2ー15
「流石は行政の実力者、なかなか豪華な物ばっかりだな」
外から見た瀧川邸は確かに大きく金がかかっているのが良く分かるが、いざ、中に入ると価値の高い物だらけだった。
「大半は違法で手に入れた物や闇オークションで落札したのが八割です」
「らしいな、これだって海外のテレビで言ってた奴だぞ」
食器棚に入っていた皿を一枚取り出した。その皿は金の装飾されており明らかに高い物だと分かった。
盗品は足がつくが、闇オークションだと厳重に出所を隠してる事から、盗品でも誰が盗んで誰が買い取ったのかは分からないのだ。
「ま、それを知ってて手を出してると言うことは中々のクズだな」
数千万する皿を元に戻して瀧川の捜索を続けた。一階は入ったと同時に龍ノ衆が各部屋を制圧し、残るは二階となった。
「残るは二階だな…………っとその前にお客さんかな?」
「あれが瀧川の……」
「あぁ、専属護衛とやらだよ」
二階に繋がる階段を見ると二人の男が降りてきた。
一人の手には刀を待っており、もう一人は小刀を二本、両手に持っていた。
「お前が瀧川が言っていた小僧と言うやつか」
「えーと、どちら様?」
「俺は瀧川に雇われた元傭兵で今は護衛をやっている者だ」
「それは分かってるからね、名前をね、聞いてるんだよ」
「名前なんて傭兵になってから捨てた。今はただの護衛だ」
「OK、OK、『護衛A』と言わしてもらおうか」
煽るように言った俺に護衛Aは勘に触ったのか睨みつけるように見てきて、もう一人は俺以外の海堂含め龍ノ衆を警戒していた。
「どうも、今日は瀧川 響って奴に用があるんだけど上にいるかな?素直に教えてくれたら嬉しいんだけどなぁ〜」
まずは平和的に会話でどうにかなるならやるけど、相手は殺意を醸し出していた。
「瀧川は上の執務室にいる」
「あれ?素直に教えてくれるの?」
「あぁ、だけど……俺達を倒してからだ!」
刀を鞘から抜き、一直線に俺を切りに来た。そのまま切られるかと思うと隣にいた海堂が警棒を俺の前に出し、目の前でガチャガチャと鳴りながらぶつかり合っていた。
「オメェ、誰に刃を向けてんのか分かってんのかぁ?あぁ?」
隣にいる警棒を持っている海堂がサングラスの隙間から物凄い形相で睨み付けていた。
わぁお、海堂さん?貴方怖いですよ、落ち着いて、落ち着いて。
「その危なーい刀を下ろして土下座するなら甘んじて許してやるから、ね?」
「俺が下ろすとでも?」
「自分の無駄なプライドのせいで痛い目に合う……と言っても?」
「下ろさないな。俺達は金を貰ってここにいるんだ」
そっか、なら説得は無理だな。さっさとこの護衛Aと護衛Bをぶっ飛ばして瀧川のところに行くとするか。
平和的会話が無理だと思った俺は久しぶりの近接戦闘に僅かな闘志と熱い思いが込め上がってきたのを感じてニヤリと不敵な笑みを男二人に向けた。
「なら、さっさとやろうか、ボケ共!」
俺と海堂、護衛二人の男が一階で戦闘を始めた。
瀧川邸自室、瀧川 響が真っ青になりながら震えていた。
「あ、あの男がワシを報復しに……ワシはこんなところでくたばるわけにはいけない……でもどうすれば……」
護衛の二人は下にいる者を始末するとか言ってワシの側を離れおって今、わしを守る者がいない!
