第2話 パートB
その日、俺は珍しく学校に居残って勉強していた。
残されたわけでは勿論ない。
家に居ると姉貴にからかわれて勉強に手が着かないからだ。
この前なんて、彼女とかできないの? と言われ、男子校だからと答えたところ、なら彼氏作れば? と言われ、久々に数時間に及ぶ口喧嘩をしてしまった。その結論として、校外で見つけろと言われたのだが、塾に行っているわけでもない俺には、無理だ。
という訳で、勉強に飽きてきた俺は、隣の席に座って同じく居残って勉強をしていたやつに、聞いてみた。
「なあ、模試に出会いを求めるのって、間違ってんのかなぁ」
すると、意外にも、そいつは返事をくれた。
「逆にそれが間違っていると思わないお前のほうが間違ってる気がするけど」
結構きつめだった。
「大体なんでそんなこと言いだしたんだ?」
気になったのか、そんなことを尋ねてきた。
「いや仕方ねえだろ、うち男子校だし、俺塾行ってないし、彼女いないし、もう、女の子と出会えるチャンスなんて、模擬試験くらいしかないだろ」
「いやいや、文化祭とかあるだろ。てか最悪ナンパしろって」
「いやそんなチャラい真似できんて」
俺は根は真面目なのだ。
「で、模試でどうやって出会うんだよ」
「例えば、ほら。あれだよ。鉛筆拾ったりとかさぁ、なんかあんだろいろいろ」
「いや、そもそもお前模試で鉛筆落としたりする?」
言われてみて、少し考える。
「……確かにしないな」
「だろ? 模試で出会うなんてあきらめとけって」
「う~ん、でも彼女ほしいじゃねえかよぉ~」
そう言って俺は頭をぶんぶん振った。
ちょうど気になった俺は、聞いてみた。
「てか、お前は彼女いんの?」
どうせいないだろうとは思ったが、念のためだ。
「ん、ああいるよ」
いるらしい。
「まじか。どうやったんだ? 教えてくれ、いや、教えてください!」
敬意を込めていってみた。
「って言われても、なんでできたのか俺にもわからんよ」
「じゃ、じゃあ、どこで出会っただけでも教えてくれよ」
「え、いいけど、ってもうこんな時間じゃねえか、帰ろうぜ」
「あ、ほんとだ」
そう、俺たちは教室に二人っきりで、自習中だったのだ。
そして、現在時刻は七時二十分。
最終下校時刻は七時半なので、そろそろ帰らなければならない。
荷物をささっとまとめて帰ろうとして、教室を出ようとした時だった。
気づいた俺は言った。
「あ、ちょっと待て。そういやさっきの話の続きだ」
「え、なんだっけ?」
うやむやにされそうだった。
「どこで彼女と会ったかだよ。参考にさせてほしいんだよ。頼む!」
「別にそんな言わなくても教えるけどさ」
「で、どこなんだよ」
俺はワクワクしつつその言葉を待った。
「模擬試験で席が隣になってね」
キレそうになった。
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