20 マルチ・プランク


ここは、煌めく城の、周辺の草原の中。

今、カムイとアリシャは2人、見つめ合い、

向かい合って立っている。


――――――


(・・・)

(いたぞ・・)

「・・カムイだ!」


何かが2人に迫っている。


――――――


「ずっと、言いたいことがあったんだ」

真剣な表情でカムイは言う。


「??」

アリシャは少し不思議がる。


2人の間には、感情的な距離は全く無いけど、

これ以上近付く事が出来るのかな?

と、カムイは思っていた。


力も、性格も、アリシャに敵わないけど

ただ、素直な気持ちが言いたかった。


「アリシャ。僕は君の事を・・」

その時、(ふわり)と、アリシャは

カムイに身体全体を寄せる。


「・・?!」

驚くカムイ。距離は縮まる、顔も。迫りゆく2人。

アリシャは、左腕をカムイの肩へと回す。


「アリシャ・・」

身を任せるカムイ。


――でも、期待していた感触。は無かった。


(え?)

目を瞑り、ドキドキ、していたカムイは、

不思議がり、ゆっくりと目を開ける。


寸前で止まっているアリシャ。


(ど・・どうして?)

正直、そのまましようかと、思ったカムイ。

――その時、背中に涼しい風を感じる。


「??」

カムイは後ろを振り向く。すると・・


(ヒュン・ヒュン・)

と激しく回転する、灰色の何か。速すぎて、何かは見えない。


「これは?!」

カムイは驚く。しかも、よく見るとそれが

アリシャの指先を中心にして、回っている。

背後から飛んできた斧を、防いだようだ。


「あ・・ありがとう」

カムイを守るために、抱き付いたという事。

キスなしは残念だったけど、と思うカムイ。

その時、


(ガサッ!)

と辺りの草むらから何かが現れる。


「殺せええ!!!」

見ると、体にペイントをした、男たちが。

手斧を持ち、振りかぶって、2人に向かって投げる。

一斉に向かうトマホーク。その時、


「風よ・・」

と、アリシャは言う。すると、指先の、斧の回転が速まる。

凄まじい速度になると、2人の周りに、風が起きて、

やがて強くなって、周りを囲むように竜巻が包む。


「!?」

驚くカムイ。


(キィン!)

と、その風は飛んでくる斧を弾く。

 囚人たちは、斧に限らず、石や木辺などを拾っては投げる。

しかし、それも全く通用しない。


「す・・凄い」

驚いている、カムイ。


やがて、囚人たちの手持ちの、投げる事が、可能なものは、全て尽きる。

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