第9話 約束

 全身が燃えるように熱いのに、ゾクゾクと背中に悪寒が走っている。


 意識は朦朧とし、体の水分が奪われて口内に粘度の高い唾液が絡んだ。


「・・・カハッ!?」


 口から息が漏れる。開いた口が塞がらず、ダラダラと唾液が顎を伝うのが感じられた。


(・・・・・・ったく、美人が台無しだ・・・ぜ・・・)


 そんな事を考えながら、ひたすら痛みに耐える。


 薄れ行く意識の中、誰かが手を握ってくれた気がした。










「ねえ、シャーロット。約束よ? これは絶対に破っちゃいけない・・・二人だけの約束・・・・・・アナタは、アナタだけは私を裏切らないわよね?」


 声が、聞こえた。


 柔らかな、少女の声が聞こえた。


 楽しそうに、嬉しそうに、少女は語りかけてくる。


 背後から照らし出された柔らかな光が、少女のフォルムを易しくなぞっている。顔はぼんやりとしていて判別できない。その声は、初めて聞くはずなのに何か懐かしく・・・少女が自分にとって掛け替えのない存在であると、何故か理解できるのだった。


「もちろんよ×××。絶対にアナタを裏切りはしない」


 口から放たれた言葉。それを放ったのは自身の意志ではない。


 約束。


 決して破ることは許されない・・・・・・何も知らない、いつの日かの誓い。


 ああ、それを守るのは自分の役割では無い。


 彼女は静かに涙を流した。


 シャーロットであってシャーロットでは無い・・・そんな中途半端な存在。


 だから彼女はキツく口を結び、目を凝らしてこの光景を魂に刻みつけた。


 果たすべき約束を。


 守られるべき誓いの瞬間を。


 忘れないように。


 違えることの無いように・・・。


 強く


 強く


 心に焼き付ける。

 







 







 その約束は、







 そう、”呪い” に似ていた・・・・・・。













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