振り返ればあんなに一緒に遊んできたよな
(……にしても俺。ほんと紗由花と一緒に遊びまくってんなー)
今日もこの俺、
紗由花とは幼稚園からの仲だ。家も道路を挟んだ向かいにあるというこれでもかってくらいな幼なじみだ。
幼稚園・小学校と遊びまくったのに、中学三年生になった今でも一緒に遊びまくってる。
紗由花は身長が女子の平均よりはちょい高めらしい。髪は肩にぎりぎり掛かるくらい。
テレビゲームやボードゲームでいい勝負ができて、スポーツでもいい勝負ができ、テストでもいい勝……すいませんそこは完敗です。
特に家庭科の成績は半端なくて、ボタン外れたら縫ってくれたり、弁当必要な日はうちの母さん差し置いて弁当作ってくれたり。大根の皮を包丁でむいてるのとか超かっちょよかった。
一緒のクラスになれば一緒に学校行事を盛り上がり、休みの日はアクティブに遊ぶこともあればのほほーんとすることもある。なんていうか、居心地がいいっていう感じか?
紗由花も俺と遊んでくれるし、だから俺も紗由花と遊ぶし、それが昔から続いてるから今でも続いてて。
当たり前っていう感覚なんだろうか? でも家族でもないのにこんなに毎日仲良くできてるなんて、なんかこう、ちょっと特別な感じもする。
他にも友達はいろいろいるが、一緒にいる時間の長さじゃ紗由花がぶっちぎりだろう。二位にダブルスコア以上突き放してるかも。
今は一月、めちゃんこ冬なのでこたつでぬくぬく。紗由花の部屋はさらにエアコンまで入ってるリッチさ具合で、試験的にこたつを外して過ごしてみたものの、やはりこたつのぬくぬくは外せなかったらしい。
「開けてー」
ドアの外から紗由花の声。俺はぬくぬくモードから通常モードに移行し、ドアを開けた。
当たり前だがドアを開けると紗由花がいた。白いマグカップ両手持ち。それぞれ紫色パンジーと黄色ビオラの絵らしい。いやこのマグカップなら何度も見てるから答えられるんだけどさ、一緒に歩いてるときにいきなりプランターで指差されるとぐぬぬ。
白いもっこもこセーターに紺色のこれもちょいもこひざちょい下まで丈スカート。今はスカートで隠れているがひざ上まである長くて白い靴下装備。冬の時期の一般的な紗由花装備である。
俺? ただの水色の長そでシャツに黒い綿パン灰色靴下だけど? 白いダウンジャケットはベッドの横に青いカバンと一緒に置いてある。
装備を確認したところでドアを閉
「ちょおっとお!」
「じょーだんじょーだん」
若干ぷんすか若干笑ってる紗由花が改めて部屋に入った。今度こそドアを閉める。
俺は俊足を生かしさっきまでぬくぬくしてたポジションに戻る。
実は新型のクッションがこの部屋に導入したとかってことで、早速俺も試させてもらっている。
横幅がやや長い
デザインやでかさはともかく、これめっちゃくちゃふわっふわでさ! このふわふわさ加減にこたつのぬくぬくの相乗効果マジパネェっす!
寝転びながら、こたつ布団を改めて首くらいまで掛け、頭はふわふわクッション……あぁ……幸せっ。
「もーっ、早速使いこなしてるって感じー?」
「あーまじこれすげぇわ」
「後でお母さんにお礼言っといてね? それ福引で当てたのお母さんなんだから」
「超お礼言いまくるわ」
当然こんなに紗由花んとこ来まくってるんだから、お互いそれぞれの親とも何度も顔を合わせている。
紗由花は手に持っていたマグカップふたつを両方テーブルに置いた。
「もうちょっとそっち寄ってっ」
「んぁ? こうか?」
俺は右側に寄った。右半身がわずかに冷たくなった。
「失礼しまーす」
「ちょ、そこかよ!」
俺がぬくぬくモードってるすぐ左隣に紗由花が入ってきた!
このこたつはリビング用のようなでっかい物ではないがお一人様用なほど小さすぎはしないので、確かに縦に二人は入れなくもないけどさぁ……。
「あ~ぬくた~いっ」
紗由花は俺と違い座っているので、寝転んでいる俺からしたら巨人に見える。すまんいい例えが浮かばなかった。
マグカップをじゅるるしてる。ポタージュ持ってくるって言ってたから中身はたぶんポタージュだろう。サンドイッチ作るときのパンの耳をクルトン化させてるらしい。さすが淀潮家。
テーブルに置き直したマグカップを両手でさわさわしてる。手を温めているようだ。
「このこたつにも結構お世話になってるなー」
「そうだねぇ。私が物心ついたときからもうこれあったよ?」
「物持ちいいな」
「中のヒーターは壊れちゃったときがあるから、そこは取り替えたことあるけどね」
「フッ。その作業を担当したのはどこのだれだと思っている」
「ありがとー雪松~」
にっこり紗由花ちゃんがいた。俺見下ろしてるけど。もしポタージュだばだば落とされたらたまったもんじゃねぇ。
「飲まないの?」
「おっと、飲む飲むっと」
俺は右手をついて、うんしょうんしょと身体をこたつから出しながら座る体勢へと移行した。ちょっと脚当たった。特にツッコミはなかった。やっぱりポタージュだった。
では右手を召喚し早速。
「んまい」
左腕当たった。特にツッコミはなかった。鮮やかな薄オレンジ色で実にクリーミー。ちょっと大きめのクルトンが手作りの証。ポタージュ自体もインスタントのを改良して作ってるって言ってたな。
俺は右手でポタージュを飲み左手は後ろへ。紗由花は左手でポタージュを飲み右手はこたつ内。
「紗由花左利き?」
「ううん、右。ってこんなに長く一緒にいるのに今さらそんなこと聞いてくるの?」
「ですよねー」
たまたま左で飲んでるだけでしたとさ。
「長く、かあ。ほんとに私たちっていっぱい一緒にいてるよねー」
ちらっと横目でこっち見てきた。
「まあなー。幼稚園からだし」
「今年も一緒にいようねー」
「おう」
改めてここで今年もって言ってきたのは、今一月で、そして俺らは中学三年生ってことで、つまり高校行っても一緒にいようっていう意味だろう。
俺たちは同じ高校を受験することを決めている。
紗由花からの誘いだったが、俺は別に高校にこだわりとかないし、紗由花が俺と一緒にいたいって言ってきたからそのまま従っただけだ。もちろん俺も紗由花と一緒にいるのは楽しいしな。
「落ちないでよー?」
「鋭意努力いたします」
先生が言うには、狙う高校へは俺の学力でもテストどおりの力で挑めれば大丈夫だそうだ。当日かぜとかひきませんように。
「これで紗由花だけが落ちるようなことがあったらおいぃーーだなっ」
「ありませんっ。先生のお墨付きがあるもーん」
でしょうね。はい。
「紗由花頭いいよなー。普段何食べてんだよ」
「商店街で買ってきた材料で作られた普通の料理ですー」
「隠し味に頭良くなる実でも入れてるとか」
「そんなの知ってたらもっと雪松に食べさせてますー」
「せやな。ん? なんかちょっとそれひどくね?」
「くすっ、ふふっ」
にこっと笑った紗由花。昔っからよく笑うキャラだったから、俺はいろいろギャグ考えたもんだ。にしてもうまいなポタージュ。
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