39 決戦

巨人はアリシャへと向かう。

木々をなぎ倒し、何の障害もなく。

距離は縮まり、歩く速度が上がってくる。


やがて、森を抜ける頃。巨人は腕を地面へと下ろし、

(バキ!バキ!)

と、巨木を数本、腕でぐ。

そして、そのまま、アリシャへと投げた。

太く重い大木が、何本も襲う。


「大地よ」

アリシャは、左手を斜め前に出して地面へと向けると、黄色い光が地面を照らす。

そして、手の平を上へ向け、上へ。すると

(ゴオオ!)

と目の前に、10㍍程の高さの、土と岩が、混じったような壁が現れる。

 

そして(グシャン!)

飛んできた大木と、ぶつかる。衝撃を防ぎ、アリシャは無傷。

感心するカムイ。城のみんなも、気付き、アリシャを見守っている。


「城の外へ出ないで!」

と大声で言うカムイ。


―――アリシャへと迫る巨人。

さっきの木は、巨人にとっては挨拶代わり。

森を抜けるとアリシャの前へと、突進する。


オオ・・!

呻くような、咆哮と共に、巨人は腕を大きく振りかぶる。

そして、アリシャを巨大な腕で殴る。拳は、土の壁へと命中する。


(グシャアン!)

凄まじい衝撃。土の壁は一撃で粉砕された。

拳の大きさは、アリシャの2倍はある。


「ア・・アリシャ?!」


巨人の拳は、魔法で作った壁を、いとも簡単に破壊した。そして再び巨人の拳が襲う。


(グシャン!!)

アリシャも再び、土の壁を作り、防いだ。

しかし、同じく一撃で破壊される。後退するアリシャ。


「!!」

カムイは思わず飛び出そうとする。しかし、

(グシャン!)

巨人の拳が命中するたびに、飛び散る破片によって近付けない。破片の大きさは、数㍍、重さが1トン以上あるため、

致命傷になりかねない。


「く・・」

黙って見守るしかないカムイ。


 2撃、3撃と、巨人の拳が命中する。

その度にアリシャは後退しながら、土の壁で防いでいる。

 やがて、湖の淵へと追い詰められる。

城から離れた場所。

アリシャは、城が安全になるようにと、

ワザとそこへと誘導している。


「アリシャ!・・」

カムイは複雑な心境で、感謝する。


土の壁を作る。そして、破壊される。

さらに後退するアリシャ。


「グオオ!!」

巨人は口を大きく開いて、咆哮を上げる。

アリシャは右手を小さく動かした。でも湖のふちのために、

地面は壁にはならない。巨人は、全力で拳を放った。


(ドン!)

今までにない、鈍い音。

拳をまともに受け、アリシャは吹き飛んだ。

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