5ー6
暗殺組織【ブルーキャット】
アジア圏を主に暗殺を活動している組織。女性だけで構成されている組織は、他の犯罪組織に舐められる事があり、一度他の組織が無謀にもブルーキャットに喧嘩を売ったのだ。
他の組織もブルーキャットが負けると思っていたが、少数精鋭がブルーキャットの強み。圧倒的な差に構わず、暗闇に隠れ、敵対構成員を全て暗殺し、幹部と組織の頭は他の組織の前で公開処刑した……と言う実話がブルーキャットの暗殺組織を裏社会に残る伝説ともなっていた。
そんなブルーキャットのリーダー、山蘭が都心の外れにある廃ビルに向かって行った。元は、病院だったのかベットや壊れかけの棚などがあるが、それに構わず階段を上がり、誰もいない病室へと入った。
ど真ん中で止まると周りから足跡が聞こえてきた。
「今日は、ここまで来てくれてありがとう。みんな」
山蘭が周りにいる仲間に言うと、暗闇の中から一本のナイフが山蘭の方へ向いて一線を描いて飛んできた。それに対して山蘭は、小型の拳銃を袖から取り出し、ナイフに向かって発砲した。
1発目はナイフの射線を変える為に撃ち、もう2発目と3発目は投げられてきた所へと闇に消えた。
「さっすが、リーダー。射撃の腕前を落ちてないようね」
ナイフが投げられてきた所から一人の女性が闇の中から出てきた。両手にはサンドバックを持っており、二箇所に撃たれた後があった。
「シャム。前々から言ってますが、私にナイフを投げるのはやめてくれませんか?」
「別に良いじゃな〜い。どうせ、お得意の射撃でどうにかするんだから」
「同意。リーダーは、射撃に対してアジア一」
「ほら、ベンガルも言ってるじゃない。って……あんた、いつの間にいたのよ」
「ベンガルまで……」
シャムの隣にいた彼女の名前は、ベンガル。ブルーキャットの中で一番若い構成員。いつも熊のぬいぐるみを持っていて、一般的には普通の少女なのだが、構成員の中で一番の頭脳を持っている。
リーダーの山蘭にナイフを投げたシャムは、ナイフの達人。暗器から一般で売っている包丁まで、多岐に回るナイフを自分の体のように操る事が出来る構成員だ。
そんな二人に呆れた山蘭は、後ろから殺気を感じた瞬間、左の袖から警棒を伸ばしながら取り出し、勢いよく振りかざした。
「アハハッ〜!リ〜ダ〜って、本当に反射神経良いよねぇ〜!」
「……ソマリ。後ろから忍び寄るのはやめて下さいと言ったはずですけど?」
「リーダーは、そんな事気にしな〜い。気にしな〜い!」
「どうして、私に暗示をかけようとしてるんですか……」
私の後ろから殺気を放っていたのは構成員の一人、ソマリ。全身黒装束で、彼女は闇に隠れ、他者を欺く事が出来る忍者の末裔だが彼女自身、戦うのが大好きでいつも刺激的な殺し合いを求めている戦闘狂なのだ。
そんなソマリは、大声で笑いながら部屋の中をクルクルも回りながら踊り始めた。いつもの彼女を3人は呆れながらため息をついていた。
「ジャパンに来ても彼女は彼女ね……リーダー、暴れないように見ておかないと取り返しのつかない事が起きるわよ」
「同感。この女は危険。即刻、お縄につくべき」
「それは分かってるんですが……、私の命令でも彼女は聞きませんから」
「アハハッ〜!楽しいなぁ〜!ワクワクするなぁ〜!早く殺りあいたいなぁ〜!」
「殺し合いの場は、設けますから今は落ち着いて下さい」
「本当ぉ〜?前みたいな、おっさん達の遊びとかじゃないんだよねぇ〜」
「勿論、今回は貴方が満足するような相手がわんさかいますよ」
満足する……か、確かに今回はソマリが満足する相手はいますが、今回ばかりは警察まで絡んでますからね。非合法お得意のワンちゃんが。
「満足する相手がいるのぉ?それは楽しみだなぁ〜!」
「質問、今回の依頼は誰が引き受けるの?」
「この国は、他の国と違って大事になる程暴れると面倒ですからね……」
