8 闇の魔導士

「なんだ、あの女は!化け物め!」

壁に倒れ込むポルゾイ。


「くそ!」

酒瓶を暖炉に投げつける。


すると、(ボッ!)

と燃え上がり、

その煙の中から、黒い影が現れる。


(またアリシャが現れた!?)と

立ち上がろうとするポルゾイ。


「ヒヒ・・」

と言う不気味な声がする。


「落ち着くのじゃ、国王よ」


ポルゾイの目の前の壁に現れた影は、形を成す。

 

それは、紫のローブに身を包んだ、猫背の、一見老人。

手には古びた茶色い杖。顔が覆われ、半分しか見えないが、

鼻が高く、不気味な笑みを浮かべている。


「ケル?」

ポルゾイは知っていた、この闇魔導士を。

 ケルは椅子に腰かけると、杖を暖炉に向ける。

そして、魔法で火をつける。


「ヒヒ。お座りなされ」

椅子が勝手に動き、ポルゾイの前に用意される。


「ち・・!」

座るポルゾイ。

 そして、

「ケル、さっきの女は誰だ!?」

と聞く。


「ひひ・・恐れておられるな?」

ケルは笑いながら言う。


「なんだと!バカにするな!?」

ケルに、コップを投げる。しかし、途中でパリン、と割れる。


「あのおなごは、魔法使いじゃ」


「そんなことは知ってる!バカにするのか!?」


「ヒヒ。大事なのは属性じゃ。わしは闇、女は光」


「なんだそれは?」

ポルゾイは魔法の事は、全く知らない。

「どうすればいいのか教えろ!」

とケルに聞く。


「簡単じゃ、操ればよい」


「あ?」


「ひひ・・、気にするな」


「?!」

ポルゾイは意味が解らない。


「・・あの女の事は、任せるがよい」


「ケル!しっかりやれよ!」


「わしの闇魔法に出来ないことは無い。

その代わり、約束は果たしてもらうぞ?」

 

ケルがそう言うと、ポルゾイは険しい表情になる。


「約束か。解ってる!その代わり、恩を覚えておけ!」


「まあよい。あの女を最高の、脳支配ドールにしよう」

ケルはそう言い、立ち上がって歩くと、壁へと消え去った。

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