2ー7
「……達也?」
「え?あ、あぁどうした?」
「……なんだか……ボーッとしてたから」
俺は今、屋上で結衣が作ってくれた弁当を一緒に食べているところだ。どうやら俺は少し考え事してらしい。
「……悩みでもあるの?」
「うーん、悩みというかなんと言うか…」
悩みと言えば悩みだけど、規模がデカイ気がするな。
俺の今の悩みは建設問題と瀧川の問題で、流石に話したところで、信じてもらえるかだけどな。
「今度の中間試験の範囲広いなぁって」
「……確かに今回の中間試験は……広いって聞いた」
「だよな……ま、なんとかなるか」
「……いつも通り……やれば出来る」
流石、成績優秀なお方は余裕ですな。俺はなるようになるだろうし、暇が出来たらやろ
っと。
心の中で結衣をべた褒めした後、作ってくれと頼んだ卵焼きを頬ばりとても美味いなぁ〜って呟くと、結衣はクスッと笑った。
「……それより……クラスの誰かが……言ってたんだけど……校長先生が……変わるらしい」
「へぇ〜そうなんだ。誰になるんだろな」
「……風の噂……だけどね」
「ま、変わったところであんまし変化は起きんだろ」
「……そうだね……で、この弁当……美味しかった?」
「おう、やっぱり卵焼き最高です」
「……ふふ……本当に……卵焼き好きだね」
「大好物でございます。はい」
卵って結構いろんな料理に使えるし、結構便利なんだよな。家政婦さんの作るオムライスも美味しいし、卵ラブです。
弁当箱から一口サイズの卵焼きを箸で優しく取って口の中に入れる。これを繰り返していたら弁当箱から卵焼きが消えた。
自分だけ卵焼きを食べた事に気づいた俺は少しだけ焦った。
「あ、ごめん。結衣の分も……」
「……ふふ……良いよ、別に……達也の為に……作ったから…」
「ありがとうございます。いつも美味しくいただいています」
「……こちらこそ……美味しそうに食べてくれて……ありがとうございます」
昼休みの時間もあっと言う間に終わり、弁当箱を片付けていると校内放送で俺の名前が呼ばれた。
特に悪い事はしていないのに、呼ばれる事に不思議に感じた。
「あれ?なんかしたっけ俺?」
「……提出物とかは?」
「一応、出したつもりなんだけどなぁ?出してないやつあったけ?」
「……まぁ……行ってみたら?」
「そうするか」
呼ぶとしても昼休み終わりの時に呼ぶか?普通?まぁ、英語の授業から抜け出せるから良いや。
五限目の授業に遅れた理由は、『〇〇先生に呼ばれていたから遅れました!』っと言えるからラッキーと思いながら職員室に行った。
「どうも、2年4組、黒崎 達也です。放送で呼ばれて来んですが…」
そう職員室にいる教師に聞くと俺を呼んでいるのは校長先生だと言われた。
「校長が呼んでたな」
「校長……先生がですか?」
「あぁ、理由は分からないけど、校長が『達也君が来たら校長室に来るよう言っておいてくれ』って言われたな……」
「分かりました。行ってみます」
俺が呼ばれた理由は校長先生に聞こうと思ったが、どうも腑に落ちない。そしてなんだが、嫌な予感もする。
(なんだか、嫌な予感がする………ま、そん時はそん時かーー)
と考えて校長室の扉を開けたらそこにはよく知っている、いや……会いたく無いと思っていた人がいた。
「久しぶりだな、達也。会いたかったよ」
校長の席には一人の女性が微笑みながら足を組んで座っていた。黒髪のロングヘアで片目がシルバー、もう片目は真っ黒のオッドアイだ。整った顔にモデルの様な体型の女性はお姉さん的な感じで俺の知り合いだ。
「な……なんでここにいるんだ……」
「それはもちろん、君に会いに来たからだよ」
「はい、もう会ったね。こちらが出口になるのでお帰り下さい」
営業マンの笑みを浮かべ、さっき入った扉を開けて、帰るように言った。言われた女性は、苦笑を浮かべ肩をすくめていた。
「ははは……相変わらず変わってないな。あの時から……」
「まぁね、変わる暇なんて無かったからな」
「確かに、最近は忙しそうだな」
「……なんの事か分かるのか?」
「当たり前だ。好意を持っている相手の事を常に知っておくのが私のポリシーだ」
「どんなポリシーだよ」
こいつの名前は、
「別に良いだろ?元『婚約者』なんだから」
「まだそれを言ってくるか。もう終わった関係だ」
「元だとしても、君を思う心は変わらない」
「はぁ……いい加減諦めて他の人を探してくださいよぉ〜」
「それは無理な注文だな」
頭を押さえながら言った俺に対して、香坂さんは笑ってそれを否定した。
この香坂 澪さんは元婚約者である。
ーーー
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