第2話 電刀

 イチゴムースのイメージはマジ、しくった。

 阿方(あがた)マコトは、まだ学校帰りの気分でいた。

 立っているは山中、足元はまるでおぼつかない。

 刻は夕暮れ、沈みかける。

 手には改造木刀、帯電する特製なり。

 対峙するは、二本の角有する豪鬼。

 震え、震える。

 怒気孕む。

 明鏡止水で受けて立つ女子高生。

 構えは型からは一等外れている。

 なれば、すべてはYouTubeから。

 どれもこれも、みて覚えた。体得した。

 好きを研いで研ぎ澄まし、極めてしきった、のではなく、生来の超絶ウルトラセンスゆえのもの。

 それでもおなごは自身を剣術オタクと言って憚らない。

 本人なりのこだわりがある。

 誰もがわかるはずもない、霞見る領域の。

 それは後日。語るとしよう。

 いま、あるべきは


 キィィィィィィィイイイイン!!!!!!

 剛爪と電刀の鍔迫り合い。

 矢継ぎ早に仕掛けるは豪鬼。

 にたり。

 人では見えぬ、アストラルのひと薙が女子高生を襲う。

 キュイッ

 しかし電子の目、掛けていたスマートグラスはそれをしかと見逃さない。

 合わさり、天性の体捌きで円舞を組み立てる。

 重ねて、祖先から連綿と受け継いだ血脈と、ゲノム編集で織り成された野生がフルスロットルで稼働する。

 鬼は女子高生、マコトそのもの。

 数合交わしただけで相手の隙を見抜ききった。

 もうマコトに情や憐みなどひとかけらも無く。

 オノレを切っ先とし、任せるままに無明を開花させた。

 脳裏に浮かぶは、イチゴムース

 迷いなく居合で逆袈裟に薙払う。

 人知を超えた神速迸る。

 収める。

 血飛沫四方八方乱れ飛ぶ。

 散華する花びらを身にまとい、マコトは未だ構えを解かずにいる。

 リィィィィイイン


 鍔鳴り、一円に鳴り渡る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る