9 煌めく湖の上で待つひとびと

・Scene アリシャ ・Place 湖の城


「おかえり」

魔法で、湖の城へと帰ったアリシャを、

向かい入れるカムイ。行き先は聞かない。


城は昨日とは見違え、すっかり元通り。

綺麗になって、戦争の傷跡はどこにもない。


「ありがとう。アリシャ!」

と、蘇えった、人々が、代わる代わる、お礼をしていく。


「ありがとう!」「ありがとう!」

皆、満面の笑みでお礼をする。


「良かった」

アリシャも笑顔を返す。


そして、大賑わいのパーティーをする。


「乾杯!」

カムイの合図で開始する。


 賑やかな音楽が奏でられ、皆が大賑わいを見せる。

そんな中2人は、バルコニーのテーブルに、向かい合って腰掛け、

料理を食べながら、皆の楽しむ姿を眺める。


「アリシャ、ありがとう」

と、カムイは改めて礼をする。


「いいえ、こちらこそ」


「アリシャはいつも真面目だね」


「そうですか?」


「うん。凄く真面目で優しくて、素敵だと思う。でも・・」

カムイが、箸を止め、表情を険しくする。


「危険な事は止めてほしいな・・」


「え?」


「昨夜、アバランテ城に行ったよね?」


アリシャはスプーンを置いて、


「気付いていたのですか」


「どうして?ポルゾイの所に行ったの!?」

カムイはつい声を荒げてしまう。


「すみません」


「危険だよ!みんなを殺した奴だよ?どうして1人で!?」

カムイは、心配の余り声が大きくなる。

しかし(ハッ)と我に返るように、


「ごめん、言いすぎたよ・・」


「いいえ、気にしないでください」


「いや、僕のせいだ、僕に力が無いから」

と気まずい雰囲気となり、沈黙する2人。


しかし、辺りのみんなの笑顔が、それを打ち消す。


「2人とも一緒に踊りましょう!」

踊りに誘ってくる皆。

お陰で2人は笑顔を取り戻し、一緒に優雅に踊った。


―――皆で楽しく祝う。

 戦争から復活した人々は、その後、楽しむことが最も大切。

身体は回復していても、戦争で傷んだ心は、まだ治っていない。

じゃないと、負の連鎖が繰り返されて、再び戦争の火種になる。

 

 だから、時間をかけて、なるべく皆と一緒に居て、皆の心を回復するのが大切、とアリシャは信じていた。

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