瀧川は何か思いついたのか、震えながらも電話機に手をかけ、電話をした。
相手は、瀧川邸の警護を脅してやらせた警備会社の社長だ。
『はい、もしもしどちら様ー』
「わしだ!早く助けてくれ!」
『………瀧川さんですか、どうかしたんですか?』
「アスタロトグループ社の小僧が攻めてきたんだ!さっさと来い!そして小僧を止めろ!」
『それは無理ですね』
「自分の会社がどうなっても良いのか!?わしの力が有ればお前の小さな会社なんてすぐに潰せるんだからな!」
追い詰められている状況に焦っていることから息切れが激しく自分がどう言う状況に陥っているのかがよく分かった。
『確かに俺は貴方に脅されて岩倉組組長の娘を誘拐するように命令され、今の今まで従っていました』
「そのまま従っておれば良かったものの!」
『もう、うんざりなんです。俺の会社の仕事は【警備】、人を守る事を仕事にしているのに犯罪を犯すのは間違っている』
「……貴様ぁ……自分の会社の他に家族もどうなっても良いと言うのか!」
『自分の親と妻には自分が愚かな事をやってしまった事を嘘なくはっきりと伝え、警察に自首する事を決めた。そして貴方が主犯だと!証拠を持って警察に行きます!』
「ぐっ、貴様が何をしようがわしは偉い立場にある!警察に圧力をかければどうということは無いぞ!」
『そうでしょうね。だけど、今、貴方の状況は権力によって防げますか?』
何も言い返せないわしは悔しさのあまり歯軋りをした。
確かにわしには権力はあるが理不尽な暴力は防げない。それはわしにも分かっていた。
『それと、俺の会社は今日からアスタロトグループ社の物になります』
「いつからわしを裏切っていた……」
『さぁね、今の貴方が知ったところで変わるわけでも無いんで、これで失礼します』
「な!?ま、待て!……くそ!」
一方的に電話を切られた瀧川は電話機を床に放り投げた。
もう手が無いと思い、何か無いか、何か無いかと諦めずに考えていたが、それと同時に執務室の扉がバァンッ!と無理矢理壊れるように開けられた。
「な、なんだ……護衛か?護衛なのか?」
瀧川はわずかな希望が湧いてきたが、それはすぐに絶望へと変わるのであった。
「ブッブ〜、正解は俺でした〜」
「お、お前は……」
一階での乱闘が終わった俺は護衛Aが使っていた刀を持って瀧川がいる執務室へと来たのだ。
「護衛の者達はどうしたのだ!」
「護衛Aと護衛Bは今怖〜い、怖〜いうちの組員に睨みつけられてるだろうな、かわいそうに」
「そ……んな……」
「中々強かったぜ?俺は拳で相手は刀、リーチ的には刀の方が有利だが、室内で刀を振り回し、的確に狙ってきたんだ。中々の実力者ってのはすぐに分かったぜ」
頬には護衛Aに戦闘中に切られた切り傷があり、血が小さく垂れていたが親指でスッと拭いた。
そんなバカな……どうして……わしがこんな小僧に追い詰められて……いるんだ……。
恐怖に染まっている瀧川は現実逃避し始めた。そんな瀧川を見て俺はニッコリと笑い座っている瀧川に近づき平和的交渉『会話』を始めた。
「ちょっとお話ししたい事があるんだけどなぁ〜」
「な、なんでも話す!だからっ」
「俺はお人好しで有名らしい、だからその名の通り素直に本当の事を話してくれたら許してやるよ」
「ほ、本当か?」
「あぁ、もちろん……だけど、もし虚偽を吐いた場合ー」
護衛Aが持っていた刀を瀧川の首元に刀の刃を向け、いつでも切れるように構えた。
「頭と胴体がさよならになっちゃうぜ?」
「わ、分かった」
「よし、では質問その1、建築の邪魔をしろと命じたのは独断?」
「あ、あぁ。そうだ」
「大方、亡くなった親父の恨みとかそこら辺だろうな。本当に上からの指示では無いのか?」
「わしが岩倉組に建築の邪魔をするように命じた。う、嘘はついていない!本当だ!」
「なら良いだろう。質問その2、行政内で俺の噂や話はどうなっている?」
「お、お前がアスタロトグループ社に継いだという噂は広まっているがほとんどが不干渉と決めている」
「ほとんど……って事は俺に干渉すると思うのが何人かいるんだな?」
「あぁ、わしみたいに邪魔だと思う者やただただ交流を持って後ろ盾になって欲しい者もいた」
なるほどねぇ……中々面倒だな。考えれば考えるほど面倒だから、やってきたらやり返そっか。それが良い、わざわざ向かう必要なんて無いからな。
「それじゃあ、質問その3、これに答えたら許してやるし、帰ってやるよ」
「ほ、本当か?」
「ただし、自分の発言でこの頭と胴体がさよならになることも忘れるなよ?」
「も、もちろんだ」
さてと、ここからが本題だ。正直言って建築問題とかはどうでも良かった。俺が気になったのは……
「俺の父親と母親の事故にお前は関係しているか?」
それを聞いた俺は声のトーンが一段階下がったのが自分でも分かった。ここに来た最大の理由でもあるからだ。
しかし、質問された瀧川の表情はなんの事か分からないと言っているみたいだった。
「わしは何も関係してないし、何も知らない!」
(外れか?)
