第五話『転移はいつも、知らぬ間に…』

「ナビィ。この世界って、いつもの白い世界だよな……。転生したのに何でこの世界に居るんだ?」


 白い世界で俺はナビィさんに質問した。

 こういうのは自分で考えるより聞いた方が早い。


御主人様マスター、こんな時ぐらい自分で考えたらどうですか?『マオ』もいるのでしょう」


 ですよねー………。


「それが…まだ起きてないみたいなんだ……」


 さっき起動した『魔王の回路』には、疑似人格である魔法人格が存在している。その人格に『マオ』と言う名前をつけた。


「寝坊とは、本当にポンコツですね。御主人様マスターはいつまでそのポンコツを使うつもりなんですか?」


「…これで最後だし……、もう良いじゃん………」


 確かに、今みたいに起動しても寝坊するポンコツな部分もあるが、それ以外は結構高性能で、場合によってはナビィさんよりも優秀な時があるくらいだ。


 ……だから、その……、


「ナビィさん、ストォォォップ!」


 笑顔のナビィさんが俺に向かって歩いてくる。素人目から見れば美人な女の人を怖がっているおっさんだが、その体から漏れ出している魔力だけで極大魔法を簡単に展開出来るほど膨大な魔力だ。


「ふふ、何を怖がっているんですか?大丈夫です。何もしませんから」


 と言いながらさっきよりもナビィさんの魔力が


「いや、何かする気だろ!それ以上近づくな!」


「何もしませんよ。ちょっと御主人様マスターの体から、そのポンコツを剥がすだけです」


「めちゃめちゃ何かするじゃねぇか!とりあえず止まれ!」


御主人様マスターを助けるのは私だけで問題ありません。そんなポンコツ、今すぐ消しましょう」


 怖い怖い怖い!

これ本当に反抗期なのか?何か違う様な気がするんだけど……。

ぶっちゃけ刺されそう……。



「それは。ナビィ。ボクはそれを



 俺の後ろから一言。

その言葉を聞き、ナビィさんは表情も魔力も、何も無かったかの様に消し去った。


あらら…、こうなるとナビィさんは全然喋らない。


 それにこの声は……


「助かったが…、今の状況説明してくれるんだよな……」


 俺がそう言いながら声のした方向に振り替えると、予想通り女神さんが立っている。


「そのつもりだ…。その為に来た……」


「何でそんな疲れてるんだ?」


「その答えは今の状況も説明出来る。君は弾かれたんだよ、今回の世界の者たちにね……」


「は?」


 弾かれた?俺が?どうやって?


「君が戸惑うのも無理もない。正直ボクも今回の世界を侮っていた。彼等は科学の力によって、ボクの力に対抗する術を持っているようだ。これでは転生させることが出来ない……」


 神の力に対抗!?

しかも転生が出来ないって……、何それチートじゃん……。


「どうすんだ?世界いけなきゃ攻略出来んぞ……」


「それなんだが…今回は特例として転移させる。それと念のために、君に『番外魔法』を授ける」


 『番外魔法』は、『極大魔法』よりも遥かに強い神を殺せる魔法だ。その魔法を使えば、犠牲者は計り知れない…。


「………」


「あくまで念のためだ。使わなくても問題ない。ほら、手を出して。」


「…分かったよ。とりあえず貰っとく……」


 個人的には使いたくはないが…仕方ない。


 俺は右手をつきだした。


「ん?何してるんだい?」


「え、手を出せって言ったよな?『番外魔法』授けるんだろ?」


「それならもう終わった。君の『魔王の回路』に記録しておいた。まさか、気づかなかったのかい?」


「えぇ………」


 気づくわけねぇだろ……。


「さぁ、転移の準備も出来た。座標はランダムだから、ある程度覚悟はしておいてくれ」


 目の前の空間が歪み、黒い穴が出現した。


「それとナビィ。。転移してすぐに、彼と一緒に魔法で隠れるんだ」


「了解しました」


「この黒いのに入るのか?」


 んー、怖いからもう少し心の準備したい……。


「……マ…ター…。御主人様マスター。目を開けてください。もう入ってますよ」


と、目を閉じて考えていた俺に、ナビィさんの声聞こえた。


「いや、俺歩いてないんだけど…。何で入ってるの?」


「もう出ます。魔力を練って準備しておいてください」


「おう、分かった…」


 まぁ、良いか…。


 待ってろよ科学世界!

 俺の魔王チートをみせてやる!

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