5ー11





『……私の番ですね』


『えぇ、そうよ』


『それでは……』



 アリスのマネージャーであるマーリは、今までにない以上に集中し、アリスが持っているカードの一枚を引いたーー。



『あっ!また、ババを引きましたぁ〜!?』


『ふふっ……危ない、危ない。引かれなくて良かった……』


「何回、繰り返してるの……」




 ババをまた、引いてしまって嘆いているマーリと引かれなくて良かったと安堵しているアリス。この光景を私は数えるのをやめる程、見ていた。(因みに、私は圧勝)



『さぁ!アリス、引いてください!』


『ここで終わりにしてあげるわ…!』



 夕食の時間潰しの為にやり始めたババ抜きが数時間も掛かるとは思っても見なかった私は、ベットの上でトランプをやっている二人を見ていた。


 さっき、襲われたのにも関わらず、アリスは笑顔にトランプをしている姿を見て、少し微笑んだ。普通なら、命を狙われたという現実が恐怖を呼ぶはずだが、そんなのはお構いなしに楽しんでいる姿は「流石、アリス」と思った。



『どう?決着つきそう?』


『まだです!私は……まだやれます!』


『ふっ!その固い意思、私には無駄だと言うことを、身を持って知りなさい!』


『まぁ……つまり、"まだ終わらない"って事ね』



 マーリは持っている二枚をキッ!と睨みつけ、アリスは慎重にその二枚の上を交互に動かし、マーリの目を見ていた。マーリはアリスの手の動きと同じく左右に動かし、振り子のようだった。



『さぁ!さっさと引くです!』


『まぁ、待ちなさい。焦って失敗すれば元も子もない。なら、慎重に……慎重に……』


『フフフ、天下の歌姫であろうお方がそんな弱気で良いのですかぁ?』


『フフフフ、マーリ?あまり調子に乗ると痛い目にあうわよ?』


『フフフフフ、ご心配無く。逃げ足は早い方なので、お口"だけ"がご自慢の貴方には敵いませんけどね?』


『フフフフフフ、あらあら、背が"短い"マーリとは違ってスマートなので、それに"短足"のマーリが速いのは当たり前でしょ?』


『あ?言ったね?言ってはいけない事を言いましたね!』


『ちょ、ちょい。なんで、けんーー』


『マーリだって、言ったじゃないの。お互い様よ。お、た、が、い、様』



 アリスは『お、も、て、な、し』のリズムに乗せてマーリを逆に煽った。案外、昔から気にしていたマーリはアリスから背が短いと短足のダブルパンチを食らった事で怒りが頂点に至っていた。その反転、アリスは別に気にして無く、大人の余裕を見せつけていた。



『まぁまぁ、アリスも悪気はあって言ったと思ったけど……人それぞれだよ!』


『せんぱい……慰めになってないですよぉ〜!』



【アリスマネージャー、マーリは橘から《慰め精神攻撃》を食らった!HP100→HP80に減った!】



『やるわね、橘。私でも出来ないくらいのやり方で』


『え?そんなに気にしてないと……思ったんだけど?』



【アリスマネージャー、マーリは橘から《勘違い精神攻撃》を食らった!HP80→HP50に減った!】



『グッ…!?せんぱいぃ……いいパンチするじゃないですか……』


『えぇ?!またぁ!?』


『ホント、エグい……あ、揃った。あっがりぃ〜!』



【アリスマネージャー、マーリはアリスから《あっがりぃ〜!そしてお前最下位ぃ〜!》を食らった!HP50→HP0に減った!状態異常『絶望感パネェ〜』になり、唸れ倒れてしまった!】



『ひぐっ、ぐすっ、せんぱいも……アリスも……きらぃ』


『フフッ、私の勝ちね。う〜ん!この爽快感はたまんないわ』


『えぇ〜と、マーリちゃん?大丈夫じゃ無さそうだけど……飴ちゃん食べる?』


『いります!ありがとうございます!美味しいです!』



 うぅ〜!と泣きながら、橘から差し出された飴ちゃんをバクッと食べ、お口の中でコロコロとさせながら溶かしていた。ちなみに、アリスはと言うと……。



『はぁ〜……本当に疲れたわ。少し横になるわ』



 そのままベットに寝転がり、目蓋を閉じていた。マーリと一騎打ちしていたので、それ相当に疲れたらしく、今にも寝そうだった。ババ抜きしてただけだけど、それに一戦だけ。



『それにしても、夕食遅いわね』


『そうだね。もう、6時だけど……確かに遅いね』



 アリスと共に立てかけられていた時計を見ると、【6・25】と表示されていた。自分のお腹を触ると確かに空いており、早くご飯を食べたいと思っていた。


 

 そんな事を考えていると、部屋の扉からコンコンとノックされる音が聞こえた。



「はいは〜い、今出ますよぉ〜」



 ホテルの人かと思い、私は扉を開けるとそこには……思っても見ない人がいた。屈強な体に黒スーツ。真顔に黒のサングラスは怖さを増していた。



 まさに、熊。その名も……




「呑気にトランプとは……いいご身分だな、橘ぁ」


「あはは……すみません、海堂さん」



 熊だ、熊がいた!真っ黒の熊だ!なんか、顔に凄いいっぱいの傷がある!この人に逆らったらあかん!さっきまで、お腹が空いていたお腹がキュ〜と収まり、『さっさと帰りてぇ…』の言葉でいっぱいだった。



「護衛対象のアリスは中にいるな?」


「あ、はい、マネージャーのマーリも一緒にいますが……何かあったんですか?」


「会長からは詳しくは聞いてないが、アリスをロビーに連れて来いとの命令だ。理由は、話がある…と」


「分かりました。アリスにはそう伝えますので、私達はどうしたらいいでしょうか?」


「お前とマネージャーのマーリは、ここの部屋で待機だ。会長は『アリス』を…と言っていたからな」


「了解しました」



 会長からの命令をそのまま橘に言って部屋から出た。出て行くのを見届けた橘はホッとしながらアリスとマーリの元へと伝える為に戻った。



「話か……話だけで済んだら良いんだけど……」



 一抹の不安を宿しながら、アリスに伝えた。







 【蒼山ホテル・ロビー】






 アリスと少し話をする為にロビーに来た。一足先にソファーに座り、適当にスマホを弄っていると、エレベーターからアリス、マーリ、橘が出てきた。



「今晩は、アリス。少しは休めましたか?」


『…ふんっ』



 俺は立ち上がり、営業スマイル満点で話しかけると、アリスはお構いなしにスルーし、反対側のソファーへ座った。


 その後にアリスのマネージャーがアリスの背後に立ち、橘は俺に苦笑しながら見てきた。少し苛立ちを隠しながら肩をすくめ、自分のソファーに座った。



「翻訳、頼むぞ」


「あ、はい、分かりました」




 まず、俺がアリスに言わないといけない事は……







「この度は、大変申し訳ございませんでした」








 謝罪だーー。







ーーー

誤字、脱字などが有ればコメントでして下さい。



更新遅れてもうて申し訳ねぇ!こころからの謝罪でぇ、勘弁して貰えねぇか?この通り!(>人<;)



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