第八話『ポンコツは止まらない』

〈あれ~。マスター?どうしたの?ねーえー〉


〈…………〉


 せっかく話が纏まりそうだったのに………。


 目の前には、念話を際切られ、イライラしている竜が、歯をくいしばってそっぽを向いている。


 怒りを我慢してくれてる……。良かったぁ……。


〈すまん!悪気は無いんだ。俺が後で言い聞かせる!だから…〉


〈ふん。我は竜だ!この様な小さき事で怒るほど、癇性ではない。会話に割り込んできた事など、気になどせん!だから我と契約をし、我の……〉


〈も~!何で無視するの!マスターが起きてって言ったのに~〉


〈お前は一旦黙ってろ!今の状況分かってるのか!〉


 竜の言葉を2回も遮るとか、アホか!


〈ぐぬぅぅぅ……〉


 そんな声を漏らしながら、纏っている魔力がどんどん禍々しくなっていく。


〈だいたい貴方だれよ!〉


〈おい、やめろ!〉


 これ以上何も言うな!


〈私とマスターの念話に入ってくるな!馬鹿!!〉


〈なっ馬鹿だと!この我を愚弄するか !!〉


 ほら見なさい!めっちゃ怒ってるよ!


〈馬鹿はお前だマオ!今すぐ謝れ!〉


〈もう遅い!見逃す気も失せた!ここで消えろ!〉


 あらら、駄目か…。念話も弾かれたし、もう会話は無理だな………。


〈ねぇ何で謝らなきゃいけないの?悪いのあっちじゃん!〉


〈アホか!してちゃんと見ろ!〉


〈もう、分かったよ~。見ればいんでしょ〉


 次の瞬間、眼球が触られてるような感覚が俺を襲う。視覚共有の結果だ。

物凄く気持ち悪いが仕方ない。マオが現状を理解するためだ…。


〈え、嘘……竜……あ、その、ごめんなさい…〉


 まぁ、そうなるよな。ちゃんと理解してくれたみたいで良かったよ。全然良く無いけど……。


〈もう良いよ。仕方ないからな……〉


 さて、どうするか……。

 まずはナビィに確認だな。撤退出来るならそれで良い。


「ナビィ。まだ掛かるか?」


 俺がそう聞くと、ナビィは珍しく顔をしかめた。


「まだ、少し掛かります。申し訳ありません」


「分かった。そのまま準備を頼む」


 とは言ったものの…、ナビィが世界を把握するのに、こんなに時間が必要なのは初めてだ。

 それほど大きい世界ってことだが………。


「GURRRRR!!」


 竜は吼えながら、それまで纏っていた禍々しい魔力を大きく開いた口に集中させている。

 放とうとしている光線は恐らく。対象を過去ごと消し去ってしまう"時殺しの咆哮"。


〈マオ!結界を張る。俺の貯めた魔力、全部使え!〉


撤退出来ない以上、小細工の通用しない竜とは、真正面から戦うしかない。通用するかは別として、な………。


まぁ、やるしかない。俺はなのだから。

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