第4話パートD
今日、この日、私は模試に、出会いを求めて来ていた。
理由は、友達の発言だ。
彼女は、模試で彼氏が出来たと言っていたのだが……
隣の席には、狙い通り男の子が座っている。
声をかけてみるべき……なのか?
あの子はどうやって出会ったんだっけ……。
考えてみて気づいた。
彼女は、出会ったときの事を以外、きっかけを一つも話してはくれなかったのだ。
とりあえず、鉛筆を向こうに転がしてみるか……?
「とりま鉛筆か……?」
隣からそんな呟きが聞こえてきた。
まさか、こちらの考えを読んで……!?
いやいやまさか、そんなはずはない。
よし、と、覚悟を決める。
接触してみるのは帰りにしておこう。
それでもなんとかなるかもしれないし、それにほら、今から最後の確認とかする可能性あるし、その場合、鬱陶しがられて、出会いどころじゃなくなるかもしんないし、ね。ね!?
「って、誰に言い訳してんだ、私……」
そう呟きつつ、私は頭を抱える。
その時だった。
試験監督のスタッフのかたが、そろそろ試験開始だから筆記用具をしまうように言った。
私は、言われた通り、筆記用具を片付け、……あれ?
筆記用具が無い? まだ出していなかっただけ? そう思い、急ぎカバンの中を確認するが、やはり無い。
忘れてきてしまったのだろう。どうしよう。
と、そんな私の様子に気づいたのか、隣の席に座っていた人が、鉛筆と消しゴムを差し出してきた。
「あの、よかったらこれ、使います?」
当然私は受け取り、
「ありがとうございます!」
と言った。
「いえいえ」
そう答えた彼に、私は試験中も時々目を向けていたのだが、誰にもバレる事はなかった……と思う。
その後、私は彼にペンを返し、流れで一緒に帰ることになって、さらにその間の会話で彼の知り合いが模試で出会いがあったことと、それを受けて彼が模試へ来たことを知った。
つまり、かれも目的を同じくした者だったということだ。
これをきっかけに、彼と私は付き合い始めることになる。
お互いの目的は果たされたわけだ。
しかし、世の中そんなに上手くは回っていない。
出会いの事ばかりを考えていたせいで、模試の結果は散々だった。
お金を出してくれた両親には怒られ、友達には呆れられた。
やっぱり、模擬試験っていうのは、自身の学力を測るためのもので、出会いのための場ではないんだと、思い知った。
模擬試験に出会いを求めるのは間違っていたと、心の底から思う。
まあ、彼氏出来たし、目標は達成できたけど。
模擬試験に出会いを求めるのは間違っているだろうか。 悠々自適 / 文月 幽 @my-pace
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