第10話 タイムリミット

「・・・・・・シャロちゃんの様子はどうだ?」


 厳しい顔でそう問いかけるは、アノーヴァー家当主、ドラゴ・アノーヴァー。武神とも呼ばれるその実力を証明するかのように、彼から発されるオーラは見るモノを圧倒させる。


 気が立っている様子の主人を宥めるように、長身のメイド、リノは柔らかな口調で答えた。


「大分落ちついたようです・・・・・・今は苦しむ様子も無く静かに眠っています」


 その返答が気に入らなかったのか、ドラゴは眉をひそめて「そうか」と一言呟いて黙り込む。その鋭い目線は、遙か虚空を見つめていた。


 しばしの沈黙。ピリピリとした空気の中、リノが言いづらそうに口を開く。


「・・・・・・お医者様に聞きました所、奇跡的にお嬢様は目を覚まされましたが、呪いが良くなった訳でも無く、今もお嬢さまの体を蝕み続けているようです」


 本来、呪いを解くまでは目覚める筈も無かった少女。目覚めたのはまぎれもなく奇跡・・・・・・しかしその先は奇跡ではどうしようも無い現実だった。


「率直に聞く。シャロちゃんの体はどれほどもつ?」


 ドラゴの硬い言葉に、リノは静かに目を伏せた。


「もって一年ほどかと」


「一年・・・・・・そうか」


 そう呟いたドラゴの表情は、いつもシャーロットの前で見せている、親ばか全開の緩みきった顔とは真逆の、何かを覚悟した武人の顔をしていた。


「金はいくら使っても構わん・・・・・・速やかに呪術者を探しだし・・・・・・この私の前に連れてこい」


 ドラゴの言葉に、リノは片膝をついて忠誠の意を示した。


「・・・イエス、マイロード」



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