6ー12






 ー理事長室ー





 達也が通う学校の理事長室は、他の部屋よりも装飾が豪華で、ガラスケースの中には、生徒達が取った賞状、トロフィーなどがあり、先代達の理事長達が置いてある物もあり、今代の理事長である香坂の私物も置いてあった。



 しかし、そんな理事長室には、不穏な空気が漂っていた。




「お前らはここで大人しくしていろ。もし、下手に動いたり、反抗する行動に出たら……分かっているよな?」


『………』




 フードを被った男達が、職員室にいた教師陣達を理事長室に集めていた。理事長にいた私は、何事かと思ったが、フードを被った男達が、凶器や武器を持っており、只事では無いと思った。




「君達は……何が目的で、この学校に来たんだ?」

(ただの悪戯にしては、度が過ぎている。これは、本当の組織絡みの奴等か)




 財閥の娘として、多少なり表裏の組織に関しては詳しいと自分で自負出来るし、それを知る情報源もある為、自分の知識を探り、目の前にいるフードの男達が何者かを、探り始めた。


 フードの男達は、無言を貫き、その中でも赤のフードを被った男が、代表として口を開いた。




「この学校にいる一人の生徒に用があるだけだ」


「……」

(生徒、か……考えたくはないが、達也かもしれないな……)


「なんだ……。そうか、分かった。準備が終わり次第……あぁ、すぐに来い」


「誰と電話をしてるんだ?」


「さっきの質問には答えたが、2度はない。そして、お前には関係の無い事だ。香坂財閥の娘」


「……」

(ほーん、私の正体を知ってるって事は、それなりに下調べしたのか)



 

 

 私の正体を知っている、と言うなら、私を誘拐し、父に現金なり何なりを要求する事は出来る……と思うのだが、そんな欲より、一人の生徒に用がある。


 目の前にいるレッドフードがリーダー格と思うのだが、ソイツが本当の頭では無く、それを命令したがいる。




「……」

(かと言って、達也は色々と大層、恨まれる立場にあるからな……。私も例外ではないが)




 達也も私も社会的立場が上位に上がれば上がる程、それをよく思わない人間は必ずと言っても良いほどいる。


 思うだけなら実害が無く、無視していれば良いのだが、直接的にも間接的にも邪魔をしてくる様になれば、面倒くさい。




「……」

(だが、ここまで大事になる程の恨まれている。という事……何故だ?何故、ここまでするんだ)




 私が思考の渦に立っている時、リーダー格のレッドフードの奴が部下達に向かって何かを言っていた。




「おい、目標を確保したらしい。ここを出るぞ」


「「「はい」」」


「……ここを出るって……外には、騒ぎに応じて来た警察が来ていると思うが、どうやって出るというんだね?」


「はっ、お前に言う気は無い」


「……」

(チッ、逃げる手段はあるという事か……。けど、"目標を確保した"意味が、確保……かく、ほ?まさか……!)




 私は最悪な思考の結果に至ってしまった。



 そんな結果に呆然としていると、リーダー格のレッドフードとその部下達が理事長室を出ようとした時、理事長室の両開きの扉が勢いよく、乱暴に開かれた。



 そして、その先にはいたのは、片手にレッドフードの部下であろうフード男の首根っこを掴んで立っている……達也がいた。








「なぁ、お前ら………結衣は、どこにいるか知らねぇか?」








 私は今まで見た事の無い怒りに身を任し、憤怒の感情に満ちた両目をした達也を、この日、初めて見た。











ーーー

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