1ー4







「ぶぇくしゅんっ!」


「……外、寒かった?」



 俺は電話が終わった後、寒くなり始めた外にいたのでくしゃみが出てきた。



「う〜ん、少しだけ寒かったわ」


「……そう、気をつけないとね」


「あぁ、そうだな」



 そう言って結衣は空になった弁当をキッチンに持って行き、俺は椅子に座ってカロリーメイトを食べ始めた。




「うーん……」

(明日は昼に早退して昼ごろに今日やる予定だった会議をやって、夜に組の定例会をやるか……)




 カロリーメイトをかじりながらスマホをいじり、明日の予定を脳内の中で決めていたらチラッと結衣の方へ向いた。




(結衣さんっていつも無表情だよな……)




 結衣さんは学校では頭が良く成績優秀、運動も出来る美少女だが、無表情、冷静でそこが好きと言って告白する男共は多い。


(ま、尽く振られてるらしいけどな)


 結衣さんに振られた男達の中で一番グサリッ!ときたセリフが『……貴方が私の事が好きでも、私は貴方の事なんて好きじゃ無いから』だって、




「……うん?何?」


「いや、別に」


「……それだけで足りるの?」


「うーん、まぁカロリー的には大丈夫だし良いんじゃね?って思ってる」


「……それ、大丈夫なの?」


「お前もお前でコンビニ弁当だけで偏ってると思うが…」


「……きちんと魚とご飯を食べてるから大丈夫」


「まぁ……確かにカロリーメイトよりかは良いだろうな」



 俺と結衣は何の論争をしているのが分からずカロリーメイトを食べてるからお茶を飲んだ。



「そう言えばお父さんとかお母さんとかは?もう8時だし、仕事か?」


「………」



 その時、結衣の動きが止まった。



「……お父さんと……お母さんは…」


「……?」


「……仕事で夜はいつも遅いの、だから私はコンビニで弁当を買って食べてるのよ」


「そうなんだ……」



 何か変だと思いこれ以上、結衣に親に関しては追求する事をやめ、話題を変えた。



「そう言えば、今度中間試験だろ?結衣っていつも一番を取るよな」


「……うん、取れるから取るだけ」


「す、すげ〜、そのセリフだいぶ自信が無いと言えねーよ、それ」


「……そう?自分に出来る事を、自分なりにやってるだけだから、褒められる事でも無いと思う」


「そうか?俺は凄いと思ったら褒めるけどなぁ」


「……そういえば最新で凄いと思った事があった」


「どんな凄い事があったんだ?」


「……ふふ、今日行ったコンビニでの事かな」


「はは、あれか……」


「……そう、あれ」



 俺は言っている事が分かり、苦笑しながら椅子の背もたれに全身を授け、結衣は少し微笑みながらパジャマらしき服を持った。



「そういえば俺は今日、どこで寝たら良い?」


「……流石にベットで一緒には寝られないから…」


「当たり前だ。もし一緒に寝たとしても恥ずかしすぎて逆に寝れんわ」


「……うーん、じゃあ……ソファーでも、どう?」


「おう、今夜はソファーで寝させてもらいましょうかね」


「……うん、じゃあ私はお風呂に入ってくるから……」


「から…?」




 居間からお風呂場へ行く前に捨て台詞を言って出て行った。その結衣の顔は悪そうに微笑みながら言った。




「……覗かないでね?」


「覗かねーよ……」


「……ふふ、やっぱり面白い」


「どこをどう見て面白いって思うのかご感想を求めるよ…」


「……一万文字を超えるけど……それで良いなら言うよ?」


「もう、結構です。早く入ってきてください」


「……じゃあ私が出た後でお風呂に入ってね」


「分かった」


「……あ、私が入ったお湯は間違っても飲まないでよ?」


「飲ーみーまーせーん!さっさと入って来い!」


「……ふふ、は〜い」




 風呂に入る前に少し疲れた達也が大きなため息をついた。


 その後、結衣が風呂を出た後、俺も入り今夜はソファーでお休みになった。




ーーー





私の人生の中で、とても面白い事が起きた。




今日も本校の裏に来てくれと言われて行った。予想通り男子からの告白だった。


いつもの事でいい加減呆れてきた。いつも通りに断り、あの台詞を行って帰っていた。



『この事は誰にも言わないでくれ』



この事とは告白の事だろう。告白が上手くいけば収まるが、上手くいかず断られたら次に気にする事は知り合いに知られる事だ。


告ったが断れられたと言うのが男にとっては知り合いに知られる事は恥ずかしい事なのだろう。


私はいつも告白をされた時、『告白して断れられ、それを周りに知られるのが嫌なら告白をして欲しくない』と思っている。



そんな事を思って夜ご飯を買いにコンビニに着いた。


弁当コーナーで悩んで決めてレジに向かって会計を済ましていると、隣から3人の女共がニヤニヤと気持ち悪い笑いで言ってきた。


どうやら、私がお菓子を万引きしたと言ってきたのだ。


店員が近づいてきて手提げバックの中を確認すると本当にお菓子があり、内心驚いていた。


そしてすぐにこの3人が仕組んだのだろうと確信し、どうしようかと思っていたら一人の男がやって来た。


同じ学校の制服で同級生だと分かると3人の女共がその男に私が万引きをしたと言った。


この男も私を万引き犯と言って追求するのだと思って諦めていたら、右斜めの方向の解答がその男から言われた。





『あ?何言ってんだお前、お前の方が最低じゃねーか』




満面の笑顔で3人にそう言ったのだ。これに関しては顔に出ていたと思う。



その時からだ。



私は彼が言う言葉の一つ一つに興味を持つようになった。


彼は最初からふざけるような言い方や煽る言い方だが、一つ一つに相手の痛いところをついていたのだ。


まさか音声まで録っていてそれが決定的な証拠になり警察官にそれを渡して御用となった。


私にとってそんな事はどうでも良かった。



私はあの日から他人に興味を持つ事が無くなった。


友達や親友といった仲も作らず、かっこよく言ったら孤高だった。



そんな私が彼に惹かれた。




冷め切った心が数年越しに動いた。





彼が知りたい




この言葉が私の心を支配し、行動へと移した。


今までに無いほど、私は自身の心の思う通りに動いている事に……戸惑いと喜びが交差し、揺らいでいるがこれはこれで良いと思っている。



まだ私は今の自分の『本当の心』が分かっていなかった。





ーーー


誤字、脱字などが有ればコメントをして下さい。


地元にコロナ感染者が出てきた事に戸惑いを隠せない作者です。はい。





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