入学試験ーポルトエプルーヴー③ 個人実技
「……いよいよ実技試験だね、エアリー」
『はい、あの無知で無能な試験官共に目にもの見せてやりましょう』
「あれ、怒ってる?エアリー?」
『怒り…ですか。私に感情があるのかはわかりませんが、私はルーシッド様をあんな風に馬鹿にした試験官共の顔を完全に記憶しました。たとえこの
「ははは、ありがと、エアリー。
……うん、まぁせっかくもらったチャンスだからね。私たちの『
『エアリー』と呼びかけられたものの正体は、ルーシッドによって作り出された『人工知能』だった。エアリーはルーシッドが持つ魔法具の中に存在していた(ルーシッドは魔法は使えないので、厳密には『
サラという友達ができるまでは、ルーシッドには友達と呼べる人は一人もいなかった。家族すらも
さて、ここから先は実技試験となる。受験生は自分の
魔法使いはそれぞれ固有の魔力を持っていて、自分の
古くから、自分の持っていない
この実技試験においては、当然その
ちなみに
実技試験は2つの試験から構成される。すなわち、自分の得意な魔法を発動し、それぞれに決められた目標を達成する「個人実技」。および、受験生同士の「模擬戦」である。
摸擬戦はルールに基づいたいわゆる『
個人実技と模擬戦の評価は総合的に判断され、決闘を行わない受験生にも不利にならないように工夫がなされていた。模擬戦は出場するかしないか自体を選ぶことができ、出場しない受験生に関しても、それだけで評価が下がることはなく、他の試験を行うことで評価してもらえるようになっていた。例えば、治癒魔法などを得意とする受験生たちは、模擬戦でけがをしてしまった受験生に回復魔法を施してもらい、それによって評価してもらうことができるようになっていた。
だが、実際の所、ほとんどの受験生は模擬戦に参加し、良い成績をおさめることを目指して、この試験に臨んでいた。
そしてこの実技試験からは在校生たちが観戦する大きな闘技場で行われる。これが、ディナカレア
いよいよね。ルーシィ。
さぁ、あなたの本当の実力をみんなに見せつけてやりなさい!
私のルーシィは誰よりも強いんだから…
世界最強なんだから!
闘技場ではルビアの個人実技が行われていた。『遠距離魔法の精度を測る個人実技』を選択した受験生は、闘技場の様々な場所に設置された的に魔法をどれだけ当てられるかで評価されることとなる。
“oPen the fiAry GATE.
(開け、妖精界の門)
in-g,rE,DIeNT = Re:D.
(食材は赤き魔力)
re:ciPE = Co-o-KiE.
(調理法は小さな焼き菓子)
1 OF the ele:MenTs, SALA-MANDER.
(四大の一つ、火の精サラマンダーよ)
InCaR-NATioN, tRAnS-FORM → OrNis, IgnITE + buRN ouT.
(顕現せよ、形を鳥となせ、燃やせ、焼き尽くせ)
MagiA VardAS = IGNI・ORNIS !!”
(イグニ・オルニス!!)
ルビアがそう唱えると、炎が空中に現れ、渦を巻き燃え上り、鳥の形に変わり飛んで行く。そして一番遠くにあった的に見事に当たった。魔法の火の鳥が直撃した的は赤々と燃え上がった。
ルビアは「火の造形魔法」を完全にコントロールしていた。
無色の魔力で
「おぉ、火の造形魔法『イグニ・オルニス』か!」
「難易度も高いし、見た目にも派手で試験向きね!」
「ルビアはやはり今回の受験生の中では断トツの実力か?」
「ぜひうちのギルドに欲しい!」
みなが口々にルビアを評価する。
闘技場の客席の左右に設置された大きな石板には、石の操作魔法によって彫り込まれた文字で、現在実技試験を行っている受験生の名前と魔力評価が映し出されていた。
ランクSのルビアは、やはり在校生の間でも一番の注目の的となっていた。
「では次、ルーシッド・リムピッド」
「はい」
「あなたは何の魔法を使う…と言ってもあなたは魔法が使えないんだったわね。全く…一体あなたは何をするつもりなの?」
「まぁ、見ててください、私だけの、私のとっておきの魔術を」
そう言うと、ルーシッドはゆっくりと深呼吸をし、静かに闘技場へと出て行った。
闘技場の石板には大きく
ルーシッド・リムピッド
魔力評価F
と映し出された。
闘技場には先ほどの試験会場で起きたのと同じようなどよめきが起こった。
そしてその後に起きたのは、やはり失笑、罵倒、ヤジだった。
「おいおい!魔力ランクFの魔法使いなんて見たことないぞ!?」
「落ちこぼれー!あきらめろー!」
「おとなしく家に帰って家業でも継ぎなさいよー!」
そんな声をかき消すようにひときわ大きな声が客席から上がった。
「ルーシィィーーー!!!この馬鹿どもに見せつけてやりなさーいっ!!!」
ルーシッドが声がした方に目をやると、そこではサラが手を大きく振っていた。そちらの方に小さく手を挙げて、ルーシッドはつぶやいた。
