第十一話『笑顔の通告』

〈着きました。この家が拠点です〉


〈意外にちゃんとした家だな。もっと小屋みたいなのだと思ってた……〉


 ナビィに案内されて着いた家は、仮拠点にしてはしっかりしている二階建ての一軒家だ。


 しかも、周りは普通の住宅街だし…。


〈いいえ。御主人様マスターの認識で間違っていませんよ〉


 へ?、間違っていませんよって事は……


〈え、じゃあ、これで小屋?〉


 少なくとも、俺が魔王になる前の世界の住宅街と変わらないんだけど………。


〈はい。この住宅街も、貧困街に分類される場所です。御主人様マスターって貧乏だったんですね〉


〈違うわ!〉


 この世界の文明が高すぎるんだよ!

ここに来るまでもそうだが、お金に困っているような存在が見当たらなかった……。


〈とりあえず家に入ろう。話はそこで〉


〈了解しました〉


 玄関にすり抜けて入った。

中に入っても、ここが小屋の様なものとは考えられなかった。普通に綺麗だし。十分すぎる仮拠点だ。


〈『存在消滅魔法インビジブル』と『飛行魔法フライ』を解きます。体制を調えてください〉


〈おう……〉


 『存在消滅魔法インビジブル』は分かるけど、マオが唱えた『飛行魔法フライ』まで解けるのか……。


 もうこれ以上やめてあげて!

マオ拗ねちゃったんだけど…。起きてる時に念話に交ざってこないなんて、久しぶりだぞ……。


 はぁ…、後で遊んでやるか………。



「お?うっ……」


 そんな風に考えている間に、魔法は解け、俺は顔面で着地する。


「だから体制を調えてくださいと言ったのです。情けないですね」


と、ナビィさんに嘲笑されてしまった。


「…………」


 何も言えねぇ………。

可笑しいなぁ…、俺が主人のはずなのに………。


 まぁ、気を取り直して、しっかりしますか。


・・・

・・


「よし!これからの事を話し合うぞ!」


 俺はリビングに移動し、高らかに宣言した。


御主人様マスター、近所迷惑です。もう少し静かにお願いします」


「…はい」


「分かればいいんです。今後については、私が話します」


「え……」


「いいですよね」


 ナビィさんは、俺に笑いかけた。

 いや、怖っ!!


「はい。お願いするよ…」


「ありがとうございます。それでは、今後についての話です」



 ナビィさんは、一切笑顔を壊さずに告げる。



御主人様マスターは一週間、近くの公園で遊んでいてください」



 それは、笑顔の戦力外通告だった………。

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