4ー10
「いやぁ〜、楽しかったなぁ〜!」
「……心ちゃん……強い」
「まだまだ!結衣ちゃんには負けないよ!」
「……次は……勝つ」
もう、時間的に家に帰らないといけないのでゲームセンターを出た。
結局、竹本と結衣はあの後、4回もカーゲームをしていたのだ。ジュースを買ってきた荒木と一緒に見ていたが、竹本が全勝していた。
「お前の彼女って、何かとすげぇな。射的も上手いし、カーゲームも上手って……」
「うちの心は、遊びを本気でやってるからな。いつの間にか極めちまったんだろ」
「遊びを極めるって、なんだよそれ」
「わかんね」
遊びを極めた女、竹本 心。ドラ○エで言うと職業【遊び人】みたいだな。けど、珍しく結衣は悔しそうな顔してたな。
平日は学校に行って、帰ってきたら本を読んでいると言っていたし、休日も読書をしていると聞いていた。
結衣自身誰かと競ったり、小さな賭け事をした事が無かったのだろう。学業の面でも一年生の頃から1番を取り続けていたし、彼女こそ無双という奴だ。
「あ、そう言えばこのジュース美味かったぞ」
「そうでやんすか?それなら良かったでやんす」
「なんだその喋り方……」
「何言ってるんでやんすか?いつも通りでやんすけど」
「某アニメの悪役の口調だな。ま、お前がそれで良いと言うんならそれで良いと思うが……絶対に変だぞ」
「そうか?なら、元の口調に戻そうかな」
「あ、戻った」
確かに荒木が買ってきた炭酸系ジュースは美味いが、お前のその口調は色んなアニメのキャラで使われてるからな。
鼠みたいな悪役の顔が浮かび上がるが、敢えて言わないでおこう。
「あ、そう言えば、達也君達は何やってたの?」
「俺達はエアホッケー。全敗したがな」
「俺は全勝した。それで、罰と言うか賭けで荒木にジュースを買いに行かせてたんだ」
「……全勝……私は……全敗」
「達也、何白崎さんを落ち込ませてんだよ」
「え?俺?何もして無いんだが……」
「結衣ちゃん!私はいつでも、挑戦を受けるからね!」
「……絶対に……ボコす」
「これが女の友情か……眩しいぜ!」
いつでも挑戦を受けると言ったゲームを極めた竹本、全敗して次の挑戦に燃えている結衣、そんな二人の友情に当てられて眩しそうにしている荒木。
そんな三人に追いつかず、温かい目で見ている俺。なんだか俺だけ仲間外れなような気がするが、まぁ良いか。
現在の時刻は、夕方の5時。空はオレンジ色に染まり、カラス達がカーカーと鳴っていた。
そうしていると、ポケットに入れていたスマホが振動し始めた。電話だと思った俺は出た。
『会長、お迎えに来ましたが、お友達と帰るなら後に来ますが……』
「近くにいるのか?」
『はい、会長がいるところから右斜め前の郵便ポスト近くに止めてあります』
どうやら、秘書の海堂が近く来ているらしく、見てみる郵便ポストの近くには黒の車がおり、電話を掛けている海堂が微かに見えた。
結衣達と一緒に帰ってから迎えに来て貰おうかと思ったが、海堂が言った言葉で気が変わった。
『会長に会いたいと言っている人がいるんですが、用事が有れば帰らせます』
「いや、今から乗って会社に行くから、いつでも動けるようにしておいてくれ。客人は待たせてはいけないからな」
『分かりました。失礼します』
そうして海堂との電話は切り、ポケットにしまった。
俺に会いたいと言っていたのなら、俺個人の頼み事だろうから、仕事関係なら優秀な部下達が対応する様にしている。
「俺はここで帰るわ」
「え?ここの近くだっけ?」
「いや、電話で店長が今日、入る予定だったバイト君が熱で休んじゃって急遽、俺がやる事になったんだ」
「そりゃー大変だな。気をつけてバイトしてこいよぉ〜」
「なんなら、変わってくれても良いんだぜ?」
「げぇ、遠慮しておくよ」
「……頑張って……達也」
「おう、じゃあな。また、明日」
みんなに手を振った後、走って海堂が乗っている車へと行った。
「このまま、会社に向かってくれ」
「分かりました」
車の中で、仕事服のスーツに着替え、いつも通り、アスタロトグループ本社へと向かって行った。
(明日から学業も始まり、本格的に仕事もしないといけない……でも、四人で遊ぶのも良いな)
【第四章・完】
「……あ」
「ん?どうかしたの?結衣ちゃん」
「……いや、別に」
(……達也に……頭撫で撫でした……理由、聞いてない!)
帰ってしまった達也を見て、今更気づいた結衣は心の中で落ち込んでいたとさ。
ーーー
誤字、脱字などが有ればコメントしてください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます