~始まりの火~

火の魔女の死

 火の魔女と呼ばれるミーテは天使の住む町へと入りそこを治める天使の女王、アリエルに会う為に歩みを進める。


(姉さんやメイさんが充てにならないのなら私一人でやるしかない。

 魔女食い……それ以外にも怪しい動きはある。

 ここ最近の天使達の動向には注意してたのに防げなかったのはもっと強い力があったから……)


 考え事をしながら城の前の大きな門の前に到着する。門から大きな庭園が見え、その奥に白く輝く美しいお城が確認出来る。


 ミーテは門を守る天使兵に話しかける。


「突然、申し訳ありません。私ミーテと申しますが、女王アリエル様に取り次いで欲しいのです。

 火の魔女と言えば話しが通ると思うのですが」

 

 火の魔女と名乗る人物の突然の訪問に焦る門番に後ろから声がかかる。


「入れてあげくれるかしら。その方は大切なお客様なの」

「ト、トリス様!?」


 門番は慌てて門を開けミーテを中に案内する。トリスの案内でアリエルの元へと向かう道すがらミーテが挨拶をする。


「初めまして、私は火の魔女ミーテです。お尋ねしたいことがあって来ました」

「えーえー、貴女の聞きたいことは大体思ってる答えで合っているはずよぉ」


 トリスが庭園内を歩き城へ案内する途中で立ち止まる。


「ちょろちょろとうっとうしいのよねぇ~。でもまあぁ貴女の魂欲しいから丁度良かったわぁ~」

「隠す気も無いわけですか」


 トリスが指を鳴らすと同時に結界が張られる。

 結界の展開と共にトリスの巨大な剣がミーテに襲いかかる。それを軽くいなすと手で触れ剣を溶かし赤い鉄の固まりへと変化させる。

 それと同時に火の発現を起こす。


 周囲の地面をも焼き尽くすような火の燃焼ミーテに近づくだけで焼き尽くされそうな激しい熱量。


「流石ねぇ~でもわたしもそれなりにねぇ~」


 トリスの右目が金色に、左目が赤く変わると黒い羽を展開し両手に2本のサーベルを持ち火を払いながら斬撃を繰り出す。


 その攻撃をかわすミーテは全く殺気の無い斬撃の揺れを後方から感じ取り身を屈め横に飛び避ける。


「ほう、避けるか。流石は火の魔女」

「まさか女王自ら来てくれるなんて光栄ですね」


 ミーテが後方に爆発を起こしトリスの攻撃を牽制しつつアリエルの剣を避け炎の剣をアリエルの鎧に突き立てる。

 鎧を突き抜けアリエルの体を貫くが咄嗟にトリスがアリエルを蹴り後方に追いやり剣を抜くとそのまま斬りかかる。


「アリエルの鎧をも貫くとは流石ねぇぇぇ」


 斬りかかるサーベルはミーテの剣とぶつかると溶けていく。


「そこで、わたしの出番って訳だね」


 溶けるサーベルの間に光の剣が差し込まれ炎の剣を受け止める。


「ケルン!」

「おひさー、ミーテ元気そうじゃん♪」


 炎と光が弾け周囲を焼き、焦がしていく。

 その隙間をトリスとアリエルが攻撃を仕掛ける。


「ミーテ強いからさ、これも戦法ってやつ?」

「あなたは天使が何をしているのか知っているのでしょう!」

「知ってるも何もわたしが教えたんだし、魔女見習い捕まえてんのもわたしだよ」


 その言葉に炎の勢いが増し背中から炎の羽がミーテを包む様に展開される。

 その羽を大きく羽ばたく様に開きトリスとアリエルを吹き飛ばすと、羽を閉じケルンを挟み捕らえる。

 激しい炎の中でもがくケルン。


「けひひひ、燃えるわたしが燃える」


 ミーテが無言で火力を高めていく。羽に包まれたケルンが火に対抗して光を放つがその光さえ燃やし尽くす。


「あ~あ、が燃えちゃうじゃん」

「!?」


 背後から声がした同時にミーテが口から大量の血を吐く。


「あのさぁ、ボクが正攻法で来るとか思ってる? 甘いねぇ。それじゃあミーテ、きみの魂貰うよ」


 光の剣が突き刺さる体にトリスとアリエルの剣が更に突き立てられる。

 立ってるというよりは3人の剣で立たされているミーテの体から血が流れ出地面を赤く染めていく。


えん、私はもう無理。魂をあなたに混ぜ逃げる。でもそれはあなたの意思を奪う事になる」

(ここで魂を渡す訳にはいかないでしょう。どのみちこのままでは共倒れです。ミーテと過ごした日々楽しかったですよ。悔いはありませんよ)

「ごめんね炎、私も魂だけになれば長くは持たないけど、ここで利用される訳にはいかないから」


 ミーテが微笑む、そして体に火が灯る。優しくも力強い火はミーテの中心集まり始める。


「なにさ、この力は不味いね。2人とも下がって自爆する気だ!」


 ケルンが叫び3人がミーテから離れると集まった炎が眩い光を放ち周囲を焼き尽くす業火となり放たれる。

 その火を押さえるべくケルン達3人が結界を重ね封じ込めようとするが、結界は破れ庭園の一部を焦がす。


「あぁもう! 3人の結界重ねても壊すとかやってらんないや」


 駄々っ子の様に地団駄を踏むケルンにアリエルが庭園の焦げ後を見たまま話しかける。


「ケルン、魔女の魂を奪うのに失敗したわけだが、他の魔女は動かないのか?」


 アリエルの質問にケルンが顔を覗き込みニヤリと笑う。


「心配? 大丈夫さ。他の魔女は世捨て人。耳に入るのは当分先さ。それに一番面倒なリエンは森の奥に繋ぎ止めてるから大丈夫だって」


 ケルンは焼け焦げた地面を見る。


(火のアニママス、ここまで高めれるものなんだね。あわよくば奪って閃々に混ぜようかと思ったんだけど、残念だなぁ)

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