六
この神事の夜、このお
「わたくしは女王
八代女王は我が高祖母
いや、それが何の役に立つ。
逃げることもできずに穴の底から見上げていると、女王
「その娘、連れてゆくつもりか、と聞いておる」
敵意は感じなかった。
しかし背後に従者たちを連れているかもしれない。私を捕らえるつもりかも。
「答えよ。口がきけぬか。耳聴こえぬか。否、わたくしの声は聞こえておろう」
「……恐れながら、仰せの通りでございます。この娘を我が故郷へ連れて行きたいと思います。お
「
女王が笑った気配がした。
背を冷たい汗が流れ落ちる。
「天が
名も名乗らぬ者よ、この林の竹となるべき娘を盗んでゆくというわけか。わたくしから。
いつしか私は、自らの掘った穴の底に膝をついていた。
赦されぬのであろう、と思った。
狭穂は埋め戻されて殺される。
私も神事を
可哀想に、狭穂は私に助け出されるかあるいは女王として目を覚ますと信じて眠ったまま死んでいくのだ。
いっそ私が殺してやったほうが良いのか。そして私もここで首掻き切って死のうか。一緒になろう、必ず助けるという約束を
私は、帯に挟んだ小刀に手を近付ける。
ざあ、ざあ、と波のように、夜風が無数の竹の葉を鳴らしている。
その隙間から、女王のやや低い声が降ってきた。
「この
女王の持ちものを所望するならば、その者は必ずこの問いに答えねばならぬ。これまで答えた者は無いが、当てれば竹の娘をくれてやろう。当たらねば朝日の訪れを待たずに処刑する。よいな」
「は……」
「名を名乗れ。処刑するにも記録せねばならぬゆえ」
「
「王族とて何の助けにもならぬぞ」
「もとより承知」
いいだろう、と女王は溜め息のように言い、そして頭上から刺す月光さながら、私に向かって問いを下ろした。
「
全身が総毛立った。
高熱を出した時のように身体が
これで。
これで全てが、
つながる。
私は信じられない思いで、女王を見上げ。
そして答える。
「
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