模擬試験に出会いを求めるのは間違っているだろうか。
悠々自適 / 文月 幽
第1話 パートA
「なあ、模試に出会いを求めるのって、間違ってんのかなぁ」
突然隣の席の奴が尋ねてきた。
「逆にそれが間違っていると思わないお前のほうが間違ってる気がするけど」
当然のごとく、俺はそう返した。
「大体なんでそんなこと言いだしたんだ?」
気になったので尋ねてみた。
「いや仕方ねえだろ、うち男子校だし、俺塾行ってないし、彼女いないし、もう、女の子と出会えるチャンスなんて、模擬試験くらいしかないだろ」
「いやいや、文化祭とかあるだろ。てか最悪ナンパしろって」
「いやそんなチャラい真似できんて」
「で、模試でどうやって出会うんだよ」
「例えば、ほら。あれだよ。鉛筆拾ったりとかさぁ、なんかあんだろいろいろ」
「いや、そもそもお前模試で鉛筆落としたりする?」
「……確かにしないな」
「だろ? 模試で出会うなんてあきらめとけって」
「う~ん、でも彼女ほしいじゃねえかよぉ~」
そう言ってそいつは頭をぶんぶん振った。
その後、ふと気づいたかのように言った。
「てか、お前は彼女いんの?」
「ん、ああいるよ」
そう答えた。
そう、彼女がほしいといっているこいつには悪いが、俺にはいるのだ。
「まじか。どうやったんだ? 教えてくれ、いや、教えてください!」
「って言われても、なんでできたのか俺にもわからんよ」
「じゃ、じゃあ、どこで出会っただけでも教えてくれよ」
「え、いいけど、ってもうこんな時間じゃねえか、帰ろうぜ」
「あ、ほんとだ」
そう、俺たちは教室に二人っきりで、自習中だったのだ。
そして、現在時刻は七時二十分。
最終下校時刻は七時半なので、そろそろ帰らなければならない。
荷物をささっとまとめて帰ろうとして、教室を出ようとした時だった。
「あ、ちょっと待て。そういやさっきの話の続きだ」
「え、なんだっけ?」
俺は軽くすっとぼけて言った。
「どこで彼女と会ったかだよ。参考にさせてほしいんだよ。頼む!」
「別にそんな言わなくても教えるけどさ」
「で、どこなんだよ」
「模擬試験で席が隣になってね」
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