「本当だな?その言葉に嘘は無いな?」
「本当だ!こんな状況で嘘なんてつけるわけないだろ!」
「……」
俺はまだ疑うような目を瀧川に向けると瀧川は左右に首を振って知らない!知らない!と言ってきた。
父に恨みを持っている瀧川なら関係していると思っていたが、外れだと知ると大きなため息をついた。
目的を果たした俺は刀を持って執務室から出て行こうとする前に瀧川へ言った。
「これから俺の会社とその関係者に手を出してみろ。その時は灰も残さず潰してやる」
その後、俺と海堂、龍ノ衆を連れ瀧川邸を出て行った。
数分後、自首した警備会社の社長が今までの経緯を話し、瀧川 響は警察に捕まって連行された。
帰りの公道、外は暗く運転席に海堂が運転をしており俺はただ黙って外の景色を見ていたが、気晴らしに海堂に話しかけた。
「これで面倒事は終わったな」
「これから、瀧川はどうなると思いますか?」
「まぁ……言った通り圧力をかけて無い事にするだろうが、手を出してくる事はないだろ」
あんだけ、脅しに脅したんだ。これで報復だ!復讐だ!仕返しだ!と言ってまだやってくるのなら凄い神経をしていると思うよ。
海堂と会話をしていたら赤信号で交差点に止まった。
ふと、窓から外を見ると一人の女性に目が止まった。
「あれって……やっぱり」
「どうかしましたか?」
「俺はここで降りる。後は頼んだ」
「か、会長?どこに?」
シートベルトを外し、車から降りて走って行くとそこには両手にスーパーの袋を持っていた結衣がいた。
真っ白で綺麗な髪ですぐに結衣だと分かった。
「こんばんは、結衣」
「……あれ?……達也……」
「買い物の帰りか?」
「……うん……それより……なんで、スーツ姿?」
「え?あーこれは〜、そう!バイトの面接あってその為に、スーツでビシッと決めてたわけ」
「……じゃあ……なんで……頬に切り傷?」
「あ、これはね……えーと、ね?調理系のバイトで包丁を使う事がありまして……」
「……それで……頬を……切ったと?」
うーん、流石に無理があるかなぁ〜?無理があるよねぇ。包丁を使ってたらつい頬を切ってしまいました〜なんて通用しないか。
俺は疑うような目で見てくる結衣に対して目をそらしてもどうしようも無かった俺は話の内容を変える事にした。
「そ、それより、その量は重いでしょ?俺が持つよ」
「……大丈夫……これでも私……力強い」
「そ、そっかでも結衣は女の子だし、隣に男がいるのに持たないのはおかしいから持して」
「……そう?……それなら……はい」
「うんうん、なんなら俺がふた…って!おも!」
「……そうかな?……普通なんだけど」
「これが普通か…………帰って鍛え直そ」
俺は面倒事が終わった後、帰りに会った結衣と一緒に夜道を歩いて帰って行った。
第二章 建築問題 完
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