002
町の動物園にやってきた。駅の前の大通りを真っ直ぐ歩いて15分、この小さな町に似合わない門と看板を掲げている。なんでも世界中のゾウを集めたそうなのだが、私はそれを今日初めて知った。
やけに安い入園料を払い、門をくぐる。休日はともかく、平日の動物園はいまここで奇声をあげて走り回っても良いのではないかというくらい閑散としていた。
インドゾウ、アフリカゾウ、ナウマンゾウ、ホッキョクゾウ、セイタカアワダチゾウ……、様々な種類のゾウが種類別に檻とネームプレートと共に陳列させられている。人類の次に繁栄したと言われているゾウが一堂に会するのは圧巻の光景であった。
バラゾウ。漢字で書くと薔薇象、はそんな動物園の目玉らしく、ひときわ大きいスペースに10頭ほどが半分放し飼いにされていた。その名の通り、全身がバラのような色と香りをしている。幼体が一番色が鮮やかで、足下の水に溶けて色移りしてしまわないのだろうか、などとくだらない想像をかき立てるほどであった。私はそんなバラゾウのごわごわした表皮に手をおいた。それは想像よりもひんやりと脈打っていた。
散策を昼食を終えた私は、ほとんど通過儀礼のように土産屋に入って、一番安い象牙のボールペンを買った。
帰り道。私はつい先ほど買ったボールペンを見つめながら、今日いきなり動物園に寄ろうと思いついた理由、いままでそう思い立ったことがなかった理由をぼんやりと探していた。
象の歌 フクロウナギ @apupuna_unagi
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