「うん、そこで見てて。サリー」
そう言うと不思議に力が湧いてきた。
「エアリー、OK?」
『はい、いつでもOKです』
ルーシッドは手に持った魔術具に話しかける。
「じゃあ、まずはあの一番遠い的にしよう」
『了解』
「
ルーシッドがそう言いながら左手を前方にかざすと、ルーシッドの目の前に赤い魔法陣のようなものが展開された。様々な術式が刻印された大きな魔法陣が空中に浮かび上がり、同心円状に描かれたそれが二重三重に回転する。
通常、魔法陣は紙や壁、地面などに描いて用いる。空中に魔法陣を投射できるのは、そこに
「
今度はルーシッドから的までをつなぐ形でさらにもう3つの魔法陣が展開する。
『完了、誤差1%以下』
「よし、まずは挨拶がてら、ド派手にいこう!」
「
ルーシッドが魔法陣に手をかざして力を込めるようにしてそう言うと、パチッと的の所で何かが弾けた。その瞬間ものすごい爆音と共に、的を中心に大きな爆発が起こる。的は跡形もなく消し飛んだ。残ったのは少しえぐれて黒く焦げた地面だけだった。
あまりにも突然のことで、何が起きたのがわからなかった場内はしばし静まりかえり、その後徐々にざわめきだした。
「ねぇ…今の…なに?」
「わかんない…あんな
「ていうかあれって…
「てか、そもそもFランクって
「じゃああれは一体何?」
「
「いや…あんな膨大な量の
「ていうか、あの子詠唱してなくない?」
「え、無詠唱?」
「そんなこと可能なのか?」
口々に今見た謎の光景に関して意見を出し合う。
「いい感じだね、エアリー、連続で行こうか」
『了解』
「
ルーシッドがそう言うと、今度は3つの的に向けて同時に
「
ルーシッドがそう言うと、一つの的には上から轟音と共に雷が落ちて燃え上がり、一つの的は突然発生した竜巻によって巻き上げられ跡形もなくなり、一つの的は天まで届く火柱によって一瞬にして消し炭となった。
会場がさらにどよめく。
「ねぇ…いったいあの子何種類の属性魔法を使えるの!?」
「しかも
「あの子一体何なの…?」
「Fランクは
「よーし、最後は評価とは関係ないけど、綺麗に終わろうか」
「
ルーシッドがそう言うと、上空で大きな爆発がたくさん起きた。そして、その一つ一つが色鮮やかな光となり、綺麗にまたたいた。
「……うん、キレイ!いい感じ!」
自分が打ち上げた花火を眺めながらルーシッドは静かに言った。
『相変わらず、素晴らしい
「ありがと。エアリーも、ナイスアシスト」
『ありがとうございます』
エアリーは誇らしげに答えた。
ルーシッドの個人実技が終わり、ルーシッドが競技場から退場したあとでも、会場はまだどよめきに包まれていた。
サラの横には、先ほどからサラと共に行動しているフランチェスカ・ルテイシャスが座っていた。フランチェスカはこのディナカレア王国ではなく、隣国のフィダラリア共和国出身であった。フランチェスカ自身も魔力ランクAAAのかなりの実力者であり、入学試験の結果もサラに次いで二位だった。サラという怪物さえいなければ間違いなく総代だっただろう。しかし、フランチェスカは入学試験の時にサラの強さと対峙して、すっかり傾倒してしまい、それ以来ずっと行動を共にしているのだった。その点ではサラとルーシッドの関係に似ているとも言える。
「サリー…あ…あの
「ふふ、あれはね魔法じゃないの。あれは魔術よ。妖精が引き起こす現象を、強引に魔力で作り出しているのよ。過程を無視してその結果だけを引き起こす。これこそが
「
「えぇ、
「物理干渉力?」
「えぇ、ルーシィは、研究の結果、
「物質を引き付ける…と言っても、さっきは何も見えなかったけど…?」
「ふふ…フラニーは私たちの周りにあるこの空気が何でできてるか知ってる?」
「く、空気?いえ、そんなこと考えたこともないわ。そもそも何もないじゃない?私たちの周りには。透明なんだから何もないんじゃない?」
「そうよね、普通はそう考えるわよね。私もルーシィに教えられるまでそう思ってた。でも本当は違うのよ。見えないだけでそこには物質が存在している。ルーシィは
「あ、確かに…」
「そして、この空気の中から、様々な現象を引き起こす物質を
「そんな…じゃあ
「えぇ、
サラは自分のことのように嬉しそうにルーシッドのすごさについて話した。
そうだ、私のルーシィは、世界の誰よりも強いんだ。
誰よりもすごいんだ。
そう、今まで
でもルーシィのすごさはまだまだこんなものじゃない
次はいよいよ対人戦だ
ルーシィの本当のすごさは対人戦でこそ発揮される
さぁみんな知るがいい
味わうがいい
ルーシィと対峙した時の絶望を!
サラは興奮してにやにやしていた。それを横目で見たフランチェスカはちょっとだけ引いていたのだった。
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