第1話 レンとリリ ②
俺は幼少期に両親とともに事故に会い、両親はその場で即死、俺は両足を失い、腕も使い物にならなくなった…らしい。
というのも、ニシキさんに拾ってもらうまでの記憶が無い。気にはなるが、正直どうでもよかったりする。これからが大事なんだ、そうニシキさんがよく言っていたからだろうか。
(それでも、どこかぽっかりと穴が空いている気がするんだ。)
キッチンに立ち、目玉焼きが焼けるのを待ちながらそんな事を考えた。
???「んん…おはよ〜」
そしてもう1人この家に住む者がいる。ニシキの孫にあたる、レンと同じ17歳の少し低めの身長で金髪が目立つ少女、リリだ。
小さな頃からニシキの技術を学び、彼女は今では彼と並ぶほど才能を持っている。
ニルバーナの製作にも携わり、今その整備はリリが担当している。
レン「おはよう、リリ。」
リリ「おはよ、レン。」
タンクトップにハーフパンツというだらしの無い格好で現れた彼女は椅子に座り、両手両足を目いっぱいに広げて伸びをする。
レンはそれを横目に焼きあがったトーストと目玉焼きを皿に乗せていく。
ニシキはいち早く食べ終わり、食後のコーヒーを飲むと、一呼吸置いてからレンたちの方を見る。
ニシキ「レン、リリ。おつかいを頼んでもいいか?」
リリ「もちろんいいけど、何買うの?」
パンをかじりながらあまりない頼み事を不思議に思いながらニシキに質問を返す。
ニシキ「8番街にあるいつもの店だ。注文しているものを取ってきてもらうだけでいい。」
レン「分かりました。食べ終わったらすぐ行きますね。」
ああ、とニシキは頷いて、レンとリリは急いで食べ進める。
朝食を食べ終わり、一通りの準備を終え、2人はおつかいの内容を確認する。
リリがメモを読み上げ、その間にレンが義手を隠すための手袋をはめる。
リリ「それじゃ、行ってきマース!!」
リビングにいるニシキにも聞こえるように大きな声を響かせて、玄関のドアを開ける。
3人が住んでいるのは工房街の端の方で、目的の問屋街までは少し距離がある。
2人は他愛もない話をしながら、軽い足取りで目的地へ向かう。
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