37 やってくる足音
・Scene アリシャ ・place 湖の城
来るべき時は近付いている。陽が落ちて、暗闇の中、アリシャは、草原に立つ1本の木へと手を触れて、森の声を聴き取っている。
(グラ・・)木が揺れた。
(ここに来る)と感じる、アリシャ。
(ドシン・・)
何かの足音が近付いている。
「うん・・?」
そんな中、カムイは城内で目を覚ます。
(ドシ―ン・・)(グラ・・グラ・・)
揺れる城内。
「なんだ?」
不思議がるカムイ、部屋にライトをつける。
(グラグラ・・)
相変わらず、揺れている。
ベットから起き上がるカムイ。
(ドーン・・ドーン・・)
一定のリズムで繰り返される、揺れ。外から聞こえてくる。
カムイは城の外へと出る。
すると、湖を超えた向こう岸、城から1㎞程、離れた、
森の入り口付近に、ぼんやりとした、黄色い光を灯して立っているのは、アリシャ。
さっき囚人たちを追い払った場所。
「アリシャ?・・」
カムイは不思議がる。なぜ、またあそこへ?
僕が寝ている間に、何をしているんだろう。気になる、カムイ。
――森の方を見ている、アリシャ
「ん?・・」
カムイは、それに
(グラ・・グラ・・)
何故か、一部の木だけが、不自然に、揺れている。その部分を見ていると、
(ドシーン!!)
今までにない揺れ。それは森の奥から。
「え!?」
驚いて森を見ると、巨人が居た。
森を、腰の位置辺りにして、アリシャへと、向かっている。暗闇でも見えるのは、巨人の目が赤く、不気味に光っているから。
「なんて大きさなんだ・・?!」
森の高さの、 倍以上はある、その巨体。
大きさは30㍍以上。顔に半分覆い被さる、茶色の布状の包帯。
そこから覗く、見開く赤い目と、口は横に大きく、鋭い歯が並ぶ。
身体つきは、顔の大きさと不釣り合いな、バランスで異常に大きく、人にすれば、異常な筋肉質。
しかし近付くにつれて、筋肉とは違う身体つきが明らかになってくる。まだらで焦げ茶色、赤、紫と場所によって色が違う、
木目の様な模様。まるで、巨大な岩のようにも見える。下半身もまるで、岩か大木のように、屈強そうに見える。
岩と木と闇が、混じり合った、
木々を倒しながら歩き進んで、アリシャへと、真っ直ぐに向かう。
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