1ー7
「会長、お疲れ様でした」
「お疲れさん……今何時だ?」
「十時半です」
「もうそんな時間か……」
流石、海堂さん。仕事が早くて助かるよ。しっかし……今回の会議はなかなかめんどくさい問題だったな。
会長室で会議の内容をもう一回、頭の中で整理し、まとめた。
「今回の件は、関西支部の者に任せるのが適任か……」
「表の問題もそうですが……」
「あいつらの問題も片付けないといけないのか…」
今回の問題とは、関西に建設予定の大型デパートに反対する者達がいるのだ。
表は、住民が反対していると言うがその裏にはヤクザの組が関わっているのが、発覚したのだ。
この問題は、アスタロトグループ社としても片付けないといけないし、組としても片付けないといけないのだ。
そんな事を考えると体が重くなり、全身の体重を椅子の背もたれに任した。
「ふぅ……これは会社としても、組としても片付けないといけないよな?」
「確かにそうですが、この場合は本腰の我々が動くのでは無い方が良いと思います」
「あぁ、だから関西支部に任すんだ」
表はアスタロトグループ社として行動活動しているが、裏の問題になると組として動かないといけないのだ。
そう考えると、面倒な事が絶対に起こるのと思うと段々と嫌気が出てきた。
「関西支部の責任者の正人に建設は続け、あいつらから喧嘩でも売ってきたら連絡をする様に言ってくれ」
「分かりました。叔母様にはどう致しますか?」
「そうだな……叔母さんにこっちで言っとくから大丈夫だ」
今は俺が黒龍組の跡取りとして組長をしているが、叔母さんは昔から関わりが深く、組の者からも人望があるのだ。
万が一、関西支部の組と敵対組が抗争になったらなったで『兄弟の杯』を交わした黒龍組にも影響があるのだ。
だから、俺は穏便に済ましたいのだが、抗戦になった場合は後からはどうこう言えないので表のアスタロトグループ社としてもその後始末をしないといけないのだ。
それもそうだが、今の俺はいくら偉い立場に居たとしても学生だ。
優先順位としては学業が大切だから、この問題は中間試験が終わってから解決しよう。
「今日は疲れた……家に帰る」
「分かりました。帰りの車の手配は済ましてあります」
「ふっ、仕事が出来る秘書を持って俺は幸せだよ」
「ありがとうございます」
今日会議した内容の書類をデスクの中にしまい、外の景色を見た。
すでに暗く、高層ビルのフロアの光や、交差点の信号の光が照らしていた。
「はぁ……明日の為にさっさと帰って寝るか」
明日は結衣と昼ごはんを一緒に食べるのを密かに楽しみにしている俺は、椅子から立ち上がり、会長室から出ていった。
ーーー
私は不満です。
今日は一緒に昼ごはんを食べようかと思って達也の教室に来たのに……用事ならしょうがない。
私以外の女と一緒に食べる訳じゃ無いし、それは妥協しよう。
私よりも用事を取るのね!……みたいなメンヘラでは決して無いけど、ちょっとは悩んで欲しかったなぁ〜……何言ってんだろ、私。
ま、明日は一緒に昼ごはん食べれるみたいだし良しとするか
今日、一緒に食べれなかった分、明日一緒に食べれる事に楽しみが増えた。
明日は弁当作って一緒に食べよっと……達也って何が好きかなぁ……
そう考えながら、学校を出て、スーパーに向かう白崎 結衣であった。
ーーー
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