1ー8
朝起きた後、家で叔母さんと向かいあって朝ご飯を食べている。
はぁ……昨日の会議は疲れたな…。中間試験が終わり次第、建設問題も解決する方向にするか。
煮物をつまみながら昨日の会議の内容を考えていたら目の前にいる叔母さんが話しかけて来た。
「達也、昨日は大変だったらしいね」
「その前の日の仕事が重なったからちょっとは疲れたかな……みたいな…」
「そうかい」
「まぁ……中間試験が近いから、仕事より試験の方が優先になりますけど…」
「あんたはまだ学生だからね。当たり前だよ」
俺は少し、叔母さんが苦手だ。まだ俺が小さい頃、俺にだけ厳しく怖いイメージがあるのだ。
「そう言えば、昨日の会議でもあったんですが……」
「何か問題でもあったのかい?」
「はい、実はーー」
昨日の会議であった、関西に新しい大型デパートを建設する事と、その建設の邪魔をする敵対組の事を話した。
全てを話すと、叔母さんは食べている手を止めてお椀の上に箸を置いた。
「あんたはそれをどうするつもりなんだい?」
「自分は穏便に解決する方向ですが、うちの関西の組や作業員に手を出されたら……徹底抗戦に出るつもりです」
今の自分がこの問題をどうするかを嘘無くはっきりと言った。
それを聞いた叔母さんは数分だけ目を閉じて、目を開けて真っ直ぐ睨むように見てきた。
「馬鹿息子が築いた会社や組は今はあんたの物や」
「はい」
「それをどうするかはあんたに任す。私は会社や組には何も言わないよ」
「分かりました」
やっぱり今回も何も言わないか……。なら、俺の決めた方針で問題を解決していくとするか。
今回の問題は、助言ぐらいは欲しかったのだが、叔母さんが何も言わんと言うならしょうがない。
叔母さんからの返答も得れたし、組としても動くのは表から解決して動くか。
食器を持って台所へ行き、学校へと向かって行った。
ーーー
「それで、達也よ」
「……?どうした荒木?」
なんだ、なんだ。凄い形相で話しかけられても俺はどうすることも出来ないぞ。
教室に着いた俺は自分の席に座り、一限目が始まるのを待っていたら荒木が凄い形相で話しかけてきたのだ。
なんとなく分かるが、どう転んでもめんどくさい事になるなぁ…と思いつつ話を続けた。
「お前があの容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群の白崎さんとご飯を食べる事になってたんだよ!」
予想的中、どう言い訳しようか……てか、めっちゃ結衣を褒めるやん。確かに間違っては無いけど。
「さぁ、さぁ!吐け!もうネタは掴んでんだよ!」
「どうどう、そう熱くなるなよ」
「ならさっさと吐かんかい!」
「分かったから落ち着けって、ほらそこの椅子に座れよ」
「ガルルルッ」
「お前は獣かって……どうして結衣さんとご飯を一緒に食べる事になったのはなーー」
俺は適当な理由を作り、それを荒木に言うとまだ俺を疑うような目で見ていた。
「本当か?嘘ついてないよな?」
「ついてない、ついてない。ついたところで俺に利益が無いだろ?」
「うーん、確かに……」
俺は荒木についた嘘が『帰り道に転んだ結衣さんを助けたら、お礼に一緒に食べる事になった』と言ったのだ。
むむむ!と言う顔をしている荒木をほっといたら一限目のチャイムが鳴り、お互いの席に座った。
「一限目は社会か……やったぜ」
俺は社会の歴史が他の科目よりも好きでプライベートの時も図書館に行ったりとか、本屋にも行ったりしているのだ。
けど、仕事が多くなり最近は行けなくなっているのだ。
建設問題が解決したら、久々に本屋か図書館に行くか……今度は何世紀の書かれた本を買おっかなぁ。
アスタロトグループ社の会長、黒龍組組長の座に座っている俺にとっての数少ない楽しみである。
一限目もすぐに終わり、あっという間に四限目も終わった。
四限目の終わりとなるとやり切った感があるが、これから起こる事を考えると苦笑してしまった。
「……達也……一緒に食べよ?…」
その瞬間、教室にいたクラスメートの男子達が血眼になりながらも睨んできた。
「なんであいつが?」
「白崎様に毒が!」
「……達也、後で呼び出しだな」
男子共(荒木も含む)の俺に対する言葉がトゲしかねぇ…と思い、さっと立って、結衣と一緒に教室から去った。
「……え?……弁当忘れたの?」
「あぁ、急いで教室から出てきたから置いてきたわ」
しまったなぁ……。どうする?今から取りに行くか?いや、絶対に教室に一歩入ったらお縄になるな。
弁当を持たず、教室から出た事にやっちまったなぁ、と思いながら後悔してどうしようかと頭をフル回転していたら、結衣はドンッ!と通常のお弁当箱よりも大きいお弁当箱を出した。
「こ、これどうしたんだ?」
「……いっぱい作りすぎちゃった……てへ」
「にしては、すげぇな。2段弁当かよ」
弁当を忘れてしまった俺にはとてもありがたいけど、大き過ぎて俺と結衣だけで食べれるか心配になった。
いざ、開けてみると卵焼きやミニハンバーグ、唐揚げなどが綺麗に詰められており、凄いとしか思えなかった。
そして2段目は三角のおにぎりも有れば、ノリに巻かれている円型のおにぎりが並べられていた。
「こ、これ全部作ったのか?」
「……うん……流石に唐揚げとかハンバーグは……前日に作った」
「ほへぇ〜、それでもすげぇよ」
「……ふふ……子供みたい…」
「え?マジか?」
「……うん……目がキラキラしてる……」
なるほど、俺は指摘される程目がキラキラしてたか。でもさぁ!これ見たらさ!なるよ!絶対!
開けた時から匂ってくる美味しいそうなご飯の匂いで目がキラキラとしていたらしい。
そんな俺を見て微笑んだ結衣は割り箸を取り出して渡してきた。
「……食べよ?」
「おう。ありがたく頂きます」
「……はい……どうぞ……」
まさか、結衣の手作り弁当を食べれるとは思っていなかった俺はワクワクとウキウキが重なり、幸せなひと時であった。
それが黒崎 達也と白崎 結衣の出会いから始まった日常である。
ーーー
誤字、脱字などが有ればコメントしてください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます