5ー3
これから見ていただく時に、会話内の「」を『』にしております。これは英語で話していると言う事なのでよろしくお願いします。
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【飛行機内・米国→日本】
この飛行機は、米国から日本へと飛んでいる。飛行時間は約13時間を飛んでやっと着くが、1日の約半分が座席に座ると言う事だ。
そんな時間帯に映画を見たり、ラジオを聞いたり、雑誌を読んだりして時間を潰すのだが、私は殆ど小さて厚くなっている小窓から外の景色を見ていた。
『アリス?大丈夫ですか?』
『え……?』
『何か悩んでいるようにも見えましたから……』
『悩み……敢えて言うなら、日本の公演は大丈夫なのか心配』
『日本は比較的に犯罪が起きにくい国と言われてますし……在日は1週間ですから大丈夫ですよ!』
『ふふ、そうね。それにマーリは日本の料理が大好きだものね』
隣には専属マネージャーのマーリ・リズ。私がデビューしてからずっと側にいてくれて手助けをしてくれたり、愚痴を聞いてくれる親友的な存在だ。
そんな彼女は日本の料理が大好きで今も【日本に来たならここでしょ!】と書かれている観光雑誌を抱きしめながら楽しみにしていた。
『そう言えば、日程はどうなってるの?』
『えーと、確か……来日して2日後にリハーサル、その次の日は、第二回目のリハーサルをして本番っと言う事になってますね』
『2日後って事は、観光は出来たりするのかしら?出来るならしてみたいけど』
『そうですね……護衛の人に観光しても良いか了承を得ないといけないですね』
『護衛って、橘が用意しておくって言ってだけど……』
『橘先輩は何かと心配性ですし、あの毒物事件でも話したらもの凄く心配されてましたね』
『えぇ、だから自分が手配すると言っていたけど……まさか、泊まるホテルまで用意してくれているとは……』
友人の橘は、私の同僚が飲みかけのペットボトルに毒を入れられた事を言った途端、物凄く心配してきた。
それと同じく、在日して公演する事を言うと『護衛と警護は私の方から手配するから』と言って、向かっている空港で待っているらしい。
『もしかして、橘先輩って凄い人なんですかね!』
『ジャーナリストとか言っていたけど、本当に凄い人なのかもね』
『早く着いて、橘先輩にも会いたいし、美味しい日本料理を食べたいなぁ〜』
観光雑誌を持ってポアポアとしているマーリを見て微笑ましくなった。私より年上なのだが、どうしても後輩みたいに接してしまう。
これから行く日本に対して楽しみと不安が混ざりつつも私が好きな空を小さな小窓から着くまで眺める事にした。
(何事も無かったら良いんだけど……)
ーーー
「え?結衣もアリスの公演に行くのか?」
俺は今、学校にいる。お昼休みで結衣と一緒に弁当を食べているだが、結衣がアリスの公演に行くと聞き、驚いた。
「……うん……アリスの歌……好きだから」
「そうなんだ……そんなに良いのか?俺はあんまし曲とか歌とか聞かないから分からないな」
「……良いよ……歌声も綺麗で……一度聞いたら……ハマる」
結衣がそこまで称賛する程の曲なら、俺も聞いてみたくなった。俺が聞いている曲と言えば、親父の趣味だったレコード収集をたまーに叔母さんが流しているのを聞いているぐらいだった。
その前に叔母さんからレコードプレーヤーの調子が悪く、直してこい!と言われた事を思い出した。
(レコードプレーヤー自体も古いやつだったし、諜報部の者に頼んで調べて貰ったけど……新しいやつ買おうかなぁ……)
そう思いながら、卵焼きをパクッと食べた。
「……そういえば……さっき、結衣もって……達也も行くの?」
「え?俺か?確かに行くのは行くが……」
「……じゃあ……一緒に行く?」
いつもの俺なら結衣からのお誘いを二つ返事で了承するんだが……今回は、仕事で行く事になっているし、依頼された仕事を放棄するのも会社の名が傷つく。
しかし!結衣からのお誘いを無下にも出来ないし、向こうで会ってしまったら物凄い気まずい雰囲気になる事は絶対。なら、最初から行けばいっか!
「喜んで行かせてもらいます」
「……ふふ……一緒に行くのは良いけど…-どうかしたの?……物凄く考えていたけど」
「え?あ、え〜と、俺に曲の素晴らしさと言うか良さと言うのは分かるのかなぁ〜って」
「……大丈夫……私が懇切丁寧に……教える」
「アハハ、お手柔らかにお願いします」
結衣と行く約束はしたけど、その歌手の護衛はどうしようか……傘下の警備会社に頼むだけじゃ心許ないから組の者でも潜り込ませておくか……。
本当なら俺も責任者として行くつもりだったけど、結衣と一緒に行く事になると海堂に指示を任せる事にしよう。海堂なら、17のガキの俺よりも良い指示が出来るだろう。
「結衣は読書が趣味だって言ってたし、音楽は聴かないのかなぁ〜と思ってたけど違うんだな」
「……私だって……音楽聴きながら……本を読む時もある」
「へぇ〜、それもアリスが歌っている洋楽?」
「……うん……大ファンだから」
本当に結衣はアリスが歌っている曲が好きで休みの日に読書をするときに聴くらしい。他の曲は聴くのかと聞くとアリスの歌っている曲だけらしい。
英語だけかと思ったけど、日本語で歌っている曲もあり、それを聞いているらしい。日本の中でもアリスの曲は有名で数多くのファンがいる。
「……アリスの公演は……今週の日曜日……楽しみ」
「そうだな。でも、アリス自身は今日が訪日とか言ってたな」
「……うん……朝のニュースで……アリスファンが……空港で出待ちしてるって」
そう言って結衣から出されたスマホの画面を見た。画面には題名で【有名歌手アリスが日本に訪日!】とか大々的に書かれ、詳細などが記載されていた。
そのニュースにもアリスの写真が載っており、それに対してのコメントは『綺麗!』『歌声も良くて美人って最強かよ!』『惚れるわぁ〜』などの褒めるコメントが多く、実際にも綺麗で美人の部類に入るのは確かだ。
「……達也……どこを見てるの?」
「え?何処って……まぁ、記事の内容とか?かな?」
「……胸を……見てた」
「な!?濡れ衣だ!お、俺は胸なんて見てない!」
「……ずっと、写真ばかり……目線を辿れば……ドレスから見える谷間を……」
「見てない!写真ばかり見たのは確かだけど、胸は……少ししか見てない!」
「……やっぱり、見てる……いやらしい」
「しょうがないやん!俺だって男なんだらから!」
「………」(プイッ)
確かに俺は見せられた記事を読んだ。それに載っていたアリスの写真を見ていたのも事実だが、胸ばかりは見てない!見たけど、ばかりでは無い!見たけど、ね!
俺がアリスが写っていた写真で胸ばかり見た事に拗ねた結衣はプイッと顔を逸らして食べかけの弁当はパタンパタンと片付けてしまった。
「あ、俺の卵焼き……」
「……変態に……食べるご飯は……無い」
「ちょ、結衣さん?」
「……勝手に……一人で……眺めたら良い」
「もしかして……拗ねてます?」
「………」(イラッ)
「あ……触れてはいけない線に触れてしまった」
拗ねてしまった結衣は不機嫌にもなり、弁当を持って屋上から出て行ってしまった。まだ、弁当を食べ始めたばかりなのでそんなに食べれなかった。
「この後、なんて弁明したら良いんだろ……無理だと思うけど」
そう言って、スマホの電源を消して結衣の後を追うように屋上から出て行った。
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