第3話 レンとリリ ③

 歩き始めて十数分、工房街を抜け問屋街に入ると、先程までより人の賑わいが大きくなった。

 いろいろとリリが物色し、レンが止める。ここに来ると毎回のことだ。


 レン「リリ、やることが終わってから。後でゆっくり、な?」


 リリ「はーい…」


 レンに諭され、リリは諦めてトボトボとレンの後ろを着いていく。


 小さな紙袋を店員から受け取り、あっけなくおつかいは終わった。

 行き道で疲れたのか、リリは広場の噴水の近くのベンチに勢いよく腰掛ける。レンもそこに腰かけようかとしたその時、肩を叩かれるのを感じた。

 振り返ってみると、この国では少し目立つ他の人より頭1つ分大きな背丈と、見たことも無い意匠をあしらえたローブを着た、色白の男の姿があった。


 レン「何か用ですか?」


 突然のことに少し驚きはしたが、外国人も多いこの国では少し目立つ風貌も気にはならなかった。

 振り返ると同時にそちらも驚いたのか男は手を引き、優しく微笑みかけた。


 ???「驚かせたようですまない。私は…」


 一呼吸分何かを考え、詰まった言葉を言い直した。


 アーク「私はアーク。少し尋ねたいのだか、少しいいかな?」


 レン「ええ、もちろん。」


 顔つきはやや怖いが案外物腰が柔らかく、それを見たレンは緊張を解き、彼に応じることにした。


 アーク「変な質問なんだが…あの塔が年前に現れたか分かるかい?」


 道でも尋ねられるかと思っていたレンだが、思わぬ方向からの質問に少し戸惑う。


 レン「塔…?一昨年に発見から100年経ったらしいけれど…建てられたのはいつかは分からないです。」


 記念日には華やかな祭りが催されたのでよく覚えていたが、彼の質問には上手く答えることができないレンは少し残念そうに項垂れる。

 そして答えを聞いたアークは眉間に皺を寄せ、顎に手を当てブツブツと何かを呟く。


 アーク(発見…?建てられただと?どういう事だ?)


 困惑する彼だったが、諦めをつけたのか、レンをもう一度まじまじと見てもう1つレンに質問した。


 アーク「…ところで君のその手は…」


 ???「悪いが、そこまでだ。」


 質問の核に触れる前に、もう1人男が現れそれを遮るようにレンとアークの間に割って入った。

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