2ー2




「……大丈夫?」


「まぁ、なんとか外傷は無いです。けど、明日が怖い」


「……ファイト」



 明日は男共からの歓迎(攻撃)を受けないといけないと考えるたらとてもめんどくさせぇ〜。


 結衣が来たことによって教室の男子が敵と化した事によって明日学校へ行きづらくなった俺を最初から最後まで見ていた結衣はずっと笑っていた。



「何が面白いんだよ…」


「……ふふ……最初から最後まで…」


「うるせーやい。人の不幸を笑いやがって……コンちくしょう」



 やっと誤解が解けたと思ったのに、もっとやばい誤解されたなぁ。メールで言ってもダメだったし。


 

 そう言ってスマホを取り出して荒木とのメールのやり取りを見てみると、





        『荒木、さっきのはな』達


荒『オマエオレノテキ』


       『え?なんでカタコト…』達


荒『ツブスツブスツブスツブスツブスツブス』


 

 

 これ見てやべぇと思ってそのままスマホの電源を落とした。




「まぁ、あいつの事だし許してくれるだろう」


「……希望的観測?」


「ええやん!俺も希望持ってもええやん!」


 


 僅かな希望を持って明日を生きよう!それが俺の今の目標です。


 そんな会話を数十分していたら俺がいつも乗っている駅に着いた。ここで結衣と別れるので少し寂しさを感じた。




「じゃあ俺は電車だから」


「……うん……また、明日」


「おう、じゃあな」



 そうして俺は駅に入ろうとした時、後ろから右手の袖を引っ張られた。


 なんだ、なんだと思って振り返ると結衣が俺の袖を掴んでいたのだ。




「……あ…」


「えっと……結衣さん?」


「……え?……う、うん。明日も弁当……作るけど……何か好きな物とかある?」


 


 なんですと?また結衣様のご飯が食べれると?そうおっしゃいましたか?おっしゃいましたね!


 嬉しさのあまりに飛び跳ねそうになったが心の中の理性君に自制してもらって落ち着かせている。




「……た、達也?」


「え?あぁ、そうだな……また卵焼き作って欲しいな」


「……卵焼き?」


「おう、母さんが作ったのと同じ味がしてな……美味しかったんだ」




 俺が小学生の頃は、母さんが作った卵焼きが大好物でいつも作って貰っていたのを思い出した。


 今は亡き、母の味は高校生にもなった俺の年でも忘れてはいなかった。




「……うん、分かった」


「本当に良いのか?」


「……私が作りたいから……作るだけ…」




 なんだか申し訳ないな。あんだけの量を作るのにお金も掛かるだろうし……


 今日と同じ量となると食費に掛かるお金もだいぶするだろうと思い、どうしようかと考えていたら一つだけ思いついた。



「そうだ。材料費は俺が払うよ」


「……え?」


「だって、お金をかけて作って貰ってるのにただで食べるって思ったら食べるに食べれなくなるし」


「……うん」


「だから、食費だけは払わしてくれよ。その分、期待しておくから」


「……分かった……めちゃくちゃ美味しい……の作る」


「おう、楽しみにしとくよ」


「……うん!……じゃあバイバイ」


「じゃあな」




 駅で弁当の話が終わりお互いに別れた後、駅のベンチに座って乗る電車で待っていたら明日の弁当の事で頭がいっぱいだった。


 

 またあの卵焼きが食べれる…と思ったら親衛隊の男達に勝てるかなぁ……。



 達也の中で、明日弁当を作ってくれる楽しみと負のオーラを纏った親衛隊の相手をしないといけない面倒だなぁと言う思いがぶつかり合っていた。







ーーー








 俺はアスタロトグループ社の海堂から呼び出され、言い争った後迎えの車に乗って地元に帰っている所だ。


 イライラしながら窓の景色を見ていたら、運転をしていた俺の部下が話しかけてきた。





「あの…組長…」


「あぁ?」


「そ、それでどうなったんですか?」


「失敗だよ、失敗」


 


 苛立ちを隠せなかった隆介は運転手の部下に強く当たったが、バカバカらしくなり自分に落ち着くように言い聞かした。





「……クソがっ」

(海堂……お前は昔から頭が良かったよな。なら今の俺の現状に気づいてくれ……!)




 そんな事を考えているとポケットの中に入れていたスマホから電話が掛かった。


 スマホの電話相手の名前を見ると怒りと悔しさのあまりスマホを強く握った。




「……隆介です」


『俺だが、アスタロトグループ社の者に呼ばれたそうだな』


「あぁ……会長秘書の海堂から話があると言われたんだ」


『お前が今、置かれている立場が分かってるのか?』


「!……もちろん」


『なら良い。お前は俺の言う事さえ聞いていれば良いんだからな』


「……」


『それにしても無様だな。昔から黒龍組と張り合っていた組を率いる組長がを人質に取られたからってすぐに従うとは……無様としか言えんな』


「……」




 隆介がスマホを握る力が段々と強くなりミシミシとスマホから悲鳴が上がっていた。


 運転手で運転していた隆介の部下もバックミラーで隆介を見てみると表情に出る程の怒りは鬼のように見えた。





「……用が無いなら切るぞ」


『生意気な態度だが、まぁそこは許そう。アスタロトグループを潰してくれたらお前の娘は返すと言う条件だが、もし失敗した時は ……分かってるよな?』


「あぁ……」





 そして俺は電話を切った。


 落ち着かせた怒りが倍になって湧き出てくるのを自制したが、こればかりは我慢が出来なかった。




「おい……」


「は、はい!どうしましたか?」




 俺はこれからどうすべきなんだ?この事を海堂に言うか?どこであいつの目が見ているのかも分からないのに?無理だな。


 俺は若頭として活動していた時が俺の全盛期だった。岩倉組二代目の親父が亡くなり跡取りで俺が流れで継いだが、優柔不断ばかり、やっぱり俺は人を引っ張る才能なんて無かったんだ。


 そんな事を考えていたら抱いていた怒りが段々と落ち着いてきた。




「……いや、なんでも無い。すまなかったな」


「いえ、別に大丈夫です」




 あいつに対する怒りと人質に取られている娘の心配が俺の心の中で渦巻いていた。









ーーー

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