第六話『うん!どう見ても竜!』
今俺達が居るのは、転移の為の『黒い世界』だ。
地面も重力もないこの空間に入ってしまえば、後はふわふわと浮きながら出口まで吸い込まれるだけだ。
それに、意外と暇だ………。もう出ますって言ってたわりには、出口までかなり距離がある。
『マオ』もまだ起きてないし………。
よし!ナビィさんに構ってもらおう!
「なぁナビィさん。すげぇ今更な疑問なんだが、転生出来ない世界なのに、何で転移は出来るんだ?」
俺はナビィさんに
「
ナビィさんから返ってくる言葉と、それ言っている表情は冷たいが、今の状況をとても嬉しそうにしているのを俺は知っている。
「あぁそうだよ。知らないよ。だから教えてくれると助かる」
そんな風に俺が返すと。
ナビィさんはフフッと笑って俺の方を向いた。
どうやら答えを教えてくれるようだ。
「簡単な事です。転生は魂のみを別の肉体へ送り届ける技術ですので、世界への干渉が比較的少なく出来るかわりに、今回の様に、別の肉体を用意する際に弾かれてしまう時があります」
「ほう、それで、転移は何が違うんだ?」
「黙っててください。今説明しますから」
ナビィに凄い目で睨まれる。
その目だけで殺されそうな勢いだ………。
「あ、はい………」
ごめんなさい………。
「転移は更に簡単です。神の力を使って無理矢理、肉体ごと別世界へ移動する技術であり、世界に銃弾を撃ち込むようなものです。なので今回の様な場合も、問題ありません」
なるほど、銃弾を撃ち込む様にね……。
いや、分からん。
「それって特に変わらないんじゃないか?」
結局どちらも世界に干渉してるし。
「いいえ、かなり違います。大きな違いで言うと、転移は転生と違って、座標を指定出来ません。そのため、転移先が悪ければ、転移してすぐ戦闘になる可能性もあります」
「…え?それまじ?」
座標ランダムで異世界行くの?
神に対抗出来る世界だぞ。いきなり主要施設とかに転移したらどうすんだよ!死ぬよ俺!
「だから御主人様(マスター)には、すぐに戦闘態勢に移行出来るように、魔力を練って準備してもらっているんです。分かったら休まずにもっと、魔力を練り続けてください」
「おう、そうだな…」
てっきり俺は、大魔法1回分の魔力を練っとけば大丈夫だと思っていた。念のために極大魔法1回分ぐらいは練っておこう……。
そんな会話をしている間に、出口が近づいてきたようだ。
「頼むぞ。なるべく安全な所に出てくれよ……」
「御主人様(マスター)。黙って集中してください」
「分かってるよ……」
分かってても怖いんだよ!
〈それと『マオ』!もう起きろ!寝過ぎだ!〉
〈うぅん…、あと10秒ぉ…〉
俺が心の声で叫ぶと。ようやく念話が返ってくる。
もう、仕方ないな。10秒だけだよ。まったく。
出口からの光が強くなり、俺達を包み込む。
人の居ないとこ!
人の居ないとこ!
人の居ないとこ!
足裏に地面の感覚が宿る。この感覚、間違いなく屋外だ。とりあえず助かった。
光も弱くなり、視界がはっきりする。
そこで俺が目にしたものは………
「GURRRRRRRR!!」
このピリピリと体に響く咆哮。
そして、宙に浮くその姿は大きな蛇のようだ。しかし、肉食獣の様な鋭い歯と、頭部にある二本の角が、蛇などでは決して無いことを証明している。
そう。この生き物は………
「うん!どうみても竜!ふざけろ!!」
ようやくたどり着いた異世界。
俺は意味の分からない
確かに人の居ないとこではあるけども…。
これは、ダメだろ………。
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