2ー3
【アスタロトグループ本社・会長室】
会長室には、俺も海堂の二人しか居なかった。そんな俺は海堂から受けた報告に少しだけ困っていた。
「勝手に岩倉組と接触したのか?」
「……はい、説得を試みましたが駄目でした」
「そうか……」
う〜ん、海堂さん?俺、内心めっちゃくちゃ驚いてるからね!?『ホウレンソウ』を知らないのかい?
今、海堂と岩倉組 組長が会話が録音されたのを聞いていた。録音されている声にはお互いに言い争っている会話が流れていた。
「確かに……説得は出来なかったみたいだな」
「すみません、勝手な行動をしてしまって」
「構わん、お前がしなくても俺がしてただろう。遅いか早いかの違いだけだからな」
録音された会話を聞いても不思議でしょうがない。岩倉組は規模は小さくても少数精鋭。それに昔から親しかったうちの組をそう簡単に裏切るのか?やっぱり誰かに脅されて無理矢理従っているのか?
「……こればっかりは俺だけの判断で決められないな」
「どうしますか?」
「そうだな。叔母さんはもう関わらないと言っていたし……」
この時こそ、叔母さんの助言が欲しい所だが、もう関わらないと断言していたので期待は出来ないな。
俺は悩みに悩んだ末、元々考えてあった一つの案を使う事にした。
「『五組会定』をする」
「と言う事は……」
「あぁ、今回の建設問題は黒龍組だけで処理したかったんだが、今回ばかりは幹部の組の意見を聞きたい」
「日程はどういたしますか?」
「二日後の土曜日にしよう。早い方がいいだろう」
「分かりました。各、幹部の組に連絡しておきます」
俺個人で決めた事は黒龍組の総意でもあり、それを自覚している俺にとっては下手に決めれないのだ。
だから、幹部の組の意見を聞き、今後どう対処していくかを決めていこうと思った。
窓を眺めながらそう考えていたら一つの事を思い出した。
「そういえばお前は確か岩倉組の隆介と知り合いじゃあなかったか?」
「……はい、昔はよく喧嘩した仲でした。けど、黒龍組に拾われてからは疎遠になりました」
「なるほどな」
「隆介とは知り合いだったからと言っても黒龍組に所属している身である俺は裏切るような真似は断じてしません」
「あぁ、それに関しては信用している………昔の隆介を知っているお前に聞きたいんだが、あいつはどう言う性格だったんだ?」
「あいつは昔から喧嘩ばかりで暴れん坊でしたが、仲間思いのリーダー的存在で、岩倉組の若頭でした」
「そっか…」
昔の性格がそのまま変わらずいたのなら、誰かによって岩倉組の部下か親族を人質に取られて無理矢理従っている線が増幅したな。
「この書類によると隆介には奥さんと娘がいるらしいんだ」
「そうだったんですか?知りませんでした」
「もしかするとなんだが……娘が誘拐されているかもしれないんだ」
「どうしてそう思うんですか?」
「前から気になってな、諜報部の者に調べさせたんだ」
「……」
(いつの間に……)
諜報部とはアスタロトグループ社の数ある中で唯一、会長専属部門でその存在は俺と海堂しか知らない。
そんな諜報部に岩倉 隆介の家族構成を調べさせた結果、39歳の奥さんに14歳の娘がいる事が分かったのだ。
そしてこの事を知らなかった海堂は驚きが隠せていなかった。
「報告では、いつもは自宅に奥さんはいるが娘が数週間帰ってないらしいんだ」
「誘拐された可能性高いっと?」
「あぁ、俺はそれを前提に考えているんだが、今度は誘拐した側で……一人だけ心当たりがあるんだ」
「それは一体誰なんですか?」
「それはだな……」
デスクの棚から一つの封筒を取り出し、数枚ある書類を出した。
その書類の一枚目には一人の男の顔が写っていた。見た目は歳をとっていて髪は白髪でシワだらけだった。
それを見た海堂もよく知っている男性で、テレビでも放送されているのを見た事があった。
「こいつは……」
「こいつの名は『瀧川 響』。お前も知っているだろうが、政府内では実力者の一人として有名な人物だ」
「この男が岩倉組を脅している張本人だと?」
「あぁ、それに……」
「っ!」
俺は今、目の前にある『瀧川 響』の写真をじっと見つめているとあの事件を思い出すのだ。
心の底から湧き出てくるドス黒い憤怒と今すぐにこいつを殺したいと思う強い殺意が俺の中から溢れ出ていた。
「俺の父親と母親を殺した犯人に関係する者なんだ」
ーーー
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