「えぇ〜、じゃあ私の出番はないのぉ?」
「あんたは自重とやらがないのかしら」
「私の辞書に自重と言う言葉は、存在しませぇ〜ん!お疲れでしたぁ〜!」
「オーケー、ソマリ、あんたこの私に喧嘩を売ってるのね。爆買いしてあげるわ!」
また、ソマリとシャムが喧嘩を……はぁ、全くこの二人はいくつ経っても仲良く出来ないのですかね。
売り言葉に買い言葉、ソマリとシャムは昔からと言うか、その組織に入ってから仲が良いのか悪いのかがよく分からなかった。一つ分かるとしたら、ソマリがシャムに喧嘩を売るぐらいだ。
「アハハハ〜〜!そんなナイフ、私には当たらないよぉ〜だ!」
「フフフ……なら、この爆散ナイフでも喰らいなさい!」
「ヘヘェ〜ンだ、当たるもんかぁ〜!」
あぁ、廃ビルなのに、もっと……余計に壊れていく。
決定。やはり、この二人は合わせると危険。
流石は忍者の末裔。シャムが正確に投げるナイフを必要最低限の動きで避け、爆散するナイフは壁から壁へと、この部屋をグルグルと回りながら避けていた。
喧嘩を始めて数分後、ソマリが立ち止まっていた床がいつの間にか薄い煙で見えなくなっていた。このスモークに山蘭とベンガルは即座に反応し、口を塞いだ。
「あれれぇ?なんだか……眠たく……なぁ……」
「しまった!このけむ……り……は……」
「「………」」
ソマリとシャムは喧嘩に夢中になり、部屋いっぱいに充満した睡眠ガスに気づかず、そのまま倒れて眠りの世界へと行ってしまった。
私とベンガルはこのガスが出ている方向を向くと、段々と歩いて近づいてくる音が聞こえ始めた。二人を眠らしたのは張本人は、分かっているが、自然と警戒は解かなかった。
「全く!喧嘩をするのはダメニャンって言っておいたのに!ニャン!」
「「ニャン吉……」」
そう猫なのだ。リアルの猫ではなく、身長155センチの猫の着ぐるみが立っているのだ。そして、両手に筒状な物を持っており、その先から睡眠ガスが微かに漏れており、背中にボンベを二つ背負っていた。
猫の着ぐるみを着た者をニャン吉と呼び、一応、ブルーキャットの構成員である。二人を眠らすために睡眠ガスを使っていたが、ニャン吉は、その他にも人体に害があるガスやないガスまでを扱う構成員でもあのだ。
「称賛。流石、ニャン吉。助かった」
「ニャン吉、助かりましたが……このガスは、どうにかなりませんか?」
「安心してくれニャン!即席用で使用しただけだから、すぐに消えるニャン!」
「大称賛。ニャン吉!もふもふさせて!」
「ばっちこいニャン!」
ニャン吉の方へ向かって、ベンガルは一直線に走り、ニャン吉のお腹へダイブした。
ベンガルは極度のぬいぐるみ好きで、ブルーキャットの頭脳と呼ばれているベンガルも幼き少女。構成員の中でニャン吉を一番好いている。
『流石は、ガス使いの達人。毒耐性を持っているソマリが即効で眠る程のガス……いや、ソマリの辺りだけガスの濃度が高い』
ソマリがぐぅぐぅと寝ている辺りだけ他の箇所よりガスが消えるのが遅かった。ソマリが立っている場所だけガスの濃度が高く、濃縮していたのだろう。
見た目は、マスコットキャラ的な雰囲気を醸し出しているのに、本当は数多なガスを操る殺人鬼と知ると……猫の着ぐるみなだけ、恐怖が出てくる。
しかし、そんな事より………
「本当に、こんなメンツで依頼を達成出来るのかが不安ですね………」
私をいじりが好きなシャム、忍者なのに戦闘が好きなソマリ、天才的な頭脳を持っているのにぬいぐるみが関係するとポンコツになるベンガル、猫の着ぐるみを着ているガス使いのニャン吉。
このメンツで依頼を達成する事に、不安を隠せないリーダーの山蘭であった。
ーーー
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