第2話 出会い

 結局、性格なんてものはそうそう変わらないわけで、何も起こることなく三ヶ月が過ぎた。

 幼馴染の柳瀬に話しかけることもできず、ヘアセットをして学校へ行く勇気もなく、1年の時と同じような日々がただ淡々と過ぎていった。

 バイトはなんだかんだ続いていて、モブキャラな俺は特に稼いだお金の使い道もなく、ひたすら溜まり続けていた。


 今日も今日とて平和な日々が過ぎていくだろうと思っていたが事件が起きた。


「じゃあ、今日から入る柳瀬凛さんです。じゃあ、えーっと、達也くん、色々面倒見てくれる?ホールのやり方一通り教えてあげて」


 店長に紹介された女子は、光が当たるとキラキラ煌めくような輝きを放つ黒髪で、目はぱっちりと二重、彫刻像のような整った鼻筋に、ぷるんと果実のような熟れた赤い唇、きめ細かい白い肌であった。

 端的に言って見惚れるほど愛らしい美少女だった。


「達也くん?」


 固まる俺に心配そうに声をかけてくる店長。その声に俺は意識を取り戻す。


「あ、はい、すみません」


 確かに見惚れるような美少女だが、俺が固まったのはそれが理由ではない。彼女の名前が俺の幼馴染とまったく一緒だったのだ。

 最初は幼馴染かと思ったが全然違う。

 俺の好きな幼馴染は、前髪は目が隠れるところまで下ろしているし、黒縁の大きなメガネも付けている。決して今目の前にいるような華やかさはない。

 まあ、俺は彼女の優しいところがいいと思っているから好きなんだが。


 どう考えても同一人物とは考えられない雰囲気の違いに彼女は別人だろうと俺は結論づけた。


「初めまして。一ノ瀬達也です。よろしくお願いします」


「え……」


 俺が挨拶すると何故か驚いたように固まる柳瀬さん。


「どうかしましたか?」


「い、いえ、こちらこそよろしくお願いします!」


 名前の如く、凛とした声で元気よく挨拶が返ってきた。


 こうして俺に好きな人と同姓同名のバイトの後輩が出来た。

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