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 その後、『狐』が現れ香坂を首トーンしてくれたおかげで気絶し、お付きの人に回収してもらった。



「ふぅ……しかし、よく分かったな?俺が香坂に襲われてるの」


「元々、報告があり来たんですが……まさかこんな事になっていたのは、流石に驚きました」



 そりゃそうだよね。用事があって来たら仕える主に、一人の女が興奮しながら某ホテルに行こう!行こう!なんて見たら誰でも驚くわ。


 そんな事もさっさと忘れようと狐の報告を聞く事にした。




「建築問題の主犯でもある瀧川 響は無事、裁判の判決の元、刑務所行きになりました」


「それに対して政府は?」


「今は、メディアにこっぴどく質問攻めをされ、ネット界では批判の声が高まっています」


「まぁ、政府の重要人物が犯罪を犯していた……と言う真実は政府側も驚きやろな」



 予想通り、メディアは美味しい餌が舞い込んできたので食いついて来たな。



 それに、本命は『瀧川を法的処置の元で処罰する事』以外に行政関係者の者に知らせる為でもあった。




「他の思惑は他の政治家達に伝わったかな……?」




 他の思惑とは、『うちに手を出したら瀧川みたいになるでぇ?嫌なら構うなよ?』と言う事だ。


 瀧川は権力も有れば金もある、そんな奴が法に裁かれ、ネットからも大批判も喰い、社会的地位も簡単に失い、今は金無しの囚人として収容されてる。


 その事実自体が行政界の者達に印象を残すような事なのだ。




 ま、簡単に言えば、




 ・行政関連者さん側


「え?あの瀧川が法で裁かれてメディアにボロクソ批判されてるやん、なんで?」


 ・元瀧川派閥さん側


「瀧川本人がアスタロトグループ社に喧嘩を売ってしまって……」


 ・行政関係者さん側


「マジか……なら、アスタロトグループ社に下手に手を出すのはやめておくか」


 ・現二大派閥さん側


「ま、瀧川が勝手に自滅してくれたおかげで瀧川派閥を吸収出来たし、アスタロトグループ社とは友好的に行こうか」




 ……と言う事だ。



「じゃないと、また馬鹿な大人が手を出して来そうだからな」


「それでは、行政関連の者達の監視を続けますか?」


「うーん……そうだな、鴉には監視から情報収集に移行するように言っておいてくれ」


「分かりました、師匠にはそう伝えておきます」


「あぁ、頼んだ」



 そう言って狐は行政関連の者達の監視を続けている鴉の元へ俺の命令を伝えに行った。



 俺は会長室で一人、海堂に来るように室内電話をし、その間にこれからの方針を考える事にした。



「まずは『岩倉組の解体』、これに関しては後日、岩倉 隆介を呼んで説明するか」



 うちの建築現場の進行を邪魔した岩倉組はいくら脅されたとしても落とし前をしないと組の示しにならない。


 かと言って、海堂の親友でもあるし許してやりたい気持ちはあるが、それだと他の組に舐められてしまう……そう考えると中々頭が痛くなる案件だ。



(ま、解体は決定だが、その後の事も考えてるから良いや)




 後日、岩倉組組長、岩倉 隆介と対面する事になった。







ーーー






 

 黒崎邸




 

 大和室に、俺を含め正面には岩倉組組長 岩倉 隆介がおり、その両脇には黒龍組幹部、5人が座っていた。



「それでは、今回の件について話したい」



 目の前に座っている隆介に向かって堂々と言い切った。



「今回の建築問題で邪魔をしていた岩倉組のこれからについてだ」



 そう言うと、隆介は勢い良く畳にぶつけるように頭を下げた。



「頼む!俺はどうなっても良いから、組員達は許してやってくれ!」


「すっげぇ、耳に響くわ。少し声のトーンを2段ぐらい下げろよ」



 大の大人が目の前で叫ばれたら、耳がキーンてなるわ。俺はまだガキやぞ?キッズやぞ?スゲェ響くわ。


「す、すまねぇ」


「はぁ、まぁ良いや。それよりも本題に入るぞ」


「あぁ……分かった」


「そんな絶望したような顔するなよ。今回に関しては俺はお前の状況に同情もしているが、組としての建前もある」



 淡々と今回の建築問題に関して話した。俺的にはさっさと終わらして寝たいんだよ、それに昨日の夜は香坂のせいで疲れてるから……余計に眠いんや。



「確かに岩倉組の解体はするが、そのままお前達を雇いたい」


「雇う……?どう言う事だ?」


「表的には全責任持って岩倉組は解体、それと同時に俺の会社がお前達を雇う。そうすればお前らは働く口が出来るって訳だ」



 他の組は建築問題の実行犯である岩倉組をどうするか…を見ているのだ。だから、下手にやると舐められるかも知れなし、めんどくさいから一応、解体しようやって言っているんだ。



「まぁ、お前の組には力持ちや根性がある者が多いやろ。そう言う奴らは力仕事でもある建設現場がお似合いだ」


「もしかして……」


「あぁ、お前らには反省を込めて建設問題であった現場で働いてもらいたい」



 自分の岩倉組が邪魔した建設現場で働いて反省を込めて働けよ?と俺の企みは隆介に届いた。


 俺の思惑が届いた隆介は上げた頭をもう一度下げ、深々とお礼を言った。



「すまねぇ……うちから喧嘩を売ったのに職まで用意してくれて、本当にすまねぇ」


「別に構わねぇよ。俺も俺の方で利益が有るからな」



 表は黒龍組に『責任を取れぇ!』と言われ

、岩倉組余儀なく解体した……でも、裏では解体後、元岩倉組員を作業員として雇い、こいつらは安定の収入を得て、俺は優秀な者を雇えて現場の作業率が高くなる……まさに Win! Win!の関係だ!



 そう言うと、周りにいる黒龍組幹部の5人に聞いた。



「これでええか?岩倉組に関しては」


「ええ、これで示しには十分でしょう」


「しかし、瀧川と言う奴は本当に馬鹿な事をしたのぉ」


「無謀もええとこや、それに相手が悪かった」



 岩倉組の処分に関しては幹部5人も納得してくれたので、今回の建築問題は本当に終わった。





「帰って寝よ」











 その後、岩倉組は解体。約束通り我が社アスタロトグループはそのまま全員雇い、今は建築現場で働いている。




ーーー

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