理想の果てのニルバーナ

白鳥飴

第1話 レンとリリ ①


 ーーーーーー神々の遺物。それは、各地の遺跡から発掘されたモノ。

 何年前のものなのか、素材が何なのかも判明できず、ただ人間が理解できるのは『何か凄い力を持っている』、その程度だった。

 しかしこの神々の遺物の発掘と同時にこの世界に「魔物」と呼ばれる化け物が現れるようになった。人々は混乱に陥り、誰も魔物を止めることが出来なくなり、人の住む地の大半は魔物が蔓延る地となった。

 しかし1人の人間が神々の遺物を使い方を見つけ、これを用いて魔物を撃退することに成功した。

 そして発掘から数百年、神々の遺物の解析が進み、それは人々に繁栄と過去の栄光を取り戻しさせるものであった。

 そしてその神々の遺物の解析が進み、秘められた能力を崇拝するかのように2つの国が現れた。

 込められた「魔法」の力を用いて発展した国「マギア」と、「機械」としての力を用いて発展した国「フェルム」である。

 二国間では長い間いがみ合いが続き、そこから逃げ出した人が1本の塔を目指し、て集い、「魔法」と「機械」どちらもが共存する国、塔の国「トゥリス」を作った。

 現在トゥリスは両者の仲介役を担い、両者との交易で発展している。


トゥリスの工房街の端にある小さな工房兼住宅の一室で目を覚ました。身だしなみを整えて、欠伸をしながら階段を一歩一歩ゆっくりと降りていく。


「おはよう、レン。体は大丈夫か?」


「おはようございます、ニシキさん。えぇ、問題ありません。いつも通りですよ。」


「そうか。それならいいんだ。」


 椅子に座ってタブレット端末で新聞を読んでいたニシキは俺の方に振り向き、そしてどこか満足そうに、そして自慢げに白い少し伸びた顎髭を弄りながらレンの四肢を見つめる彼は俺の義父にあたる。

 足を失った幼い俺を拾い、男手ひとつで育ててきた、誇りに思える人だ。


 俺の四肢は機械でできている。美しい純白で彩られ、しなやかな曲線と角張った関節がなんとも見事だ。

自分で思うのもやや恥ずかしい気がしないでもないが、事実なのだ。

これこそが彼の作で、誰でも見ただけで彼の技量を知ることが出来るだろう。

 彼は義肢装具士を生業としており、工業と魔法が発展したこの国では生の手足よりも義肢の方がいい、と言う人も多く、彼ら義肢装具士の需要はかなり高い。

中でもニシキの義肢は性能が一級品なのに加え、見た目も美しいと評判だ。

 特に俺の義肢「ニルバーナ」はニシキが自身の最高傑作と謳う程の義肢で、全ての場面、特に戦闘においては最高の性能を誇る。

 それは「神々の遺物」にも劣らないレベルなのだ。

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