6ー13








 屋上から四階へと降りてきた俺と狐は、辺りを見渡すと、まだ、火事から逃げようと下層に降りようとする一年生達が見えた。



 4階は、一年生。3階は、二年生。2階は、三年生。一階は、各教材の準備室や保健室、教員達の職員室があり、外に繋がる扉もある。


 そして、一年生が降りる流れに沿って、俺達も3階へと降りた。





「結衣達は……どこだ?」

(いない……な。周りの勢いで先に逃げたか……)




 廊下の周りを見ていると、まだ、逃げている二年生や好奇心のあまり友達と笑いながら「へーきへーき」と言っている同級生がいた。


 その中には、結衣達はおらず、先に逃げたと判断したが少し疑問に思い、杞憂だと思ったが、確証を得る為に何度も周りを見渡し、各教室に入って確認したが、思った通り、



 三階の二年生の全ての教室を見た俺に、後からついてきた"狐"がやってきた。





「……」


「会長、他の生徒と共にご友人は既に降りたと思います。早く、会長も……」


「職員室に向かうぞ」


「……何か、あったのですか?」


「進みながら説明する。それと……いつでも対応できる様にしておけ」

(嫌な……予感がする)


「…!はい」





 3階の端っこの教室から先生達がいる職員室へ向かおうと2階に降りる階段に俺と"狐"は、走りながら向かった。


 

 不安そうにしている俺に、"狐"は職員室に向かうとする理由を走りながら聞いてきた。





「会長!どうして、職員室に向かうのですか?」


「俺とお前は、昼休み屋上にいただろう?その間に4階、3階には生徒達はいたが、先生達がいなかった」


「あ、確かに……。普通なら、火事が起きたら、生徒達に避難指示を出すはず……」


「昼休みもあって、午後の授業の準備やら飯を食う為に、先生達はこぞって職員室に戻る。だから、職員室に行くんだ」




 普通、火事になれば、教員の立場である先生方は生徒達に避難指示を出しに来るはずなのだが、3階にも2階にも先生達はおらず、見当たらなかった。



 我が身を守る為に他の生徒達と逃げたかもしれない。だが、一人ぐらいは逃げろと言いに来るだろう。しかし、その一人もいない。なら、何かしら起きたって事だ。



 職員室に向かうのは、先生達の確認。そして、理事長室にいる香坂の安全確認をしに行く為だ。




「よっと、ここの角を曲がれば、職員室だが……何かしら怪しげな大人が3人いるんだけど……」




 2階から1階へと降り、職員室に向かうと、職員室前には、フードを被っている大人達が3人立っていた。



 3人の手には、バールや凶器となる様な者を持っており、明らかに先生達ではない事が分かった。




「会長。どうしますか?」


「どうもこうも……職員室の入り口はあそこしか無いし、窓ガラスをぶち破っても良いが、どうせ気づかれるだろうよ。ま、ぶっちゃけ器物破損で反省文を書きたくねぇ」


「では……」


「あぁ、正面突破だ。俺は右の奴をやる。お前は左の奴らをやれ。武器はあるか……?」


「持っていた暗器は、必要無しと見なされ、没収されましたが、ボールペンが有るので、ご心配なく」


「……OK」

(流石、諜報員。即時対応出来る様にしてる訓練でもしてるんだろうね。おっそろし)





 俺の後ろで胸ポケットにあった赤のボールペンを出して、如何にも「今からこの赤が貴様らの血の色に変えてやる」と言わんばかりの目をしていた。


 "狐"は、アスタロトグループの闇である諜報部の一員である身を持って知っているが、女子という性別上、心配していたが、要らぬ心配をしていた様だ。



 準備も出来た様だし、職員室の前にいる3人のフード男達を倒そうとしたら、その3人が話し始めた。





「楽な仕事で良かったな。ここの門番をしとくだけなんてな」


「あぁ、そうだな。それに比べてアイツらは面倒くさい命令をされたもんだ」



(ここ以外にも、他に何人かいるのか。けど、道中には見なかったが……)




 目線を"狐"を向けると、「私も知らない」と頭を左右に振った。


 狐も知らないとなると、その命令を遂行したのか、会わなかっただけなのか……。けど、フードの被った奴に会えば、印象ぐらいは残る筈だけどな。



 これ以上は、会話で得られる有益な情報は無いと判断し、一歩踏み出したところで、フード男達の一人が言った言葉で体全身が止まった。





「でも、『白崎 結衣を誘拐』しろって、こんな何百人もいる生徒から探せって、キッツイだろうな。アハハッ!」


「それな!アハハッ!」




 


 フード男達の笑い声が俺の頭の中に、無駄に響いたが、それどころじゃなかった。ただただ一点を見つめる俺は、唖然とするしかなかった。




 結衣を誘拐?コイツらが?結衣の教室は4階。けど、いなかった。コイツら以外の他の奴らは?見なかった。結衣は、いない……コイツらの仲間は、見なかった。




 考えたく無い答えが、思考の底の底から現実を叩きつける様に出てきた。否定したかった。そんなわけが無いと思った。けど、今の現状、そう考えるしかなかった。




 







 そして、何か……自分の中の、何かが壊れた。













ーーー

誤字、脱字など有ればコメントしてください。




作者☆



長い間、待たせてしまいました。



今週から更新するぜぇ〜!







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