4ー9
あ〜ん事件が終わった後、荒木は夏休みの課題を担任がいる職員室まで届けに行った。
「いやぁ〜、やっと終わりましたなぁ」
「夏休みの課題の件は終わったとして、冬休みの課題はキチンと終わらせろよ」
「分かってますよ〜、今度こそ!達也に飛び火しないようにしますから!」
「フラグにしか聞こえないんだよなぁ……」
夏休み課題が終わった後は、解放感がある。
しかし、明日から授業が始まり、二学期の中間試験もすぐに来る。その為の勉強もしないといけないし、学校生活リズムに慣れないといけない。
学生が長期期間の休日で、体が鈍っていたり、早寝早起きが出来なくなっているのが大半だろう。
そう言っている俺もその一人の内なのだがな。
「なぁなぁ、この後さゲーセン行かね?」
「お!良いねぇ〜!行こうよ!」
「俺は別に構わないが……結衣はどうする?」
「……達也も……行くなら……行く」
「決まりだな!善は急げと言うし、早速行こうぜ!」
「賛成ぇ〜!レッツゴー!」
流石は陸上部。飼い主にオモチャを投げられて一生懸命走って行く犬のように荒木と竹本はビュ〜〜!と正門から出てゲームセンターへと走って行った。
こう言う時の行動力を夏休みの課題に回して欲しかったと思った俺は、ため息をついた。
「全く……あいつらはこう言う時の行動力は抜群だな」
「……フフ……確かに……言えてる」
竹本と荒木が出て行った後、俺と結衣は自分達のペースで後を追った。
ーーー
「オラァーー!食らえーー!」
パァーー!
「ホイ」
パコーン
「やるなぁ!これならどうだ!」
パァーー!
「ホレ」
パコーン、ガラガラ……K・O!
ゲームセットの音楽と共に、デェスプレイに勝負の結果が出てきた。エアホッケーの結果、6対2で俺が勝った。
周りから見たら凄い温度差だと思うが、これが俺と荒木だ。
ゲームセンに来た時、荒木が一対一でエアホッケーやろうぜと言ってきたので、やっていたのだ。
「ナァ〜〜!なんで負けるんだよぉ〜」
「お前は威勢とスピードは良いが、隙が多すぎる。狙って打ってんのか?」
「俺は考えて行動するより、行動してから考えるようにしてますから」
「なんだ、その脳筋理論は」
「全ては筋肉で解決する!ふぅん!」
サイドチェスト〜!みたいな動きをしているが、荒木はボディビルダーみたいな筋肉は無く、ただの学生だ。
勿論、握力や跳躍力は俺よりあるが、平均男子と殆ど変わらないのだ。
「それより、賭けはどうするんだ?」
「賭け?あ……お前、何言ってんだよ。きっと疲れてるんだよ」
「ふっ、無かった事にしようとしているな。だが!甘いぞ!」
「なっそれは!」
「お前が、負けた時に無かった事にされた時用に録音していたのだ」
「お前……なんて奴だ」
「なんて奴だと言うセリフは俺のだ。賭け事を無かった事にしようとしたお前がなんて奴だよ」
「くっ、俺の負けだ!煮るなり焼くなり好きにすれば良い!」
「なら、ジュースを奢ってくれ。意外と動きすぎて喉が乾いたんだ」
「喜んで!何にしやす?」
「炭酸系だったらなんでも」
「あいよ!ちょっとだけお待ち下せぇ。ただ今、買ってきやすぅ〜」
「めっちゃ、豹変したな」
スタタターッと早歩きで、ゲーセンの自動販売機に向かって行った荒木の背を見ながら言った。
荒木に誘われてエアホッケーをやる時に負けたら方は勝った方の言う事を従うと言う賭けをし、見事俺が勝ったのだ。
「賭け事はあんまし好きじゃ無いが、友達とのちょっとした掛けみたいなのは結構、楽しいな」
荒木が買って帰って来る前に、竹本と結衣の所へ行こうと決めた。
俺が荒木に誘われた時、竹本も結衣を誘って他のゲームへと行っていたのだ。プリクラか音ゲーかなと思って行って見たが、おらず適当に探していたらやっと見つかった。
「見つけたって……カーゲームか」
カーゲームは、百円を入れて出来るゲームで、子供が座る事が基本的に無い運転席に座り、ゲームの中で車同士競い合うと言うゲームだ。
部類によっては戦車などもあり、砲台を打った時の反動がある事でリアルさを増すように出来ているゲーム機だ。
話しかけようと思ったが、竹本と結衣の表情は真面目で集中していた。
(二人とも集中してるな……これは、終わってから話しかけるとしようか)
二人が座っている座席のすぐ後ろに俺は待つ事にした。
待つだけでは暇なので、二人のカーレースを見てみると、NPCも含め、9台で市街地を走っているが、二人の画面にはお互いの車が映っており、実質上、二人の対戦となっていた。
(なんかすげぇな。竹本が追い抜いたと思ったら、結衣が追い抜いての繰り返し……そりゃマジでやるわな)
ゴールまでの一直性の道路。お互いに追い抜いたり、追い抜かれたりの繰り返しで最後にゴールしたのは……竹本だった。
「やったぁ〜〜!勝ったぁ〜〜!」
「……負けた……残念」
どうやら、最後のコースは竹本が勝ち取ったらしい。俺も二人の集中している雰囲気に当てられて黙ってしまった。
「やっと終わったか?」
「え?達也君いたの?いたんなら言えば良かったのに」
「いやいや、お前らが真面目に集中してるから話しかけづらくてな」
「聞いてよぉ〜、結衣ちゃんは初めてやるのにめちゃくちゃ強いんだよぉ〜」
「……後ちょっと……次は勝つ」
「めちゃくちゃ、やる気だぞ?」
「おう!やってやんよ!」
珍しく結衣はゲームでやる気が出ており、それに答えるかの様にゲーム機に100円を一枚入れた。
ゲーム機の画面がホームから車の選択画面になり、またやるのかと思った俺は後ろに下がって、二人のプレイをまた見る事にした。
「全く……でも、結衣が楽しそうにしてるから、良いか」
立って待つのは嫌だが、楽しそうな二人を見ていると苦では無くなったように感じた。
ーーー
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