第9話 約束
全身が燃えるように熱いのに、ゾクゾクと背中に悪寒が走っている。
意識は朦朧とし、体の水分が奪われて口内に粘度の高い唾液が絡んだ。
「・・・カハッ!?」
口から息が漏れる。開いた口が塞がらず、ダラダラと唾液が顎を伝うのが感じられた。
(・・・・・・ったく、美人が台無しだ・・・ぜ・・・)
そんな事を考えながら、ひたすら痛みに耐える。
薄れ行く意識の中、誰かが手を握ってくれた気がした。
◇
◇
「ねえ、シャーロット。約束よ? これは絶対に破っちゃいけない・・・二人だけの約束・・・・・・アナタは、アナタだけは私を裏切らないわよね?」
声が、聞こえた。
柔らかな、少女の声が聞こえた。
楽しそうに、嬉しそうに、少女は語りかけてくる。
背後から照らし出された柔らかな光が、少女のフォルムを易しくなぞっている。顔はぼんやりとしていて判別できない。その声は、初めて聞くはずなのに何か懐かしく・・・少女が自分にとって掛け替えのない存在であると、何故か理解できるのだった。
「もちろんよ×××。絶対にアナタを裏切りはしない」
口から放たれた言葉。それを放ったのは自身の意志ではない。
約束。
決して破ることは許されない・・・・・・何も知らない、いつの日かの誓い。
ああ、それを守るのは自分の役割では無い。
彼女は静かに涙を流した。
シャーロットであってシャーロットでは無い・・・そんな中途半端な存在。
だから彼女はキツく口を結び、目を凝らしてこの光景を魂に刻みつけた。
果たすべき約束を。
守られるべき誓いの瞬間を。
忘れないように。
違えることの無いように・・・。
強く
強く
心に焼き付ける。
その約束は、
そう、”呪い” に似ていた・・・・・・。
◇
◇
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