただ一つだ。
俺はイミナを繭状に多い、その性質をとても固くした。イミナが安全なところに行くまでは、だれにも触れさせない。もう二度と、傷つけない。
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