幸せの一柱

プロローグ

 ──ねぇ、幸せってなんなのかな？

｢幸せだ｣って一口に言っても、それは当人だけの話であって、他の誰かはそれを｢不幸だ｣と感じることもある。例えば｢愛情｣。誰かを愛すること、また、誰かに愛されることは幸せを感じられるだろうけど、一方で、疎ましく思う人間も少なからず居るはずです。具体的な話で言えば、｢相手の幸せ｣が｢僕｣または｢私｣の｢幸せ｣であると言うもの。もしもだけど、あなたの行動ひとつで相手を不幸にしている場合があったとしましょう。けれどもあなたは、愛している相手のためになると思って行動しているのだから、相手はきっと幸せであるだろうと、勘違いすると思うわ。でもこれは幸せじゃないよね？相手が不幸で、自分は勘違いしているんだから、両者共に、幸せであるとは言えないよね？けれど、いくら勘違いしていようと、幸せだと｢感じている｣のだから、それは間違いなく｢幸せ｣ではあるよね。でも、やっぱりこの幸せはただの自己満足で、私が質問した｢幸せ｣とは別のものだと思う。だって、こういう自己満足の幸せはただの皮肉にしかならないんだもの。

 さて、本題。｢幸せ｣とはなんなのか？実のところ、私にも具体的な答えは持ち合わせてないの。だから、明確にこれだ！っていう言葉を口に出せないの。でも、私はひとつだけ知ってる。今からそれを、少しずつ語っていこうと思ってる。この話が終わった時、あなたの見ている世界がほんの少しでも、輝きが増すことを願って。そして、初めの質問の答えを見つけられることを祈って──。